百三十六話
カグラの言う通りなら時間は経っていないはずだが修行で汗だくになったので皆温泉に向かうようだ。
一人男性用のお風呂につかりながらサービスの酒を湯船に浮かばせながら月見酒とシャレこむ。
本日は満月であり月の温かい明かりが照らし幻想的だ。
美しい風景に美味しいお酒。
余生を過ごすには素晴らしい環境と言える。
カグラが長年居座り続けているのも納得できるというものだろう。
ついつい長湯になってしまったがお風呂をあがり自分の部屋に戻り明日の為に仮眠を取ることにする。
眠ったはずだが意識がはっきりしている。
ここはどこだろうかと思っていると碧の龍が現れる。
「ここは精神世界か」
「うむ。儂と宿主殿のシンクロ率が上がって無意識のうちに入り込んだようだな」
「せっかくですしお互いのことを語りあうことにしましょうか」
「儂ら龍は龍脈の走る地で生まれ時に人々を見守り試練を与えてきた。強大な力を求めるそなたの祖先に取り込まれて以降宿主に力を貸しつつ悠久の時を眠って過ごしてきた」
「悠久の時をですか」
「人々がそうであるように我ら龍も長い時を過ごせば過ごすほど力を増していく。力をつけすぎた我らは常人には使えぬほど力をつけてしまった故に少しでも宿主の負担を減らすために眠るしかなかったのだ」
「私が苦労しなかったのは知らず知らずのうちに貴方方の力を借りていたからなのですね」
「魔法の才に関してはそうではあるが主が優れていたからこそというのを忘れてはいかんぞ」
碧色の龍と会話を続けていると赤色の龍に蒼い龍に土色の龍が現れる。
「碧色のよ。そなただけ宿主と会話するなんて抜け駆け酷いではないか」
「まだ我らを使いこなすには未熟であるがここで会話するだけなら大丈夫であろう」
その後は四匹の龍と他愛のない会話で盛り上がり気が付けば浮上する感覚で目を覚ます。
目覚めはすっきりしており体の調子も悪くないように感じる。
宿屋自慢の朝御飯を仲間達と食べその後はカナンの街を探索する。
地酒や工芸品などの土産物をたっぷり買い込みカナンの街を出て報告の為にリーングランデ近くに転移で飛ぶ。
貴族用の通用門から街の中に入りその足で城に向かう。
通用門から連絡がいっていたのかまたされることなく謁見の間に通される。
「ウィリアム卿。お早い戻りだが何かつかめたかや」
「マキート王国から連絡が言っていると思いますが魔王に対抗するために軍備を固めているようでございます」




