十七話
ゴーレムの警戒範囲に入っても襲われている気配はなく近づいてくる。
「フェン侵入者だ。皆を起こしてくれ」
「ほいほい」
戦闘準備が完了したところで侵入者が姿を現す。
「ほう。ゴーレムに襲われずにいるとは貴方たちは何者なんですかね」
「そういうあんたも襲われていないようだが」
男はこちらの疑問に答えるつもりはないようだ。
「興味深いですが、目撃者は消すだけです」
ゴーレムに攻撃命令の指令が送られているのを感知して上位者命令で打ち消す。
「ほう、私のゴーレムへの命令を打ち消しますか。仕方ないですね」
男が手をふるとウルフが出現し襲い掛かってくる。
「ウルフ程度なら問題ねぇ」
アーネストを守りながら次々狩っていくがウルフの出現が止まることはない。
「ふふ、素晴らしい腕前ですね。しかし永遠と沸き続けるウルフの群れにいつまで持ちますかね」
このままでは膠着状態を脱することはできないようだ。
それどころか疲労は蓄積しいつかミスがでるだろう。
こちらも手札を一枚切ることにする。
「何も召喚術はそちらの専売特許というわけではないのだがな」
語りながら術式を展開し影という影から闇をまとったシャドウウルフが出現し相手のウルフを噛み殺していく。
「な、闇属性のウルフだと・・・」
男は驚愕しつつも逃走という判断を下す。
捕まえて何が目的だったのか質したいところだが護衛対象であるアーネストを放って追いかけるわけにもいかず諦める。
戦闘を終えしばらく警戒していたが特に何も起こらず交代で仮眠を取ることにした。
襲撃の影響もあり朝というには遅い時間に朝食を取る。
「それにしても何だったんだろうな」
「考えてもわからないことは放っておくしかないですよ」
ゴーレムを操作できるようだし、ウルフとは言えあれだけの数を召喚できるというのは優秀な魔術師なのだろう。
「ウィリアムさんって召喚術も使えたんですね」
「基礎さえわかれば簡単ですよ」
「なんにしてもウィリアムがいて助かったな」
「名残惜しいですが遺跡の調査は切り上げて戻りましょうか。成果は十分ですし」
「襲撃の件は戻ったらギルドに報告の必要がありますね」
こうしてカルチェラタン遺跡を後にした。




