百三十話
探索魔法で気配を感じ取りなんとか対応しようとするものの防御が間に合わず体のあちらこちらを斬り刻まれる。
「人間としてなら反応できてるだけで凄いことやけど。これから先これぐらい対応できへんと仲間を失うことになるよって」
カグラの動きに規則性はないか。
癖のようなものはないかと必死に情報を集めどうやったらこの状況から抜け出せるのかを頭を全快に回転させて考える。
勘に頼るのは嫌いだがここかと思う場所に剣を置くといくつかの斬撃を防御することに成功する。
カグラの動きを真似してこちらからも仕掛けてみるが楽々回避されてしまう。
「影渡りはできてるようやね。けど練度がまだまだや」
所々で魔法も仕掛けてみるが難なく回避される。
「ウィリアムはんは魔術師やったね。せやけどそんなのじゃ子供騙しにもならへんよ」
こちらの攻撃は全てかわされ相手の攻撃は当たり体力をすり減らしていく。
全身から汗が噴き出て肩で息をしている。
こんなに苦戦したのは人生で初めてだ。
自分の内側から声が聞こえてくる。
(力が欲しいか)
最初は幻聴かと思い無視していたがだんだんと意識がその声に吸い寄せられていく。
(力が欲しい。相手を圧倒できるような強い力が)
望んだ瞬間何か扉のようなものが開いた感じがした。
(イメージせよ。我の姿を。圧倒的な力の暴力を)
脳内にイメージが湧いてくる。
圧倒的な暴力がカグラを襲う様を想像する。
「この気配は何かをつかんだようやね。せやけど意識を乗っ取りかけられとる。強引に目覚めさせようとした弊害やね」
カグラは使っていた刀をしまい新たに刀を空間から引き抜く。
「目覚めなさい。ヒカンザクラ」
美しい刀が散りいくつもの花弁の刃へと姿を変える。
その美しい光景に心動かされることなく破壊の衝動だけが膨らんでいく。
顕現したのは一匹の龍だった。
漆黒の鱗を持ち蛇のような形をしている。
「これはまたどえらいものを飼っておるやんか」
龍がカグラを襲おうとするがヒカンザクラが殺到して対消滅させていく。
ウィリアムは龍に力を吸い取られ倒れる。
「ふぅ。力の一部が暴走しただけでこれか。使いこなせるようにするにはわいも本気をださなきゃいけんかもしれんな」
意識を失ったウィリアムを膝枕しながら楽し気に頭を撫でる。
自分の眷属にできなかったのは残念だが同じ始祖として長い付き合いをできるだろうか。
全ては魔王の季節が終わるまで無事に生存できればの話だ。
カグラはどうやって制御させるかを思案しながらしばしの間幸せな時間を過ごした。




