第70話 寿命と魔力
天空のダンジョンを無事攻略し、ナブトの町へ馬車で帰還中の雑談で寿命の話で盛り上がる俺たち。
「具体的に、どれぐらい延びるんですか?」
「う~ん、そうね……、魔力上昇はレベルが上がれば上がるから、レベル=延びた寿命と考えればいいんじゃないかな?」
俺の質問に、エマさんが答えてくれる。
レベル=延びた寿命ということは、今の俺のレベルを考えると四十歳は延びたことになる。これは喜んでいいのか?
「エマさん、容姿はどうなります?寿命が延びて、容姿が変わるとか……」
容姿、寿命が延びて若返るとかかな?
……今の容姿から、若返るのか?
「それは変わらないと思うわよ?ね?」
「ええ。確か、種族間の寿命に関しての論文があったわね。
何故、寿命が違う種族がいるのかとか、異世界人の寿命が何故変わるのかとか?」
エマさんは隣に座るキャロルさんに同意を求め、キャロルさんは、論文のことを思い出してくれた。
何それ、すごく気になる!
こっちの世界では、そんな研究もされているのか……。
「あのキャロルさん、その論文のこと教えてくれませんか?」
「それはいいけど……。
それで、どんなことを知りたいの?」
俺たちを見渡して、キャロルさんが笑顔で聞いてくる。
そこでまずは、俺が質問した。
「まずは、この世界の種族別の平均寿命って分かりますか?」
「……全人類を調べた訳じゃないから正確な数値じゃないけど、その論文では、
人族が60歳から70歳。
獣人が200歳から250歳。
ドワーフが500歳から600歳。
そして、エルフが1000歳から1500歳、と紹介されていたわね。
この数字の別れ方にも理由が書かれていて、その論文では魔力が関係しているとなっていたわ」
魔力が、寿命に影響を?
確かに、魔力が多い順番といえばそうなのか……。
「でも、それだと魔力の少ない獣人の寿命が説明できませんけど……」
「そこのところは、獣人の少ない魔力を効率よく操る技術が寿命に影響を与えていると説明されていたわね」
ということは、魔力と魔力操作で寿命は延びるということか……?
でも、それじゃあ人族の寿命が短いのは?
「それは、人族の多さが原因でしょう。
この論文の数字は種族間の平均寿命、平均となれば人数が多い方が……」
「変わってしまうというわけか」
「ん~、よく読んで理解しないと、間違った解釈になりそうだな」
悠太が、解釈の違いが大きな違いになることを理解したようだ。
解釈の仕方で、答えが変わるなんて……。
数字って、明確な答えでもあり間違いでもあるのか……。
「それじゃあ、容姿が変わらないのも魔力の影響なの?」
日向さんが、気になったことを質問してくる。
魔力で容姿が変わるなら、地球でも同じ事が……。
「魔力というよりも、体内魔力の影響の所為みたいよ?
論文では、体内魔力が高くなれば寿命が延びると同時に全盛期の容姿のままでいることができるみたいね。
魔力によって、老化も防止されるみたい。
地球で容姿が変わりやすいのは、魔力が少ないことも影響しているって論文は断言していたわ」
断言って、論文の作者は地球を知っているのか?
……いや、勇者召喚があるんだから、知っているのかも。
「何か、この事実を地球の女性たちが知ったら、殺到しそうな論文ですね……」
「……あの、異世界人がレベルを上げると若返ったり寿命が延びるのは、今まで魔力の恩恵を受けてこなかったせいもあるんですかね?」
大篠さんが、寿命や容姿のことに少し身震いしている所に、マネージャーの木下さんが魔力の恩恵の質問をしてくる。
……魔力の恩恵?
「そうね、地球は魔力が少ないみたいだからそれなりの寿命だったんでしょう。でも、こっちでレベルを上げれば、魔力を吸収して寿命が延びるってことでしょうね」
う~ん、レベルが上がれば体内に内包できる魔力の量が上がる。
そして、その体内魔力によって容姿が全盛期の容姿になり、さらに寿命までもが延びる。そして、長く生きられるというわけか……。
こうして、俺たちはレベルを上げ寿命を延ばした。
……若い時代が長いなんて、どっかの野菜星人のようだ。
「でも、地球じゃあ生きにくくなるのかな?」
俺の口から出た質問に、みんなが黙ってしまった。
地球での最高齢は確か百十二歳だっけ?
その年齢を軽々と超える二百歳も夢ではないはず……。
では、その年齢を地球の人々が信じるのか?
……この異世界との扉を教えるか、それとも、俺たちがいつも間にか地球から消えているか……。
考えるときが、来るんだろうな……。
▽ ▽
天空のダンジョンを馬車で出発してから三日で、ナブトの町へ到着した。
馬車で直接町へ入り、冒険者ギルドの前で停車する。
それから、全員で依頼達成の報告を済ませ、後は報酬やドラゴンの素材の分配をギルドに任せることにした。
まあ、一番の理由はめんどくさかったから。
後は、今回ダンジョン攻略に参加した冒険者が、みんなお金に困ってなかったことだな。二、三日は待てるって人たちだったからだ。
俺たちも、ここまで来たら報酬の準備が整うまでの二、三日くらいどうとでもないだろう。というわけで、俺たちも宿で休息をとることに。
地球への転移の時の『時間調整』を申し込んでおいたので、帰るときの転移で一月の六日に転移できるはず。
……これで、ようやく高二の三学期が始まる……。
今日は、ここまで。
次回は、地球での学校生活……。
第70話を読んでくれてありがとう。
次回もよろしくお願いします。
後、誤字脱字の指摘ありがとうございます。
大変助かっております!




