二十二話
傭兵の募集が始まるまで街を離れるわけにはいかないので宿屋に引きこもって魔術書を書くことにした。
内容は基礎的な修練をまとめたものを一冊。
基本属性である火、水、土、風の初級魔術から中級魔術を記したものを属性ごとに一冊。
魔法の応用やちょっとした小技をまとめたものを一冊書き上げる。
コンコン。
一区切りついたところで部屋のドアがノックされる。
ドアを開けると女将さんが立っていた。
「お客さん大丈夫かい。部屋から全然出てこないから心配してたんだよ」
思ったより魔術書の執筆に熱が入って時間を忘れていたようだ。
「すまない。本を書くのに熱中してしまったようだ」
延滞料金を支払い食事を取ってから宿屋の外に出る。
街の雰囲気が少しざわついている。
情報収集を兼ねて冒険者ギルドに足を向ける。
冒険者ギルドの扉を開け入ると併設された酒場はやはりざわついている。
スリーピングの三人はいないようだ。
受付に向かい何かあったのか尋ねる。
「アーカディア帝国との戦争です。この街に攻めてくると噂が広がっています。冒険者の中にも傭兵として雇われて一旗揚げようとしてる方もいるようですが」
「そうなのですか。傭兵の募集ってどこでやってるんですかね」
受付のお姉さんはため息をつきながら教えてくれる。
「募集は西門の衛兵詰所ですよ。あなたも一旗揚げようって方ですか」
「いえいえ、日給目当てですよ。従軍しているあいだ、三食御飯もでますし」
「ここだけの話、察知が遅れて領主軍の集結が遅れていて時間稼ぎの為に捨て駒にされるって話もありますよ」
「腕には自信がありますから生き残るだけならなんとかなりますよ。少し頼みごとをしてもいいですかね」
「なんでしょうか」
「これをスリーピングの三人に渡して欲しいのですが」
書き上げた魔術書を収納魔法から取り出し受付に積み上げる。
「確かに承りました。無事のご帰還を願っています」
傭兵の申請をするため冒険者ギルドを後にした。




