百八話
狩りを再開したカタリーナと天ちゃんは順調にゴブリンとウルフを狩っていく。
問題は先ほどあった二人の男性が後をつけてきていることだろうか。
十分離れているためカタリーナと天ちゃんは気が付いていないようだ。
二人の前で転移をするのは躊躇われる為今日は野営することに決める。
『セバスチャン。今夜は野営をするので二人にも心配しないように伝えてくれ』
『かしこまりました』
時刻は夕方になり二人を呼び寄せると簡易の結界を張って野営の準備をはじめる。
ハイオークの肉を焼き野菜スープを作って二人に振舞う。
天ちゃんは狐の姿のまま肉を食べカタリーナもパクパクと食べている。
一日中狩りを続けていたから疲れていたのだろう御飯を食べ終えたらうとうとしている二人に早めに寝るようにいう。
「心配する必要なんてなかったじゃないか。狐と嬢ちゃんは恐ろしく手練れだ」
常人離れした耳が二人の会話を拾ってくる。
「だが今は見ていただけの男が一人起きてるだけだ」
「野営の手際を見ていたがかなり手慣れてたから大丈夫だろ」
「一泊だけ様子を見させてくれ」
「ウィリアム卿の屋敷はかなり奥の方にあるって話だ。あんまり寄り道する余裕はないんだぞ」
「ギリアム様も分かってくださるはずだ」
自分の名前と知り合いの名前がでたことで二人に話しかけることにした。
驚かさないようにゆっくりと近づく。
「気が付かれていたのか」
「えぇ。ずっとつけてきているのはわかっていましたよ。ところで私に何かようですか」
貴族証を示しながら相手の反応を窺う。
「これはウィリアム卿の紋章」
「我々はイニツァー砦に所属する兵士です。ギリアム様からの手紙をウィリアム卿に届ける途中でした」
兵士は懐から手紙を取り出すと差し出してくる。
「拝見しますね」
その場で手紙を読み要約すると父であるロードベルト卿の様子がおかしくしばらくロッテムハルトに近寄らないようにとのことだった。
「忠告に感謝するとお伝えください」
兵士達に小金を握らせる。
「ありがとうございます」
「帰るにも朝を待つ必要がありますしこちらに来て一緒に温まりませんか」
「お言葉に甘えさせていただきます」
戻るとカタリーナはうなされておりそれを慰めるように天ちゃんが寄り添っていた。
コーヒーを三人分入れて二つを兵士達に渡す。
二人は交代で休み空が明るくなり始めたころ森の出口を目指し移動していった。




