第8話 異世界側の転移部屋
明けましておめでとうございます。
2019年もよろしくお願いします。
俺たちは、ロバートさんとダニエルさんの魔法により、日本の冒険者ギルドから、異世界の冒険者ギルドへ転移された。
ここは、その冒険者ギルドにある転移部屋だ。
今まで目に映っていた転移部屋から、部屋の雰囲気が一瞬で変わるのが分かった。
転移されたのだろう。
「……もう転移されたのか?」
「ああ、だからもうその場所から動いてもいいんだぞ?」
俺がそういうと、周りをキョロキョロと見渡していた日向さんと新城さん、それに悠太の三人は歩き出す。
すると、この部屋の扉付近にいた女性に声をかけられた。
「ようこそ、地球の冒険者たち。
この部屋の出口は、この扉になりますので、覚えてくださいね?」
「あ、は………」
そこで悠太は、固まった。
日向さんと新城さんは、目を見開いて驚き、段々と輝きだした。
あー、その気持ちはよくわかる。
「さ、西園寺君、あの人に、抱き着いていい?」
「いいかな?いいよね?いいでしょ?!」
「落ち着いて日向さん、抱き着いてはダメだぞ、新城さん」
俺は日向さんと新城さんを止めるのに必死だ。
そして、硬直が解けた悠太が俺に掴みかかる。
「康太!ありがとう!俺を冒険者に誘ってくれて!!
俺は今、猛烈に感動しているっ!!」
「そ、そうか、感動しているか……」
俺と悠太が揉めているうちに、日向さんと新城さんは女性に突撃し何か許可を求めていた。
「あ、あの、私日向小春といいます、初めまして」
「私は、新城リコです」
「あ、はい、初めまして。冒険者ギルド『ナブト支店』の職員、ドロシーです。
地球の冒険者の方々ですね?この扉を……」
「あ、あの、お願いがあるんですが、いいですか?」
説明をしようとしていたドロシーさんの言葉を遮って、日向さんが必死にお願いしようとしている。
その横の新城さんは、日向さんに同調するように何度も頷いていた。
「え、ええ、私にできることなら、構いませんよ?」
「では、モフらせてください!」
「ください!」
ドロシーさんの時間が、止まったような気がした。
すぐに苦笑いを浮かべて、返事するドロシーさん。
「えっと、コハルさんにリコさんでしたね?『モフらせる』とは……」
「その尻尾です!フワフワのその尻尾を、触らせてくれませんか?」
「触るだけではなく、モフらせて欲しいのです!」
……出たよ、まあその反応は分かる気がする。
ドロシーさんは、獣人の女性だ。それも、狐人族。
狐耳が頭の上にあり、髪は金髪で腰まである髪は艶があるほどだ。
顔も美人の類だし、少し釣り目の所が何とも艶かしい。
スカートと上着の服の境目らしきところから出している尻尾は、見た目フワフワのモコモコだ。
触り心地は、最高に違いあるまい。
しかも、地球と交流があるこの冒険者ギルドの職員となれば、尻尾のケアは地球レベルだろう。
日向さんと新城さんが、目を輝かせてお願いするはずだな……。
だが、悠太は別のことで固まったようだ。
……さっきから、日向さんと新城さんのお願いに困っているドロシーさんの、胸を凝視しているからな……。
ま、まあ、確かに大きいような、ドロシーさんの胸。
多分あれ、自分の足元が見えないんじゃないかな?
スタイルもいいし、ドロシーさん、あれでまだ独身だからな……。
「わ、分かりました、分かりましたから。
い、いいですか?少しだけですよ?
獣人種の尻尾は、本当は将来を考えた人にしか触らせないんですからね?
コハルさんとリコさんは、同性だから特別ですよ?」
「「ありがとう!!」」
どうやら、ドロシーさんが根負けしたようだな。
それにしても、獣人種の尻尾は、そういう人じゃないと触れないのか……。
確か、エルフの耳も、伴侶以外は触らせないってキャロルさんが言っていたな。
そして、ゆっくりと慎重にドロシーさんの尻尾に触る日向さんと新城さん。
「……んん……あ、強く握ら、ないで………」
……なんだろう、すごくいやらしい。
くすぐったいのを我慢しているのか、顔を赤くして何かに耐えるドロシーさん。
「すごい……柔らかくて……いい匂い……」
「あ、いやぁ……匂いを、嗅がないで……」
「フフフ……モフモフ………」
傍から見ていると、すっごくいやらしい感じだ。
側にいる悠太が、興奮しすぎて、今にも鼻血を出しそうだ……
▽ ▽
それから5分ほど、日向さんと新城さんは、ドロシーさんの尻尾を堪能した。
そして、悠太は撃沈している。
「……興奮しすぎだ、悠太。
それに、この部屋から出れば、待望のエルフの女性に会える「行くぞ!」…」
もう復活しやがった。
そんなに、エルフの女性に会いたいのか……。
満足した日向さんと新城さんに、次の部屋に行くことを促す。
ドロシーさんが、すごく疲れた表情をしていたけど、大丈夫かな?
一応、俺はドロシーさんに頭を下げて挨拶をして次の部屋へ。
ドロシーさんは、何とか笑顔で俺たちを送り出してくれたが……。
次の部屋に入ると、女性が出迎えてくれた。
一応言っておくと、初心者でないとこの部屋には案内されないんだよね。
俺は、三人の付き添いだから入れたけど、初心者以外はドロシーさんのいた左側の場所と反対側にある扉に入ることになる。
「ようこそ、新人冒険者さんたち。ここからは、私たちが案内するわね?」
「……ん?どうしたの?」
案内の女性二人が、俺たちの、特に悠太の反応に戸惑っている。
それもそうだろう、何せ案内をしてくれる女性二人は、エルフの女性なのだから。
「ああ、すみません。
三人とも、お二人の美しさに、固まってしまっただけなので……」
そう俺が言うと、二人の女性エルフは、照れることなく笑顔で反応してくれた。
おそらく、ここに来る人、全員がこんな反応なのだろう。
それに、俺もこの部屋に来た時は悠太たちと同じ反応だったからな。
「フフ、この部屋にくる新人君たちは皆、私たちに見惚れるのね」
「地球には、美人っていないのかしら?」
「いやいや、美人がいないわけではなくて、エルフがいないからですよ」
「なるほど。でも君は、見惚れないわね?」
「俺は、ここに来るのは二回目ですからね。
今回は、この三人の案内でここに来れましたから」
「なるほど」
さて、固まっているこの三人を、どうするかな……。
それに悠太よ、見たかった、会いたかったエルフの女性が、それも二人も目の前にいるのに、動けないとはかわいそうに……。
さて、今日はここまで。
次回は、この部屋とエルフの女性についてかな?
第8話を読んでくれてありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。