第82話 レベル上げはダンジョンで
シスターのソフィアさんと、シャーロットさんを加えて、俺たち十一人のパーティーは今、『ポック村』へ来ている。
全員のレベル上げのために、『オークダンジョン』へ挑戦するためだ。
冒険者ギルドで聞いてみると、オークダンジョンのランクは六。
天空ダンジョンよりも、二つも上であることが分かった。
今の俺たちのパーティーでは、とてもじゃないが攻略することはできない。
だが、挑戦する価値はあるのだ。
まず、ナブトの町から近いこと。
残念ながら、俺たち地球の冒険者にとっての最初の町であるナブトから近い場所にあるダンジョンが、このオークダンジョンしかなかった。
後は、浅い階層で戦うことでレベルを十分上げることができる。
ダンジョンレベルが高いといっても、浅い階層は十分今の俺たちでも戦える。
そこで、レベル上げを目的として、ダンジョンに潜ることにしたのだ。
ポック村にある冒険者ギルドで相談したら、第一階層から第五階層までの間であれば比較的安全に戦えるでしょう、とのことだ。
こっちの世界に来てからすでに二日、俺たちはさっそく全員でオークダンジョンへ潜っていった。
▽ ▽
「真之介さん、防御を!」
「任せてくれ!」
第二階層を歩いていると、正面からオークが三体出現し俺たちに襲い掛かってきた。
それを遠距離攻撃で受け、今、真之介さんの盾でそれでも向かってくるオークを防いだのだ。
シスターたちの持つ槍が、真之介さんの盾の両側から盾に気を取られているオークの両脇へ左右から突き刺さる。
『ブオオォッ!』
「シスター、そのまま押し倒して!」
「「はいっ!」」
槍を押し込み、盾から離してさらに槍を押し込むと、オークはそのまま仰向けに倒れ動かなくなった。
両脇から突き刺した槍が、オークの心臓を貫いたのだろう。
オークを倒したと分かると、シスターたちの気が緩みそうになるが、すぐに真之介さんの声で気を引き締める。
「後オーク二匹、正面!」
「真之介さん、右をお願いします!」
「分かった!」
そう言うと、真之介さんはダンジョンの通路の右により、遠距離攻撃で足を止めている右側のオークに対峙する。
「魔法はもういいぞ、まずはオークの足を狙え!」
「了解!」
「動けなくして、槍で止めだ!」
日向さんたち近接戦闘組が、それぞれの武器を手にしてオークに襲い掛かっていく。
オークの足を狙い、機動力を奪うのだ。
まずは、左側のオークの足を狙い切りかかる。
オークも突っ込んでくる日向さんと竹原さんを、こん棒で払いのけようと振り回すがあっさりと躱され、自分の足を切られてしまった。
そこへ脇腹から槍を突き立てた市原さんが、止めとばかりに思いっきり押し込む。
槍は深々と突き刺さり、オークの心臓を貫いて絶命に成功した。
次に、真之介さんが対峙してその行動を封じていた右側のオークに襲い掛かる。
またもやオークの足に切りかかった攻撃はうまくいき、日向さんと竹原さんの刀でオークの足を切断。
オークはその場に崩れ落ちた。
そこへ、槍を持つ俺たちが突き、止めを刺して終わりだ……。
「ふぅ~、お疲れ様」
「お疲れ様~」
みんなで労いの言葉をかけ、少し休憩とする。
浅い階層とはいえ、ここまでかなりのオークを倒してきた。
このオークダンジョンは、今わかっている最深部が第六十層までだ。
その中で、比較的弱いオークが出現するのがギルドでも言われた五階層までで、それ以降はオークの中に変異種が混ざるそうだ。
また、魔法や攻撃が変わるのが八階層辺りからで、鎧などを装備しだすのが十二階層からだ。
集団での統率が取れた戦い方に変わるのが三十階層からで、そこからはかなりの人数が必要になるそうだ。
「シスターたちは、どうです?戦えそうですか?」
「はい、私たちは大丈夫です」
「それに、真之介さんの盾がいい仕事してくれてるわね」
ダンジョンに潜り始めは、魔法で戦っていた真之介さんだが、二階層に降りたあたりから盾を前面に出して、オークの攻撃を防いでくれている。
おそらく、レベルが上がりオークの攻撃に耐えられるようになったためだろう。
……それにしても、一階層を抜けただけで、そこまでレベルが上がるんだな。
「よし、休憩終わり。出発するよ~」
「オッケ~」
悠太のおばさんのさやかさんの合図で、俺たちは立ち上がりダンジョンを進んでいく。
今回は、腕時計をみんなしている。
現在、午後三時十分。もう少し、この二階層を探検できそうだ。
▽ ▽
『ブガアッ!』
「くっ!」
「真之介さん、何とか持ちこたえて!」
三階層へ降りるための階段を見つけたところで、オークが昇ってくるところに出くわす。そして、そのまま戦闘になったわけだが、階段から登ってくるオークが四体もいたのが誤算だった。
まだ、この階層のオークの武器は、すべてこん棒なのだが、大きさが二階層のオークとは少し違う。
棍棒の先端が、大きく太くなっていて、まるで大きな木の玉をつけているようなのだ。
しかも重さもあるようで、多く振り回してダメージを与えてくる。
武器、魔法を使い、俺たちはオークを一体一体相手にしているが、盾を持つ真之介さんが、残りのオークの気を引いて受け持ってくれている。
戦い始めは、三体のオークの攻撃を盾で防いでいたが、今はようやく一体にまでになった。
「よし、倒した!残り一体!」
「真之介さん、盾でこっちに押し出して!」
「いくぞっ!」
真之介さんの盾にこん棒を振るっていたオークに、盾を密着させて俺たちの場所へはじき飛ばす。
バランスを崩しながら、はじき飛ばされたオークをまずは刀や剣で足へ攻撃、魔法で顔への攻撃で視界を奪い、槍を両脇へ突き刺す。
後は、フラフラの状態になったら首を落として終了だ。
ここまで何十体と戦ってきて、レベルも上がり倒し方も心得てきた。
なれというのは、恐ろしいな……。
「ふぅ、危なかったな……」
「魔物がダンジョンの階段を上るとは、思わなかった」
「リアルは、ゲームと違うよね」
みんな、階段を上ってきたオークに驚いているけど、今回の功労者である真之介さんに何かないのかな?
「真之介さん、お疲れ様です」
「私たちが、回復しますね……」
「あ、ありがとう」
シスターの二人が、真之介さんに治癒魔法をかけてる。
真之介さんの顔が赤いか?照れているのか……。
まあ、美人のシスター二人に、あんなに密着されてはな~。
「羨ましい……」
悠太、声に出てるぞ?
今日は、ここまで。
次回も、オークダンジョンでのレベル上げだ。
第82話を読んでくれてありがとう。
次回もよろしくお願いします。




