第71話 高校二年生の三学期
冬休みが終わってから二週間が経過したある日、俺たちの冒険者としての活動はいったんお休みして、学業を優先していた。
この時期、一つ上の学年の三年生は、大学受験の真最中だ。
来年は、俺たちが大学への受験のために勉強することになるのだろう。
そういえば、天空のダンジョンの後、四日ほど滞在して報酬を受け取り、俺たちは日本へ帰ってきたが、大篠さんとマネージャーの木下さんは残っていた。
一月いっぱいは仕事が休みなようで、その間、冒険者家業を続けるとか。
今まで、趣味といえば本を読むことしかなかったが、こうして冒険者として過ごすことがこんなに楽しいとは、とはしゃいでいたようだ……。
まあ、エマさんがアドバイスをしてくれるそうだから、まかせておけば死ぬことはないだろう。
休み明けの二月になれば、実際にパワーアップした女優大篠ユミカが見れるだろう。
マネージャーもパワーアップして、苦労すると思うが……。
「西園寺、教科書の七行目から読んでくれ」
「あ、はい」
現在、国語の授業中。
しかし、三学期の授業など、残った授業の早送り、時間調整でしかない。
教科書がどのくらい残ったかによっては、じっくりやることもあるが、大半は早送りだ。
期末テストに卒業式に修了式と、高二最後のイベントが残っているしな……。
バレンタイン?
うちの高校は、お菓子を持ってきてはいけない決まりなので学校外のイベントになっている。
「………となったのです」
「よし、ありがとう。
では、今読んでもらった物語の中で、この主人公の心情を考えてみる」
……もうすぐ授業も終わりだ……。
▽ ▽
「起立!礼」
「今日はここまで、気をつけて帰るように」
今日も学校が終わった。
だが、異世界で冒険者である事の影響は少なからずあるようだ。
俺だけの時は気づかなかったが、体育の授業の時の悠太と他の男子との身体能力の差。
確実にあったな……。
さらに、授業の時の勉強の差も顕著だ。
勉強力とでもいうのだろうか?理解力、計算力、どれも今までの俺たちと違う。
特に英語は、かなり驚かれていたな。
特に、悠太の時。
まさに別人、いや、海外で暮らして来たのか?というぐらいだった。
スキルは使えなくとも、体の基礎は確実に上昇しているようだ。
そんなことを考えていると、悠太がニヤニヤとしながら近づいてくる。
「康太~、俺の英語力、どうかね~」
「流調だって、驚かれていたな?」
「ムフフ、これならいつ外人に話しかけられても大丈夫だろ?」
「話しかけられてもって、そんな機会があるとは思えないが?」
「何を言っているのかね?日本は観光立国を目指すらしいし、英語は必須だろ?観光に来た外国人に、英語で道を聞かれても英語でかえせそうだ」
そういえば、悠太は外国人に英語で話しかけられて、アタフタした経験があったな……。その時の意趣返しってわけか?
「そういえば康太、今度はいつ向こうへ行くんだ?」
「向こうって、ギルドか?」
「そうそう、休みが続けば行きたいじゃん」
異世界にはまってるな~悠太。
でも、今は学業優先だ。それに、早い人はこの高2の三学期から受験に向けて勉強を始めるそうだぞ?
……まあ、今の俺たちには必要ないがな。
「康太~、お客さんだぞ~」
今日の授業も終わり、教室の大半の生徒が帰っていったところに、女子生徒が二人、俺を訪ねてきた。
俺が名前を知らないから、別のクラスの女子生徒だな……。
▽ ▽
俺の席の隣の席の椅子に座ってもらう。
もう1人は、その前の席だ。
「初めまして、俺が西園寺です。こっちは友達の遠藤です。
それで、俺に用があるみたいですが、何の用ですか?」
俺の席の隣に座った女子生徒は、ショートの髪形でなかなかの美人だ。
胸も大きい部類に入るし、モテるだろうな~。
もう1人は、肩までのロングでこちらも美人だ。
ただ、胸は少し小さいが……おっと、睨まれた。
「初めまして、一組の高橋佳奈といいます。こっちは友達の橋本響子です。
……これを見せれば、分かるでしょ?」
そう言って、高橋さんが見せてきたのは冒険者の証、ギルドカードだ。
さらに、橋本さんもポケットからギルドカードを出して見せてきた。
なるほど、俺たちを同じ冒険者と知って接触してきたのか。
「えっと、俺たちのことはいつ知ったんですか?」
「向こうのギルドで行き詰ってね?ギルドの職員に相談したら、あなたのことを紹介されたのよ。
知ってるでしょ?受付嬢のエマさんのこと……」
エマさんの紹介か……。
おそらく、力になってあげてってことなんだろう。
後は、めんどくさがって俺に押し付けて来たか、だな……。
「エマさんの紹介なら、相談に乗りますよ?何か聞きたいことでもあるんですか?」
俺が相談に乗ると分かって、高橋さんと橋本さんの表情が和らいだ。
エマさんの紹介といえど、ちゃんと相談にのってくれるか不安だったんだろうな……。
「まず、私たち、一緒に冒険者をしてくれる人数を増やしたいの。
それで、何人まで一緒にできるのか知りたいんだけど……」
「それって、パーティー登録の人数のことか?」
悠太が、横で聞いていて意見してくる。
その質問に、頷いて答える高橋さん。
「確か、最大で組めるパーティー人数は、十二人だよ。
それ以上ならチームというくくりになるはずだ」
「十二人。六人や八人じゃないのね……」
「これはゲームじゃない。本物の冒険だ。
特に討伐などの依頼は、人数がいないと話にならないときがあるからね」
強い魔物や大きい魔物の対処は特にね……。
今日は、ここまで。
次回は、相談の続きか実践……?
第71話を読んでくれてありがとう。
次回もよろしくお願いします。




