百二十四話
「ウィリアム・フォン・マクロードと申します」
「女性が議長をしていて驚いているかもしぬが我が国は力が全てじゃ。力を持った者同士の合議制で指針が決まる」
リーンは若い女性だが為政者特有の凄みのようなものを感じる。
「アスカ皇国に動きがあるとのことでしたがどういうことなのでしょうか」
「うむ。国境沿いの街に兵士を集めているのは間違いないのだが物資の動きが妙でな」
「動きが妙とは」
「当初は攻めてくるかもしれぬと警戒していたのだがそれにしては消耗品を集めている様子がない」
戦争を起こすためには兵士の量はもちろんだが食料品や医薬品などの大量の物資がいる。
「我々も手の者を送っているが事態を掴み損ねているのが現状だ。ウィリアム卿達には冒険者として内部に入り込み情報収集をして欲しい」
「アスカ皇国は独自の貨幣を使っています。円滑に活動を進めるためにこちらをお持ちください」
商人風の男性が巾着に入った貨幣を取り出しながら説明してくれる。
「これが小判と呼ばれる一番高い貨幣で次いでこちらが銀貨これが銭でございます」
「わざわざすみません」
「依頼をしているのはこちらでございますのでお気になさらずに」
「貰ってばかりでは申し訳ないのでこちらからも私が自作したアイテムバックをどうぞ」
移動の合間に作っておいた蛇皮の鞄を五つほど手渡す。
「これは高品質のアイテムバックですね。ここまで出来の良いものは見たことがない」
「城に部屋を用意させようと思うのじゃが」
「ご厚意はうれしいのですが我々は街を見て廻ろうと思いますので」
「ふむ。様々な民族が集まっている関係でトラブルに巻き込まれるかもしれんしこちらから案内人をつけよう」
「ありがとうございます」
「それでは私が案内しましょう」
商人風の男性が名乗りでてくれる。
「リーン連邦一の商人であるマッサーンが直々にのう。そんなにウィリアム卿が気に入ったか」
「それはもう」
マッサーンは揉み手をしながら笑顔を向けてくる。
「そうか。主に任せれば間違いはあるまい。許可する」
マッサーンの先導で城を辞すと解説をしながら色々な場所に案内してくる。
女性陣も見たことのないものを解説されながら興味深そうにみている。
特産品であるというお勧めの食べ物などを買い込み夕方近くまで街を探索しマッサーンが手配してくれた高級そうな宿で腰を落ち着けた。
「色々ありがとうございました」
「いえいえ。御用の際はマッサーン商会を是非御贔屓を」
マッサーンは笑顔で去って行った。




