第99話 真之介さんが行く 1
康太たちが大輔たちの元パーティーのことに憤慨や心痛しているころ、真の冒険者になるべく、真之介は異世界に来ていた。
康太たちのおかげで、レベルは百近くなったが冒険者としての経験は全くの初心者のままだった。
そこで、こうして異世界へ来て冒険者として依頼を受けて、経験を積んでいこうというわけだ。
依頼が貼られている掲示板の前に立ち、依頼書を物色。
こうして詳しく見れば、いろんな依頼があるものだと、ある意味感心してしまう。
「さて、どれにしようかな……。
ここは、定番の『薬草採取』にするのがいいかな?」
ファンタジー物の定番、冒険者の依頼の定番である『薬草採取』。
だが、本当は採取する薬草によって金額が違うし、採取する数も違う。
よくある、ポーションの材料となる薬草もまた、ポーションごとに違うのだ。
万能薬のようなポーションや薬草は存在しない。
こんなふうに依頼書を見ているだけでも、現実の冒険者の依頼とは何か、勉強になる。
当然だが、定番中の定番のゴブリン討伐の依頼もあるが、これまたいろいろな種類の依頼となっている。
場所ごとに違い、数ごとに違う。
ある村の近くでの目撃情報に伴い、ゴブリンの集落の調査から、畑を荒らすゴブリン退治まで。
多種多様だ……。
「う~ん、それとも図書館で魔法や薬草類の勉強をした方がいいかな?」
この世界は、自然に使える魔法が増えたりはしない。
地球と同じく、自ら学ばなければならないのだ。
と、いうわけで、今回は依頼を受けずに準備のために図書館で学ぶことにした。
どんな依頼を受けるにしても、それぞれの知識は必要らしいので……。
今回は、薬草採取に必要な知識と、僕の魔法レベル向上のために、魔法知識を増やす目的で、図書館へ行くのだ。
▽ ▽
図書館の場所を、康太君は教えてくれなかったので、受付嬢に聞き、地図までもらって図書館へ歩いて行く。
場所は、中央広場の側にあるみたいだ。
こうして、異世界の町を歩く。
これだけでも、地球人からすれば、ドキドキするようなことになるのだろう。
まるで、外国の中世の建物が残るヨーロッパの町を歩いているようだ。
中世と違うのは、上下水道が完備されている所か。
大きな通りには、丸いマンホールの様なものまである。
この町だけかもしれないが、清潔に保たれているようでなによりだ……。
「……フム、野良猫もいるんだな…」
図書館への道で、野良猫を発見した。
塀の上で、のんびりと居眠りをしている様子は、この町が平和である事の証か?
さらに進むと、中央広場に出る。
ここは、屋台が出ているので、昼前だというのに人が大勢いる。
しかも、それぞれの屋台に並んでいる。
この異世界にも、行列を作る文化があるんだと、感心してしまった。
中央広場の屋台を、どんなものを売っているのか覗き込みながら見学し、図書館の方へ足を進める。
すると、そこに屋台をジッと見つめる二人の子供がいた。
身なりは普通の子供で、歳はどちらも十歳に満たないように見える。
その二人の子供がじっと見ている屋台では、一人の女性が一生懸命にホットドッグを売っていた。
二人のお母さんかな?
幸いにも、そのホットドッグ屋は行列ができるほどの繁盛屋台。
僕は、お母さんの仕事が終わるまで待っているのだろうと、二人の子供を気にしながら図書館へ歩いて行った。
声をかけないのか?
人間関係で、引きこもりのような状態の僕が、自分から話すなんてしないしない。
もし、あの子供たちが、助けを求めてこない限り何もしないと思う。
▽ ▽
とにかく、僕は図書館へたどり着いた。
さっそく中へ入り、目当ての本を探す。
ここはファンタジーな本と同じように、入場料を取られたが、気にしないように本を探す。
種類別に分かれている本棚を見て、本を探し読んでいく。
魔法関連、薬草関連、錬金関連、解体関連と読んでいくと、いつの間にか夕方だ。
夢中で読むだけでも、時間というものは過ぎていくんだな……。
閉館時間だというので図書館を出ると、町はすでに夕日がさしていた。
今日は、地球に帰る予定だったので、このまま冒険者ギルドへ向かう。
すると、中央広場にさしかかったところであの二人の子供を見かけた。
その場にしゃがみこんで、じっとしている。
子供たちが見ていた、ホットドッグの屋台はすでに閉まっていて、屋台を切り盛りしていた女性もいなくなっていた。
あの子供たちの母親じゃなかったのか……。
午前中から、ずっとあの場所で誰かを待っているようにじっとしている子供たち。
何故か分からないが、つい声をかけてしまう。
「こんなところで、どうしたんだ?」
「「……」」
二人とも、僕を見るだけで何も答えない。
とりあえず、鑑定してみる。
すると、鑑定には『子供 空腹』とだけわかる。
……今回は、康太君たちと一緒じゃないので、地球の物をこっちに持ってこれなかった。そのため、僕のアイテムボックスには、食べそこなったお昼の肉まんと水が入っているだけだ。
後は、お金や武器などか。
僕は肉まんを取り出し、子供たちにあげた。
「お昼の残りだけど、食うか?水もあるぞ?」
「……ありがとう」
「ありがとう、おじちゃん」
二人の子供は、力ない笑顔で僕の取り出した肉まんを食べ始める。
僕も、その場にしゃがみこみ、コップを取りだし水を入れてやった……。
ガツガツ食べるわけではないものの、しっかりと一口一口食べていく。
この肉まんは、中央広場に入ってすぐのところで売られていたものを、お昼にいいかと買ったものだが、役に立ってよかった……。
「君たち、孤児院の子供か?」
「うん、南門近くにある教会の裏手の孤児院だよ……」
「……でも、あそこはもう食べられないの…」
子供たちは、孤児院の子供らしいが、食べられないとはどういうことなのか?
この世界の孤児院は、基本教会が運営している。
この大陸なら、女神ユーキュリア様を信仰対象とした教会が主流だ。
そんな教会が運営する孤児院なら、資金はちゃんとあるはず。
食べられなくなるなんてことはないはず、何だが……。
「他の孤児たちも、食うに困っているのか?」
「うん」
「シスターが言ってました、この町では寄付があまり集まらないって……」
寄付?
この町で、寄付が集まらないのは何故だ?
何か、起きているのか……?
今日は、ここまで。
次回は、孤児院の現在……。
第99話を読んでくれてありがとう。
次回もよろしくお願いします。




