第78話 スキルの影響は大きい
「うん、これでいいか………どうかな?康太君」
「え~と?」
「俺にも、見せてください」
真之介さんが決めた『スキル』を俺と悠太が見て確認する。
どう選んでも、本人の自由だからいいんだけど、一応チェックは入れておく。
『精神耐性』のスキルを取っているかとかね。
真之介さんの選んだスキルは…。
『鑑定』『盾術』『魔力制御』『風魔法』『土魔法』『光魔法』
『精神耐性』『気配察知』『健康体』『身体能力向上』
この十個か。
魔法を使うタンクタイプか?
真っ先に前面に出て、みんなを守る役目……?
「これは、何とも言い難い選び方ですね……」
「真之介さん、尖ってる!偏ってるよ!」
「……ダメかな?」
ダメではないんだけど、おそらく真之介さんの頭に思い描いている姿は、盾で防御しながら、魔法で攻撃する、といったものだろう。
物理攻撃を捨てた戦い方だから、物理攻撃ができる仲間が必要だな……。
でも、土魔法があるから、将来的には物理攻撃はゴーレムにお任せか?
後、注目のスキルが『健康体』か。
これを選ぶってことは、やっぱり今の身体のことを考えてかな?
健康体スキルは、健康状態に保つスキルだから、向こうに行ったら痩せているだろうね。
「私も決まったわよ、こんなのでどうかな?」
「えっと……」
「どれどれ……」
今度はさやかさんが決め終わったようだ。
俺がのぞき込み、竹原さんものぞき込んでくる。
さやかさんの選んだスキルは…。
『鑑定』『魔力制御』『火魔法』『水魔法』『土魔法』『光魔法』『回復魔法』
『精神耐性』『魔力察知』『身体能力向上』
以上の十個。
今度は、完全魔法職タイプか……。
しかも、気配察知ではなく魔力察知を選ぶとは……。
仲間ありきのスキル選びだな。
「さやかさん、このスキルだと、仲間がいないと大変ですよ?」
「いるじゃない、あなたたちが、ね?」
いい笑顔で、俺たちを指ささないでください。
これだと、さやかさんを隊列の真ん中に配置しないと、すぐに傷だらけになりそうだ……。
「お兄ちゃん、忍ちゃんのスキル選びも終わったよ」
「これでどうですか?」
「ちょっと、拝見……」
最後は、妹の凜の友達の忍ちゃんだ。
凜が、一緒になってあれこれと相談に乗つていたみたいだが、どうなったのか。
凛ちゃんの選んだスキルは…。
『鑑定』『射撃術』『集中力向上』『狙撃』『格闘術』
『魔力制御』『回復魔法』『精神耐性』『気配察知』『身体能力向上』
以上の十個だ。
うん、凜と同じように射撃を主軸に近接戦闘は、格闘術を選んだか。
魔法も回復魔法のみで、後は補助という感じだな。
「なかなか、いいと思うぞ。
これなら、どんなパーティーでも活躍は間違いないな」
「ありがとうございます」
凜と一緒に喜んでいるな~。
しかし、大人よりも子供の方がまともなスキルを選ぶって、どうなんだ?
▽ ▽
スキルが決まり、それぞれの冒険者ギルドカードへ入力が終わると、俺たちは転送部屋へ移動となる。
しかし、今日はスキル部屋にワークさんがいなかったな……。
俺も初めて会うギルド職員の人だったし……。
でもその謎も、転送部屋に入ると解決した。
「いらっしゃい、コータ君。それに、みんなもようこそ」
「ワークさん!」
そう、転送部屋にワークさんがいたのだ。
いつもの笑顔で、俺たちを迎えてくれる。
「どうしたんですか?ワークさん。スキル部屋からの異動ですか?」
「違う違う、ここへは臨時で入っているんだよ。
いつものギルド職員が、向こうのギルドに呼びだしを受けていてね」
「大変ですね、ワークさん」
「手が空いてるものがする決まりだからね。そうでもないよ。
それより、転送してもいいかな?」
ワークさんに笑顔で言われ、すぐに全員で赤い枠の中へ移動する。
そして、ギルドカードを手にして転送を待つ。
「ワークさん、お願いします」
「はいはい、それでは、行ってらっしゃい」
こうして、俺たちは地球から異世界へ転送された。
▽ ▽
転送されたって言っても、一瞬でだからそう苦痛でもない。
ただ、今回はいつもの転送と大きく変わっている点がある。
それは……。
「何これっ!うっそ!若返ってる!?」
「……俺が痩せると、こうなるのか………」
転送後、自分の身体を見て異変に気付き、転送部屋の中にあった姿鏡で確認し大騒ぎしている。
この部屋にいる狐人族のドロシーさんは、この騒ぎになれているのだろう。
笑顔で、見守っている。
「これ、歯も治っている。
抜けてた歯が多かったのに、歯並びが治った……」
真之介さんが、感動しているな。
おそらくあれが、健康体スキルの影響だろう。
痩せたのだって、そのスキルのおかげだと思うしな。
でも、さやかさんが若返ったのは何故だ?
そんなスキルは、無かったと思うけど……。
分からないときは、聞いてみるのが一番だな。
「ドロシーさん、質問いいですか?」
「コータ君、いいですよ?」
分からないことは分かる人に聞く、こうして俺は情報収集をしてきた。
このドロシーさんにも、いろいろ聞いたっけ……。
「さやかさんが若返った原因が分からないんですけど、ドロシーさんは分かります?」
「さやかさんとは、姿鏡の前にいる女性の方ですか?」
「はい、一番はしゃいでいる女性です。周りにいる女性は、元から若い女性ですから」
「……康太、もっと小声で話せよ。後でぶん殴られるぞ?」
「……」
……大丈夫、さやかさんには、聞こえてないようだ。
自分の姿が若返った驚きで、手いっぱいのようだ……。
「それで、どうしてですか?」
「その前に、一つ聞いておきますが、あの女性は魔法スキルを取っていますか?」
「ああ、はい、五つほど取っています」
「ならば、若返りの原因は魔力スキルの影響ですね。
実は、魔力スキルは身体年齢を最盛期に戻す働きがある事が分かりました。
ただし、歳を取らないわけではありません」
魔力スキルの影響で若返る……。
それは、身体年齢を最盛期に戻す働き……。
「これは、まだ研究中の分野なんですが、魔力の働きの一つに身体組織の活性化があります。
この活性化が、身体を最盛期へと若返らせるようなのです。
ただし、この若返りは地球からこちらへ来る地球人のみの現象のようです。
おそらく、魔素をこちらに来て初めて取り込んだ影響ではないかと、研究者は考えているそうです」
なるほど、地球人のみの現象か……。
ってことは、地球に戻ったら元通りってことなのかな?
……なんも言えねぇ。
今日は、ここまで。
次回は、依頼の前にすること……。
第78話を読んでくれてありがとう。
次回もよろしくお願いします。




