百七十二話
アルウィンは迷いなく奥へと進んでいく時折見える巨体の竜は全て古代竜のようだ。
前方から一人の美女がやってくる。
「あらアルウィンお客様かしら」
「竜王の爺さんの客だ。変なちょっかいかけるなよ」
「私を戦闘狂の子達と一緒にしないで頂戴」
「はぁ。自覚がないのも困りものだな」
「それは私に喧嘩を売っていると取っていいのかしら」
「そういうところだよ」
二人のやり取りにはどこか気安い雰囲気が漂っている。
「ウィリアム・フォン・マクロードと申します」
「これは丁寧にどうも。アリシアと申します」
「もうすぐ爺さんのいるところに着く。さっさといくぞ」
アリシアとの挨拶もそこそこにアルウィンの後をついていく。
広大な九層を抜けて十層に入ると独特の雰囲気のある建築様式が出迎えてくれる。
「こっちだ」
アルウィンは中央の通路を進んでいき大きな扉の前で足を止める。
アルウィンは迷いなく扉を開き中に入っていくのでそれに続いて室内に足を踏み入れる。
そこには様々な像が飾られ奥に玉座が設えられている。
玉座に座るのは竜王その人である。
「かっかっかっ。よく来たな。まずは歓迎の宴を開こうぞ。アルウィン準備せい」
「はいはい。爺さんは宴が好きだな。お客人好きに寛いでいてくれ」
アルウィンは部屋を出て行ったのを確認して竜王は語りかけてくる。
「こうして目にする吸血鬼の始祖は二人目じゃの」
「そこまでお分かりでしたか」
「最強の種族として生み出された竜族に不死を約束された吸血鬼どちらも長い年月を経て力をつけていくのは同じじゃが果たしてどちらのほうが強いのかの。とはいえ主はまだまだ未熟じゃ。力をつけてそのうち相手にしてもらえるとうれしいのう」
どこかひょうひょうとしており強さの底が見えぬ竜王は席を立ちついて来いといって部屋をでていく。
後に続くと円卓の上に料理が置かれ酒も用意されている。
「存分に食べて飲んでくれ」
ここでお土産に買ってきた酒を取り出し贈呈する。
「人間の酒か。ありがたいことじゃの。手に入れたくても金を稼ぐ手段に乏しくて買えんのじゃ」
無事気に入ってもらえたようだ。
大皿から肉を切り分け口に運ぶと肉の旨味が濃縮されておりとても美味しい。
肉以外にも野菜に果物なども並んでおり仲間達も食事を楽しんでいる。
竜王は肉をつまみに酒を豪快に飲んでいる。
この日は久々のまともな料理に舌鼓をうち食事を楽しんだ。




