一話
私、ウィリアムは人里離れた洋館で不老不死の秘薬の研究をしていた。
秘薬の為にありとあらゆる文献に目を通し悪魔の知識すら取り入れついに秘薬を完成させたのだ。
執事兼護衛役である使役している悪魔の一体でもあるセバスチャンを呼びつける。
「セバスチャンよ、私はしばらく眠りにつく。その間のことは頼むぞ」
「とうとう完成したのですね。お眠りになられている間の事は全てお任せください」
私は秘薬を飲み干しベッドに横になると意識を手放した。
主であるウィリアムが眠りに就くのを見届けながらはじめて出会った頃を思い出す。
十代にも届かぬ少年に上級悪魔である自分が呼びだされたのだ。
人族とは思えぬほど強大な魔力を持つ幼子、うまく取り入ってその魔力をかすめ取ってやろうと思っていた。
しかし、この少年は天才だった。
新しい魔術の開発に魔道具の開発、古代文明の技術復活など功績をあげればきりがない。
私は高い魔力を持っていたから大抵のことを力押しで済ませてきた。
だが彼はいうのだ、ただ力押しするだけではスマートではないと。
彼と魔術の検証という名の模擬戦を度々行いその結果は私の惨敗だった。
私が小手先の技と評した技術を駆使し無駄なく魔力を行使する様を見て考えを変えざる得なかった。
彼と共に過ごした数十年は楽しく獲るものが多かったが人の寿命は悠久の時を生きる悪魔である私からしたら短かった。
もうじきこの楽しい生活も終わりを迎えてしまう。
そう思っていた時、彼は不老不死の研究を始めた。
多くの権力者や錬金術師共の夢である不老不死。
不可能だろうと思う自分と彼なら成し遂げてしまうような気がしてしまう自分がいる。
人間の技術だけで不可能だと悟った彼は私に悪魔の知識を求めるようになる。
彼が特に興味を持ったのは呪いの類の話だった。
強力な呪いをなんだかの方法で捻じ曲げたのだろうと予測はつくがその方法は見当もつかない。