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表舞台は断固拒否!!  作者: ぼややん
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その2

昔の記憶を取り戻すも転生後。彼はこの時代をどう生きるのか?


家に帰りながら思う。


道路がない。街灯も無い。車も当然通らない。そもそもこれは道なのか?

帰り着いた先もあの藁ぶき小屋か?

よく今まで生きてきたな。


「今日は手ぶらかい?珍しいね。」


肉が取れないときは、他の食料を籠に入れて帰っている。

空の籠を背負って帰るのは初めてだ。


村の住人に茶化されながら歩いて帰る。だるい。自転車ぐらいあればいいのに・・・


頭の中で現状を整理する。

文明・農耕中心の時代か?今、着ている物は貫頭衣って言うのか?

頭と袖に穴が開いては腰を縄で縛っている。


以前にゴミ袋に穴を空けて大事な書類とスーツを濡らさないようにした記憶がある。

コンビニまでの50m程ではあるが。

ゴミ袋ではないが、ソレに匹敵する。

下着も無いことを思うと、一気に顔が火照る。


寒い時はイノシシの毛皮を羽織る。裕福な所は熊の毛皮を羽織る。

家の造りもまるでテント生活に近いし、藁だし。そもそもトイレも無い。

皆、何かの影で用を足してるし、川なんて・・・バクテリアだらけだろうな。

だからなるべく上流で水浴びするのか。あぁ・・思い出してきた。


電話なんて夢物語だな。


兵役あるって事は権力者いるってことだよな?戦争するのかな?

文字もここでは殆ど見てないから学校はないようだ。

で、毎日日課として生活の手伝いをしている。


今、この体を見るに10才前後か?


このままだと親の家業(農家)継ぐのかな?

俺は次男坊だから自分で田んぼや畑を開拓するのかな?


ちなみに、村の名前はスガと言う。


前世って言うのか?便利な時代を知ってるから不満が爆発しそうだ・・・爆発する・・

そもそも、その前世の便利な生活には追いつくことなく俺は死ぬだろう。


ふと思う。何故、領主の了解を頂いて毎日の湧き水の配給を受けなくちゃならん。

水はタダじゃないのか?井戸だろう?


湧き水はそれぞれ、領主に管理されていて年貢に色を付けない家庭には供給していない。

色を付けてない家族は、川の上流から少しでもきれいな水を補給する。


最近、夜中にこっそり湧き水を汲みに行った男の子の一家は家族全員処刑されている。

それほどにきれいな水は貴重なのだ。


食べる物はいつもは粟。体が慣れてるが、米が食べたい。心が叫ぶ。


便利は知ってっても原理を知らないからどうしようもない・・

恨むぞ。神様がいるならこんな記憶・・・


娘2人の顔が浮かぶ。  ありがとう神様。


先ずは水だ。毎日2時間近くも歩いて水をもらいにいくのだ。

土日も、休みももちろんない。

日が昇れば毎日、同じ手伝いを当たり前にこなす子供だ。

おまけに年貢に水代をプラスしているのだ。腹も立つ。井戸を掘りたい。

今度山の入り口付近で掘ってみよう。って、

どれくらい、どうやって掘ろうか?井戸ってどう掘るの?


考えるまま、そのままに口に出していた。


「ねえ、兄貴。井戸ってどう掘るの?」


キョトンとした兄貴の顔。


「ヤン、この前倒れた後、人が変わったようだな?


お前、ヤンか?


化け物に憑かれたか?


井戸って何だ?

掘るって何言ってるんだ?」


これはとんでもなく文化が遅れてるな。

って、ジッポがあったってことは俺の居た時代は滅んだ事は確定っぽいし・・

そう思いつつ、俺は兄貴に話を切り出す。


「毎日毎日、領主様に桶一杯の湧き水もらいに長い時間かけて歩いていくんだ。

勿体なくないか?湧き水の独占なんて誰が決めた?

地面を掘り進めば地下水脈に当たる可能性もあるんだよ。

運が良ければ温泉も出る!!」


鼻息荒く、自信満々に吠える。


「何を言ってる?」


返す兄貴の冷たい一撃。


「だーかーら!穴掘れば水が出てくるって!!!」


「いきなりどうした?俺のことを兄貴って呼ぶわ、意味の分からない事を喚くわ。

穴掘りたいなら掘ればいい。その代わり、手伝いの合間にやれ。」


冷たい。この前の温もりがどこへやら。

この小さな掌で穴を掘るには道具がいる。スコップの代わりは無い物か?

・・・・・あ、そういえば拾ったカンカン。あれで掘れば・・・何年かかるかな?

それに真っ直ぐ掘り進むのに滑車作って土を上げないと・・周りを囲む石は?

ムムム・・先ずは道具だ。そして、人手も必要になる。


お前、何考えてるか知らんが、山の中腹なら湧き水の場所あっただろ?

