百四十七話
クランの本拠地が出来上がるまで許可を得て借りている区画に戻ってきた。
「皆さんお帰りなさい」
残っていたメンバーが出迎えてくれる。
「ウィリアムさんマッサーンさんが来てますよ。領主の館で待っているので戻ってきたら来て欲しいって伝言を預かってます」
「ありがとうございます。今から行ってきますね」
領主の館を目指して歩いていく。
門番にギルドカードを提示するとそのまま案内される。
応接室に通され歓待されているとマッサーンさんとこの街の領主がやってくる。
「マッサーンさんお久しぶりです」
「ウィリアム卿お久しぶりでございます。クラン結成おめでとうございます。栄光の暁は王城でも話題になっておりますよ」
「街の防衛戦力増加という意味でも大変助かっております」
「耳が早いですね」
「商人は情報が命な面がありますから。それはそうと不足している物資などはありませんか」
「そうですね。薬瓶を仕入れられないでしょうか。後は子供用の防具などですかね」
「わかりました。商会の全力を持って対応いたしましょう」
「後は冒険者ギルドの買取能力が低いので素材の換金に困ることがあることですかね」
「そういうことでしたらうちの支店の買取能力を引き上げさせて対応いたしましょう」
「直接仕入れたほうが安上がりだと思うのですがいいのですか」
「私は商人であると同時に政治家ですからね。直接買取では冒険者ランクを上げられなくて困る者もでるでしょう」
「そういっていただけると助かります」
メンバーは登録したばかりで低ランクのものが多い。
ランクが上がれば冒険者ギルドの支援も活用できるようになるのでランクを上げるのは必須と言える。
「ここからが本題なのですが。現在リーン連邦では魔物の被害で親を亡くした子供が少なからずいるのですが国の支援も万全と言える状況ではなくてですね。栄光の暁で引き取っていただけないかと」
「弱者救済を目的にしているのでそれは構わないのですが子供の足で移動は大変ではないですか」
「そこは安心してください。魔物の素材を買い取る為に馬車の台数を増やす予定でいますから我々が送り届けましょう」
「マッサーン殿。街の現状を考えると食料が不足する可能性が高い。他から仕入れられないだろうか」
「ウィリアム卿のおかげで遠方から輸送しても痛まなくなりましたからお引き受けしましょう」
この後も問題点を話し合い解決策をあげていく。
話し合いは長時間にわたったがマッサーンが確約してくれたことでなんとかなりそうだ。
問題解決を約束しつつも自分の利益を忘れないとはマッサーンが遣り手の商人なのだと実感した。




