第95話 十柱の神様たち
いつもの更新時間に、間に合いませんでした。
それと、このお話は閑話になると思いますが、あえて本編の話としました。
ここは、真っ白な空間。
そこの中央に向かって、一筋の道が通っている。
その道は、一つだけではなく十の道があちこちから伸びていて、中央にある花園に囲まれた空間へ続いていた。
花園に囲まれた空間の中には、真ん中に大きな丸いテーブルが鎮座し、十脚の椅子が用意されている。
そして、いろいろな白い服を身にまとった男女が、それぞれ椅子に座って待っていた。
肩で風を切るように怒りをあらわにした、これまた白い軍服のような服を着た女性が、一筋の道を怒った顔で花園に囲まれた空間へ向かってくる。
もうお分かりだろう、そこに座る九柱と、向かってくる一柱こそ、創造神に進言し、この世界に新たな文明をもたらそうとしている神様、女神様たちだと……。
「どういうことか、説明しなさい!あなた達!」
「どうしたの?そんなに怒って…。可愛い顔が台無しじゃない」
「そうそう…」
テーブルに到着するなりそのテーブルを叩き、その場にいた九柱に怒鳴る一柱。
この怒鳴った一柱こそ、康太や悠太などの地球人を呼び寄せ、冒険者として大陸に新たな文明をもたらしてもらおうとした女神『ヨーキュリア』様だ。
そんな怒っているヨーキュリア様をなだめた女神が、ヨーキュリア様の担当大陸の両隣で、女神『パルフィル』様と女神『レミリーナ』様。
「どうしたもこうしたもないわよ!
いきなり空に現れたものをごまかすの、大変だったんだからね!
一体誰よ!宇宙戦艦を持つ文明を呼んだの?!」
「あ!それ、俺のとこにも現れたわ!」
「……ご、ごめんなさい!処置が間に合わなくて……」
「宇宙戦艦って、魔法のある世界に何呼んでんのよ……」
「文明を刺激するにも、ほどがあるだろうが……」
ヨーキュリア様の大陸と同じく、宇宙戦艦の襲来をされてしまった大陸の担当の神『アニュシス』様。
そして、その宇宙戦艦を持つ文明を呼び込んでしまった女神こそ、南の大大陸近くにある大陸担当の女神『ユミス』様。
そのユミス様のミスを嘆いていた二柱が、北の大大陸近くにある大陸担当の神『トナティス』様とその隣の大陸担当である女神『ローラリア』様。
「まあまあ、呼んじゃったものはしょうがないでしょ?
ユミス、これからどうするかよ?」
「だな。それに攻撃されたわけでもないんだろ?
だったら、飛空艇が迷い込んだとか何とかでごまかすしかないだろ」
「せっかく創造神様が、北と南に大大陸を用意してくださった。
力が有り余っているなら、進攻ゲームに移行するべき」
ユミス様の問題で、テーブルのみんなをなだめユミスを励ますこの一柱は、女神『ターリア』様。
そのターリア様に同調し、ユミス以外のみんなに誤魔化し案を提示する一柱が、神『カルシュロ』様。
そして、ユミスに今後どうするかのアドバイスを与えた一柱が、神『ケヴィリアン』様だ。
この十柱が、この世界の若き神様たち。
さて、先ほどから大陸とか大大陸とかの話が出てきているが、それはこの世界の大陸のある場所を示している。
この世界、いや、惑星というべきか。
この惑星には十二の大陸が存在する。北と南、地球でいうところの北極点と南極点の位置を中心にユーラシア大陸のような大大陸が存在する。
さらに、その北と南の大大陸の間に海が存在し、他の大陸が存在しているのだ。
実をいえば、今回、若い神々によって提案された、『他の世界から連れてきた人々によってこの世界の文明に刺激を与えて発展させよう』という提案は、創造神様に認めてもらい計画が始まった。
だが、それと同時にもう一つ、今度は創造神様から提案されたのだ。
『知識ある文明の者たちは、必ずこの世界を支配しようと動くだろう。何故ならば、自分たちの世界にないものは取り入れ独占し優越感に浸りたいものだからな。
そこで、北と南に神々の知識で大陸を造っておいた。
世界を繋げ、異世界の人々との交流がうまくいったとき、他の大陸ではなくこの大大陸へ行くようにしてくれ。
大大陸の中央にある国を下した異世界の者たちに、その大大陸を進呈しよう』
というものだ。
若い神たちは、文明さえ発展してくれればと軽く考えその創造神様の提案を丸のみし、計画はスタートした。
で、問題が出てきたというわけだ。
「……繋がる文明の発展の差が、問題になるとは思わなかったな……」
「私たちの担当大陸は、独立したものだしね~」
「ユミス、繋げた異世界の文明人には、大大陸のことは知らせてあるの?」
考えるターリア様とレミリーナ様。
パルフィル様は優しく、ユミス様に知らせたのか聞いている。
「……それが、彼らの興奮が強すぎて、今はこの世界の人の意見を聞ける状態にないわ。しかも、どんどん大陸統一を進めてて……。
はぁ~、呼ぶんじゃなかった………」
どうやら、繋げた文明の者たちの我が強すぎてどうにもならないようだ。
少し落ち着くまで、今は待つしかないらしい。
ユミス様は、呼んでしまったことを後悔しているようだが、後の祭りである。
「……その異世界人たちが利用している店とかあるんでしょ?」
「ええ、あの異世界人も飲食はしているけど……」
「なら、そこで噂を流してみれば?」
「噂?」
パルフィル様の提案は、ユミス様に希望となるのか?
それは分からないが、ユミス様の担当する大陸から異世界人が南の大大陸へ侵攻が始まったのは、この集まりから一か月後のことだった……。
▽ ▽
「ところでヨーキュリア、あなたが呼んだ異世界人はどうなの?
世界をつなげてから、三年が経過しているんでしょ?
ユミスの所は、繋がって三年で大変なことになっているけど、ヨーキュリアの所は?」
テーブルの上に飲み物を用意し、ようやく怒りが収まったとこに隣の席のローラニア様が近況を聞いてくる。
どうやら、何か情報が欲しいようだ。
「私のところは、ゆっくりと進んでいるわ。
まずは、食の文明から発展させていくつもりよ」
「なるほど、食文化か……。
その繋がった異世界は、美味しい食がある所なの?」
「ええ、女神である私が、降りて食べにいくほどね~」
「……ね、今度私も行っていい?」
「え?」
突然のローラニア様の提案に、驚くヨーキュリア様。
自分の所でも、食を発展させれば………もしかして?
「ね、ローラニア、あなたの呼んだ異世界人って……」
「言わないで!食事が簡素な文明になっているなんて、分からなかったのよ……。
確かに文明は発展してるし、性格は穏やかなんだけど、食事がね……」
どうやら、この世界の食事の方が美味しかったようだ。
一体、その異世界の食事とは……。
近況報告に、花が咲く神様たちであった………。
今日は、ここまで。
次回は、康太たちの地球での話に戻ります。
第95話を読んでくれてありがとう。
次回もよろしくお願いします。




