百二十九話
全員を眷属化した後は宿の人が運んでくれた料理を楽しんでいるとカグラとアイリが現れる。
「食事時にすまんな。ゆっくり楽しんでや」
そういうと空間から酒瓶を取り出し変わった形の杯に酒を注いで飲み始める。
「ウィリアムはんも一杯どうや。特訓はじめる前の景気づけや」
杯を渡されそれに口をつける。
「すっきりした味わいでとても美味しいですね」
「いける口やね。これはアスカ皇国でもうまいと評判のアスカ酒や」
うまい酒にうまい料理。
独特の建築様式を持った美しい街並み。
アスカ皇国の文化の素晴らしさを伝えてくる。
「実務的な話もしとこか。真祖が発現する能力は未知数や。現時点でどういった特殊な技能をウィリアムはんが持ってるかはわからん。眷属の子らはあんたの能力に大きく引きずられることになる」
「それは困りましたね。魔王達が本格的な襲撃を始める前に習得できるといいんですが」
「そこは安心していいで。私が時が止まった特殊な空間にウィリアムはん達を招待したる」
「空間魔法の応用みたいな魔法ですか」
「そう思ってもろて間違いない。元々は新しく眷属になった子を鍛えるために編み出したものやけど時間のない今は特別や」
美味しい食事はなくなるのも早いもので会話しつつも皆食べ終えていた。
「食事も終わったようやしそろそろいこか」
カグラの前に闇の空間が広がる。
「この闇が入り口や。恐れずに入ってな」
アイリが迷いなく入りそれに続く形で闇に足を踏み入れる。
続々と続く仲間達は空間全体を見回している。
カグラが最後に入ってきて入り口が消滅する。
「不思議な空間ですね」
「ここなら暴れても周囲に影響はない。眷属の子らはアイリが教師役になって吸血鬼の力の使い方を教える手はずや。ウィリアムはんは私と一対一で死線を潜り抜けてもらうで。生命的な危機を作ることで生存本能から能力を強制的に目覚めさせるちゅうわけやね」
「よろしくお願いします」
「礼儀正しい子は大好きや。初手から本気でいくで」
カグラは空間から一振りの刀を取り出すと構える。
こちらもそれに応えて剣を抜き去り身構える。
「基本に忠実ないいか前やね。せやけど」
カグラが消えたと思ったら次の瞬間には斬りつけられている。
手加減はしてくれているようで傷は浅く吸血鬼の回復能力で怪我は瞬時に治る。
「今のは上位の吸血鬼なら誰でも使える影渡りに斬撃を組み合わせたものや。目に頼ってたら一生対応できへんで」
アドバイスに従い索敵魔法の制度を引き上げ気を引き締める。




