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老賢者は始祖になる  作者: 髙龍


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百五十四話

クランメンバーの元に戻り被害状況を確認し怪我をしたメンバーを治療する。

周辺に転がっている戦利品である魔物の素材の回収指示も忘れずに出す。

「師匠。皆の治療が終わりました」

「お疲れ様です。御飯が出来てるそうなのでいただきましょう」

配布所で御飯を受け取りミリアーヌと二人で食事を食べる。

よく焼けたステーキに野菜の旨味が出たスープにダンジョン産の果物。

士気に関わる為食事は手を抜かぬように言ってある。

「ふむ。美味そうであるな」

いきなり背後から話しかけられる。

警戒感を露に振りかえるとマントを着た青年が物欲しそうにこちらを見ている。

「そう警戒しないで欲しいのである。吾輩は眷属の暴走を止める為に山から下りて来たばかりでお腹がペコペコなのである」

「眷属ということは貴方も吸血鬼ですか」

「吾輩は吸血鬼の真祖であるな。そなたの事はカグラから聞いているのである」

「ミリアーヌすみませんがもう一人分食事を取ってきてください」

「わかりました」

ミリアーヌが席を立つと真祖を名乗る青年は隣に腰かけてくる。

「吾輩の名はボンワール。これはお近づきの印であるな」

ボンワールはワインのボトルを収納魔法から取り出すと差し出してくる。

「ウィリアムと申します」

「そなた達が今相手にしているのは吾輩の眷属だった者なのである。力に溺れ魔界に落ちた者なのである」

ミリアーヌが料理を手に戻ってくる。

料理を渡されたボンワールは綺麗な所作で食べ始める。

「眷属が魔界に落ちることがあるのですか」

「うむ。最初は心優しい者であったのであるが力をつけると鬱憤を晴らすように人々を虐げるようになったのである。その結果神々に目をつけられて魔界に落とされたのであるな」

「なるほど。貴方の目的は何ですか」

「あやつを吸血鬼にしたのは我である。責任を持って討伐するのは我の責務であるな」

「何か手伝うことはありますか」

「このまま人間達を守っていて欲しいのであるな。前回は人々を守るのに忙しくて討伐するどころではなかったのである」

「わかりました」

「馳走になったのであるな」

ボンワールは来た時と同じようにいつの間にかいなくなっており夢だったのではないかと思わせるが渡されたワインのボトルが現実だと教えてくれる。

「なんだったのでしょうか」

「戦っても勝てる自信がないですね」

どうやっても勝てないと思わせるほど存在感がすごかった。

まだまだ実力不足だなと感じ実力をつけなければと決心したのだった。

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