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駅前に冒険者ギルドが出来ていた  作者: 光晴さん
強者の責任

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第93話 深夜の会合

感想でヒントをいただいて書いたお話です。




借りている家の食堂に入ると、すでに座って飲んでいる人がいる。

現在、午前一時三十分。

こんな深夜に、食堂でいっぱいとは寂しすぎないか?さやかさん。


「お酒ですか?」

「そ、真之介さんもどう?いけるんでしょ?」

「……残念ながら、お酒はダメなんですよ」


そう言って、キッチンに入り僕は地球から持ってきたミルクを温める。

眠れないときは、これが一番なんだよね……。


「お酒ダメって、ビールもなの?」

「ええ。でも、お酒がダメってより、酔っぱらうのが嫌なんですよ」

「あー、それは分かるわ……。私も、上司の酒癖の悪さに辟易してたからね~」


酒癖が悪い。

昭和世代には、上司はそういうイメージがあるんだよね。

どこから、そんなイメージを持ったんだっけ?


お、ミルクが温まった。

コップに移し、鍋を流しへ。

後は、ホットミルクを少し飲んで、食堂の椅子へ……。



さやかさんと向かい合わせで座り、お互い飲み物を飲む。

お互い、異世界に来てから容姿が少し変わっている。

さやかさんは若返り、僕は痩せた。


これが、スキルの影響というやつなんだろう。

習得したスキルで、容姿を変えるほどの影響があるとは。

……でも、地球に帰ったら元通りなのだろうか?


少し不安だが、僕もさやかさんも皆と一緒に帰らねばならない。

それが前提の付き添いだったからね。


「それにしても、変われば変わるものね。

地球で会った真之介さんと、異世界での真之介さんは別人って思えるわよ?」

「やっぱり、違いますか?」


「違うってより、変身ってレベルね。

あんなに太っていたのに、ここまで痩せるのかって驚いたもの。

それに、歯も生えそろっていて、印象がすっかり別人よ?」


さやかさんが、自分の口を開けて右側を引っ張って歯を見せる。

確かに、『健康体』スキルだけでここまで変わるとは思わなかったな……。


「そういえば、さやかさんも若返ったとか?」

「ちょっと、真之介さん?

そういう時は、ますますお美しくなられたとかってかえすものでしょ?

……でも、本当に若返ったわね……」


確か、全盛期の力を取り戻すとかなんとか。

この異世界に満ちる、魔素が原因って言っていたな……。

魔素の無い地球から、魔素の満ちたこの世界に来るとき、転送魔法陣に組み込まれた何かが働いて体内に魔素を取り込めるようになり、若返るのだとか??


今思い出しても、訳が分からないな……。


でも、これが広く知られるようになれば、この世界に来る人は爆発的に増えるかもね。

……信じられたらだけど。


「それで、みんなはもう寝たの?」

「男子高校生組は、すでに夢の中でしたよ。

女子高生組は、まだ起きていたようですが、女子中学生組は寝ているようでした」


あの娘たち、何やら話に夢中みたいだったな……。

一つの部屋に集まって、ずっとおしゃべりしているみたいだった。

……ほんと、よく話題が尽きないよね。


「……郷に入っては郷に従え……」

「え?何ですか?」

「ん?いえね、郷に入っては郷に従え。

ここは異世界だし、地球とは違うんだから奴隷もありなのか、とね?」


……なるほど。


「違和感、いや、嫌悪感ですか、全くありませんでした?」

「なかったわね……。不思議とすんなり、受け入れてたわ……」

「やっぱり……いえ、僕も奴隷に対して何も嫌悪感がなかったんで、寝る前に康太君に聞いてみたんですよ。どうしてなのか」


「それで?」

「『精神耐性』スキルの影響らしいです」

「『精神耐性』スキルって、魔物などの不気味さや悪臭の緩和、死体などへの精神負担なんかのためにある?」


「ええ、どうやらそれだけではなく、奴隷に対する地球人たちの嫌悪感とかも、緩和するようですよ。

スラムの人達を見ても、人の死体を見ても緩和されるらしいです。

ただ、緩和されるだけで、さすがに人の死体はこたえると思いますけど……」


さやかさんの表情は、苦虫を噛み潰したようだ。

僕も、そんな感じなのだろうか?


しかし、この世界では絶対に必要なスキルではあるな。

奴隷が存在する時点で、地球の人たち、特に日本人には耐えられないかもしれない。


……まあ、ファンタジー小説なんかにはよく登場するんだけどね。奴隷。

……ただ実際、目の前で見るとね……。

さすがに、くるものがあるのかもしれない。


特に、あの死んだ目。

あれを見た時は、スキルがあっても少しくるものがあった。


「さて、お酒も飲んだし、私寝るわ」

「ああ、僕もこれで就寝しますよ」


僕はキッチンの流しへコップを持っていき洗う。

さやかさんは、僕に手で挨拶して食堂を出ていった。

反対側の手に、ビールの空き缶を持って。


あの空き缶は、地球に持って帰るのだろう。

……考えれば、考えるほど、この世界は不思議だ。




▽    ▽




朝、ベッドから起きると時刻は午前七時ちょうど。

もう、みんな起きているかなと服を着替えて食堂へ降りて行くと、みんなそろっていた。どうやら、僕が一番最後だったようだ。


朝食はすでに準備できていて、僕を起こしに行こうとしていたらしい。


「寝坊して、ごめんね」

「おはようございます、真之介さん。昨夜は遅かったんですか?」

「いやいや、深夜に目が覚めて眠れなかったんでね?

ここで、ホットミルクを飲んでまた寝たら、七時までグッスリだったようだ」


康太君の質問に答えただけなのに、なぜ、みんなクスクス笑うの?

何か、変なこと言ったかな?


僕が席に着くと、康太君が話し始める。

彼は、このパーティーのリーダー的存在になっているな……。


「さて、今日で地球に帰ります。

いろいろとやり残したことがあるでしょうが、予定通り今日で帰ります。

この家も返す予定ですから、忘れ物ないようにしてください。


特に、地球のゴミなどは地球で捨てること。

異世界に残さないように、いいですね?」


「「「は~い」」」


「では、いただきます」

「「「いただきます!」」」


こうして朝食が始まる。

……何か、学校を思い出して懐かしいね……。

僕も忘れものには、気をつけないと……。





今日は、ここまで。

次回は、地球へ帰る、そして……。








第93話を読んでくれてありがとう。

次回もよろしくお願いします。

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