第85話 ダンジョンでの成果
みんなで冒険者ギルドへ向かっていたはずが、途中で見つけたお茶屋に日向さんたち女性陣をさやかさんが率いて行ってしまった。
ついでにと、悠太もいっしょに連れて行ってしまう。
そのため、冒険者ギルドにオークの素材や魔石、ダンジョンの報告などを俺と真之介さんの二人に押し付けられる形になった。
さやかさんたちの背中を、呆れた表情で見送った俺と真之介さんは、お互い顔を合わせると、しょうがないと諦めて、二人でギルドへ向かった。
「……さやかさんは、結構強引な方ですよね…」
「悠太が苦手にしているそうですから、普段からあのままなんでしょう……」
とりあえず、オークの素材やら魔石は、俺のアイテムボックスの中にあるから、ギルドに持っていく分は心配ないが……。
▽ ▽
ポック村の冒険者ギルド。
オークダンジョンが発見されて建てられた、比較的新しい建物だ。
村にできたギルドとしても、初めてのギルドでいろいろ役に立っている。
出来た当初は、オークしか出てこないダンジョンで、村のために冒険者がくるのかと心配されていたが、思いのほか冒険者が集まり、今、ポック村は潤っている。
さすがに、午後三時ごろの今、冒険者ギルド内に冒険者は少ないが、ギルドに入って俺たちは気にせず、受付へと向かった。
「お帰りなさい、ダンジョンはどうでした?コータさん」
書類仕事の手を止めて、入り口から入ってきた俺に挨拶してくれた、ポック村の冒険者ギルドの受付嬢ジュリアさんだ。
ジュリアさんは、犬人族の獣人女性で、ギルド受付譲らしく美人だ。
スタイルもいいしな。
「オークだらけで、しかもそのオークが強い強い。
何とか帰ってきましたよ……」
少し疲れたような俺の答えに、ジュリアさんも真之介さんも苦笑いだ。
「ジュリアさん、素材の買取をお願いします」
「はい、では、こちらから裏手にある素材倉庫にお願いします」
そう言って、俺たちをギルドの裏手に案内してくれる。
その案内に俺たちはついて行く。
いつもと一緒だ。
ダンジョンのオークの素材を買い取る際は、解体できない人もいるので、ギルドで解体をしてくれる。
少し手数料を取られるが、オークの肉は人気があるので専門の人に解体してもらった方が手に入るお金が多いのだ。
ただし、俺たちには、俺の解体魔法がある。
実は、解体スキルで解体するより、解体魔法で解体する方が、買取価格が多い。
これは、魔法で解体することで、さらに魔素にさらされ味が美味しくなるのだか。
……まあ、あくまでもギルドの意見であり、研究者たちの研究結果ではない。
確かに、解体魔法で解体したオークのお肉の方が美味しいのだが、何故おいしくなるのかは、まだはっきりとしたことは分かっていない。
「コータさん、シンスケさん」
受付嬢のジュリアさんは、真之介さんのことをシンスケさんと呼ぶ。
どうやら、真之介さんの『の』の所が発音しづらいらしく、何度呼んでも、シンスケさんになるので真之介さんが諦めて、シンスケさんとなった。
「ダンジョンで倒したオークは、解体魔法で解体しましたか?」
「はい、こんなことにしか使えない魔法なので……」
ジュリアさんは、俺の答えを聞いて満面の笑みで倉庫内から無限鞄を三つ出してきた。
「では、まずオークの肉をこの机に出してどんなものか確認しましょう」
「はい、では……」
こうして俺は、オーク肉を取り出しては、無限鞄へ入れていく作業をする。
ジュリアさんは、確認したオーク肉がどこの部位か、どんな状態かを確認しメモしていくのだ。
その時、数も確認していく。
この一連の作業に、かなりの時間を要するのだ。
さやかさんは、この作業を見越して女性陣を誘って村の中にあるお茶屋に逃げたのだろう。ちゃっかりした女性である。
通常、オーク肉は解体、もしくは解体魔法で三つの部位が採取できる。
まずはお腹の肉。
ここは脂肪分が多く、赤身肉が少ないように思えるが、実はオークはあんな太った体つきで大半が筋肉なのだ。
そのため、赤身肉もしっかりとしていてそこに脂身が付き、さらに魔素が加わり美味しい。
次がモモの肉だ。
鳥と同じように、オーク肉は、モモの部分もおいしい。
やはり二足歩行なので、モモの部分が発達しているからだろう。
脂身も少なく、肉本来のうまみと魔素が絡み合って絶品らしい。
最後が肩の肉だ。
ここは、赤身肉にいい具合に脂身のさしが入った肉で、焼いて食べるのに適した肉だそうだ。
また実はここ、魔素があまりなく肉本来の味が楽しめるのだとか。
俺はオーク肉は、お腹しか食べたことがないので、どう違うのかはすべてジュリアさんの意見を参考にしている。
……今度、みんなで食べてみようかな。
後、解体魔法でのみ取れる部位もある。
それが、オークの睾丸である。
ただし、ただのオークの睾丸では買取していない。
買取しているのは、例えばジェネラルオークなどの上位オークのみだ。
何でも、錬金術で精力ポーションに加工すると、貴族や王族に人気があるのだとか。
何のために必要かは、言わずともわかるだろう……。
次に、オークの魔石だ。
今回俺たちのパーティーが、ダンジョンでオークを倒して手に入れた魔石の数は、三日間で、千六百八十六個。
単純計算で、オークを千六百八十六体倒したことになる。
……それは、レベルも上がるわな。
それと、よくもまあそんなにオークがダンジョンにいたものである。
ジュリアさんも、肉の多さに表情が引きつっていたが、買取金は翌日渡すことになった。
ジュリアさん曰く、ギルドにあるお金が足りないらしい。
ナブトの町へ今日中に知らせて、明日届くようにするそうで、明日の今頃の時間に取りに来てほしいとのこと。
現在、午後六時二分。
オーク肉の確認に、手間取ってしまったようだ……。
今日は、ここまで。
次回は、買取金額の発表か……。
第85話を読んでくれてありがとう。
次回もよろしくお願いします。