あそこまで水を汲みに行くなら年貢割り増ししても・・・


「ああぁあぁ・・あぁ・・ありがとう兄貴!!」


そうである。湧き水の場所から水路設ければいいのだ。竹はそこらじゅうにある。

掘るより時間はかからない。


だが、そう簡単に物事は進まないものだ。10メートル程度なら何とか引けるとは思うが、距離にして2キロはある。竹筒を綺麗につないでも何日持つのか?これもボツだな・・


毎日考え込んでいると、いつの間にか山に残った雪もほとんど溶けて

緑が光を返す季節が迫ってきた。


ただ、じっとしているのも癪に障るので山の裾野で空いた時間を過ごす。

山の中腹は兄貴と一緒でないと危険が大きすぎる。


掘るか?繋ぐか?


今の自分には壮大すぎるプロジェクトだ。

自分の背丈を大きく超えた岩の上で子供らしくないしぐさで腕を組んでは考え込む。



考えが纏まらず、井戸1つであったとしても、俺の一生を費やして叶うもんじゃない。

そもそも、人手が全く無い。あぁ。。詰んだわ。


自分の田んぼでも開拓するか・・・川沿いがいいけど、2年に1回は氾濫する。


以前の記憶を掘り起こして便利なものを作ろうにも、

原理原則が根本から分かっていないバカである。


それに、以前の記憶ではとんでもない大失敗の覚えが頭に残っている。

うっすらと、とんでもないことを感じている状況ではあるが・・・



「あなたがナズの弟さん?」


初めて聞く女の子の声だ。

村には数名、女の子はいるが、いづれにも当てはまらない。


そもそも、何故俺の名前を?


五里霧中で両手で押さえ込んだ頭を上げるとそこには、

それこそ「巫女さん」といったコスプレをした女の子がいる。


俺よりも随分年上だが十代後半といったところか。


ん?コスプレってこの時代は無いわな。


頭の櫛は煌びやかだし、村人の衣服に比べて神々しい。

というか、白い。袴は?袴はそんなに短くていいのか?

後ろに5人もの巫女さん姿の女の子の姿・・ん・・?1人しわくちゃもいる。


「お兄さんが心配してるわよ。人が変わったって。

それで村の祈祷師である私の所に相談に来たのよ。

私の名前はミコ。

祈祷師にはこの名前しかないからそう呼んでね。」


兄貴・・困って神頼みでもしたのか?大体、俺はそういった類は信じてないから。

そう思いながらもミコにこう返す。


「とり憑かれても無ければ、人が変わった訳でもない。俺は俺だ。

ただ、生まれる前の記憶が戻ったみたいで混乱してるだけ。


誰に言っても取りあってもらえないし、理解してもらえない。


毎日飲み水もらいに行く時間が惜しくて、

穴掘れば水が出るかもって、そう聞いただけで。


実際、子供のこの小さい手一つではどうしようもないから悩んでいた。

それだけだ。」



体の大きさに見合わない返答を返す。



「頭を下げんか!!無礼にも程があろう!!!」

間髪入れずに、後ろからしわくちゃ巫女さんがすごい剣幕で怒鳴りつける。

唾も一緒にすごい勢いで飛んでくる。スウェイで避ける仕草を取りつつ、睨み返す。


「落ち着いて。」


ミコが制する。


どうやら、この女の子は偉い人のようだ。

毎日米食ってるからこんなにも肌が白いのだろうか?

そんな左斜め上の考えを他所に女の子は切り出した。


「昨日の夜に突然、頭の中で貴方に会えとお告げがあったのよ。

会って人々を導けと。

訳が分からなくて、混乱してるとナズさんが私の所に相談に来て・・・。

若いのに彼は今、村に欠かせない人だから無下に返すわけにもいかなくてね。」


「俺に会えって?」


「お告げではね。でも、ナズさんが言った通り、本当に意味が分からないわ。

貴方に会って人々を導けるとは思えないし。」


「俺も困ってるんだ。この世界は不潔だし。

慣れた部分はあるけど、トイレぐらい作ってくれよ。

年貢は高くて米すら食えないし、今思えば川魚は臭い。

兵役あるってことは、どこかと争ってるんだろ?

誰かの為に人殺しの片棒を担うのは御免だ。」


ミコはしばらく考え込む。

周りの巫女装束の(1人しわくちゃだが)女性陣も黙って見守る。


一時が流れると、その背後から巨大な黒い熊。


気配が分からなかった。


あんなにも大きいはずなのに。

瞬きもできず、体が硬直する。


死ぬ。でもその前に目の前の女の子たちが死ぬ。


叫ばなきゃ・・少しでも威嚇しなきゃ・・・

体中が危険信号発してはいるが動けない。


巫女たちは何事も無いかのように然としている。

間もなくミコの体に大きな黒い頭を擦りつけ、ミコも優しい掌で撫で返す。

逆立つ俺の感覚が、すーっと冷めていく。。


「では、こうしましょう。我々がここを掘る。

真っ直ぐ掘ればいいのですか?

30日、男手50人で掘ってみて何も無い時、

お前は私の奴隷とさせていただきます。」


選択権は俺には無さそうだ。

返答する代わりに黙って頭を下げる。


どこからか、体格のいい兵隊が現れる。

そのまま俺が逃げないように、この場所で縄で縛られて木の檻に閉じ込められた。




読んでいただいて感謝しきれません。

悶絶その2です。ちなみに4まで今日書き上げたので、間違ってる部分は沢山あるな~。


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