百七十五話
「二人ともよい所にきたな。こやつの眷属共の様子はどうじゃ」
「弱い。話にならんな」
「え~。そうかな。皆よく頑張ってると思うけど」
「甘やかして困るのはあいつらだぞ」
「うむうむ。二人に任せておけば問題ないじゃろ」
二人は椅子に座って料理を食べ始める。
「話は変わるがのお主の異能はどういうものなのだ」
「私のは眷獣ですね」
「眷獣か。少し出してみぃ」
「はい」
碧色の龍を出す。
「ほう。これは東洋の龍脈を守っておった奴ではないか」
「主を通してずっと見ていたが破壊の竜王と呼ばれたそなたが随分と丸くなったものだな」
「儂の本質は変わっておらぬよ。戦うために鍛えるという楽しみは見つけたがの」
「ふ。どうだか」
碧の龍はそれだけ言うと中に戻っていった。
「どういう経緯で主の中に住んでいるかはわからぬがこれは面白いことになってきたの」
竜王はどこか楽しそうに笑っている。
「おい。爺こいつの眷属も似たような力を持っているのか」
「異能は親である始祖に基づく。とはいえ若い吸血鬼だからの。御しきれるかは別じゃよ」
「正直このまま続けても一線を跳び越すのは時間がかかると思っていた所だ。やらせてみれば飛びぬけるかもしれねぇ」
「どうすれば眷獣を呼び出せるのかしら」
「自分の深層で対話することですかね」
「なるほどな。眷獣は己の根源に住まうわけじゃの」
「どうすれば御しきれるのかは私もまだ模索中です」
「それは仕方ないだろうな。暴風の権化と呼ばれた風龍達の長だからの」
「爺が警戒するほどなのか」
「本気でやりあえば国が亡ぶであろうな」
「国ねぇ。爺は関係ないと暴れると思ったが」
「多くの眷属を残して儂だけが魔界に落とされた。地上に残った眷属達は突然王を失って混乱したことだろう。王としての責務を放棄しているわけではないのでな」
「そういうもんかね」
「主も責任のある立場になればわかるさ」
「そんな面倒なことをする気はないな」
「はぁ。これだから私が苦労するのよ」
「アリシアには面倒をかけるの」
アルウィンは奔放な性格をしておりアリシアはしっかり者のようだ。
「ウィリアムよ。主の修行だが根源を見つめ直してみてはどうかの」
「そうですね。今だ会話をできていない龍もおりますし」
「というわけだから八層は有効に使ってくれ」
「経験が圧倒的に足りていないからな放り込むだけでもいい修行になるだろ」
「少し心配だけれどかわいい子は滝に落とさないとね」
仲間達の修行方針も決まったようだ。
負けないように頑張らなければ。




