第83話 レベル上昇の隠し加護?
オークダンジョンの第三階層に、俺たちのパーティーは降りてきた。
現在の時刻、午後四時ちょうどだ。
この時刻からなら、第三階層を少し見てまわり引き返そうと思う。
ダンジョンの入り口までの時間を考えれば、第三階層の探検は明日に回すべきだろう。
階段を降りて、少し辺りをウロウロしていると、前方の角から声が聞こえてきた。
誰かが叫んでいるようだ。
「……この先で、戦っている人がいるのか?」
「気配察知には、五つの反応があります」
「とりあえず、確認のためそっと覗いてみよう」
俺たちは角まで来て、声の聞こえた方を除く。
すると、四人の男たちが武器を片手に、一体のオークと戦っていた。
男たちは、冒険者なんだろう。手に剣を持ち、オークに対し次々と切りかかっている。
満身創痍のオークに、手を緩めることなく剣で攻撃を繰り返す。
よく見ると、戦っている男たちの周りには、二体のオークが倒れていた。
「……周りに倒れているオークは、倒したものかな?」
「たぶんね。しかし、あの人たち、強いね……」
「全員での連撃、オークがフラフラだ……」
そして、ついにオークに入った剣の一撃で倒れ、絶命したようだ。
男たちが、雄たけびを上げている……。
俺たちは、見つからないようにそっと、角に隠れた。
「この道は邪魔になるな、別の道を探すか?」
俺の問いに、日向さんは自分の腕時計を見て…。
「上に上がる時間を入れると、そろそろ戻った方がいいわね」
「午後四時二十分、上までの時間を入れると仕方ないか……」
日向さんの提案で、俺たちはそのまま引き返していった。
勿論、帰り道もまっすぐ進んだとはいえ、オークは襲ってきたからね。
それぞれ相手をしながら、帰還した。
▽ ▽
ポック村の宿に、部屋を借りて泊まることにした。
実はこの村には、宿屋が二軒しかないのだが、民間経営の宿と冒険者ギルド経営の宿がある。今回泊まることになったのは、ギルド経営の宿だ。
本当は、民間経営の宿には大人数が泊まれる部屋がないため、冒険者ギルド経営の宿になってしまったのだが……。
ギルド経営の宿には、大部屋が存在する。
最大パーティー人数の十二人部屋があるのだ。
俺たちが借りたのも、その最大人数部屋だ。
一泊銀貨十二枚。パーティー人数と同じだが、朝夕の食事が付き、このお値段だから安いのかもしれない。
人数で割れば、約銀貨一枚だからね。
一応カーテンで仕切りをつけて、今日は就寝となった。
夕食は、まあまあの味と量だった。
地球の食事を経験すると、満足いくようなものではないが、食べられるだけマシ、といった感じか。
俺は、ベッドに横になってから自分のステータスを確認する。
【名前】 西園寺 康太
【年齢】 17歳
【種族】 人族
【職業】 地球の冒険者 / 高校二年生
【レベル】 56
【スキル】 異世界言語 アイテムボックス 鑑定
槍術Lv5 棒術Lv3 投擲Lv2
射撃術Lv2
魔力制御 回復魔法 解体魔法
精神耐性 気配察知 薬草知識
錬金術Lv2
【称号】
【所持金】 金貨45枚/銀貨21枚/銅貨75枚
ギルド預金 0
「……やっぱり、レベルが上がりやすいみたいだな……」
「ん?どうしたんだ康太」
俺の隣のベッドに横になっていた悠太が、俺の声に反応してしまった。
そして、俺が自分のステータスを確認しているのを見て自らも確認しだした。
「お、俺のレベルも上がってる。レベル五十になってるぞ」
「やっぱり、地球の冒険者は上がりやすいのか……」
そこへ、真之介さんも起きてきた。
そして、自分のステータスを確認しだした。
「僕も、レベルが上がっているよ。現在レベル二十八だね」
「「二十八?」」
真之介さんが魔物と戦ったのは、オークダンジョンに入ってからが初めてのはず。ということは、オークと戦ってきただけでレベルが上がったことになる。
……どうりで、盾でオークを止めることができたわけだ。
レベルが上がって、力が増したためだったんだろう。
しかも、身体能力向上スキルも働いたから、さらに力強くなっちゃった。
これは、同じパーティーのシスターたちも、レベルが上がっていると見ていいだろう。
明日起きたら、確認しておこう……。
▽ ▽
「レベル三十二……」
「私は、レベル三十四だわ……」
朝、宿に併設されている食堂で朝食を食べている時に、俺はシスターたちに自身のレベルを確認してもらった。
確認後、二人とも驚いていたな。
シスターたちによれば、ダンジョンに潜る前は両方とも、レベル八だったそうだ。
それでも、孤児院のシスターとしては十分だったようなのだが、孤児院村のシスターとしては不十分だった。
そのために、同行をお願いしたのだが、こうも思惑通りに行くとは……。
やはり、地球の冒険者とパーティーを組んでレベル上げを行うと、かなりの成果が出るようだ。
「普通は、レベルを上げるのって、結構苦労するのに……」
ふむ、地球でいうところの努力を重ねるっていうやつか。
後は長い時間やり続けることで経験を積む。
シスターたちが、信じられないという顔になるのも無理は無いってことだな。
「朝食を終えたら、今日もダンジョンに潜りますよ。
目指せ、レベル百、ね?」
さやかさん、それは流石に無理でしょう……。
でも、あと二日か三日ダンジョンに潜り続ければ、本当にレベル百も夢じゃないな……。
とりあえず、このまあまあの朝食を食べて、ダンジョンへ行くか……。
今日は、ここまで。
次回は、レベル百までは……。
第83話を読んでくれてありがとう。
次回もよろしくお願いします。




