百三十二話
「おお。ようやっと目を覚ましたか。中々起きないから心配したぞ」
頭には柔らかい感触がし目の前には立派な胸にカグラの顔が至近距離にある。
混乱する頭で状況を考える。
「ふふ。我の膝枕はどうであるか。役得であろう」
ゆっくりと体を起こし体の感触を確かめる。
「もう少しゆっくりしていても罰は当たらぬというに。まぁよい。精神世界に行っておったのだろう。何かつかめたかや」
「眷獣という龍にあった」
「過去にも眷獣を操るものは居ったが力の象徴といわれる龍とはな」
「今の私ではその力を使いこなすのは難しいらしい」
「そうであろうな。だが焦ることはない。時間は膨大にあるのだ。我との戦闘で経験をつみあげるのみ」
カグラは休憩は終わりだと言わんばかりに気配がかわる。
それに応えるように剣を構える。
カグラが消えると同時に空気に違和感を覚えそこに剣を構えれば防御することに成功する。
「ほう。やればできるやないか。次々いくで」
その後も空気の違和感を感じ取り難なく防御に成功する。
剣を振るえば無数の風の刃が生まれカグラに向かう。
カグラは華麗に舞全てを回避して見せる。
「うむうむ。攻撃を凌ぐだけでは成長はできぬからの」
気が付けばカグラの刀の部分が消失しており無数の刃がこちらに襲い掛かってくる。
回避を試みるが刃は追従してきて体に無数の傷を生み出してくる。
頭の中に碧の龍の言葉が入り込んでくる。
声に従い風の鎧を全身にまとう。
それだけでカグラの操る刃ははじかれる。
代償として魔力の消費ははげしくゴリゴリと持っていかれる。
「ヒカンザクラの刃を防ぐか。おもしろいのう」
カグラを見れば楽しげでまだまだ余裕をうかがわせる。
先程まで激しくぶつかっていた刃がゆったりと空間に漂い視界を遮ってくる。
次の瞬間背後に立ったカグラに深々と刀を突きさされる。
口から血を吐き出しながら剣を振るうがカグラを捉えることなく空振りまた別の場所に刀を深々と突きさされる。
「ほらほら。なんとかしな。全身穴だらけになってまうで」
またしても体に深々と刀を差されるが刀を掴み引き抜けないようにしたうえで剣を振るう。
「狙いはええ。でもヒカンザクラにはそんな手通じへんで」
掴んでいたはずの刀は無数の刃に代わりカグラはなんの支障もなく回避する。
「厄介な能力ですね」
「まだまだ見せてない手はいっぱいあるよってそう簡単には負けてあげられへんな」
消費は跳ね上がるが風の鎧の密度を引き上げる。
刀は突きささることはなかったが魔力をがっつり持っていかれ魔力切れを引き起こし荒い息を上げながら横に倒れる。




