第68話 天空ダンジョンの攻略 5
天空ダンジョンの最上階にあったトンネルを、参加した冒険者とギルド職員全員で抜けると、そこにいたのは……。
――――ゴォアアアアァァ!!
「ド、ドラゴン!!」
「マジか!すげぇ迫力!」
冒険者たちは大騒ぎ、それに引き換えギルド職員は、あまり驚いてない様子。
「ダンジョンの最終ボスにドラゴンがくることは、よくある事よね」
「そうねぇ。それにこのドラゴン、グランドドラゴンみたいね……」
グランドドラゴン。
土属性のドラゴンで、翼がなく飛ぶことはできない。
さらに、ドラゴンの中でも弱い部類に入るドラゴンだそうだ。
それでも、俺たちがドラゴンの迫力に驚いていると職員の一人が叫ぶ。
「全員戦闘態勢!近距離攻撃担当は前へ!遠距離担当は後ろへ!
グズグズしていると、死にますよっ!!」
その迫力に、俺たちはすぐに行動を起こす。
そして、俺たちは全員『魔導銃』を構え、遠距離攻撃の準備をした。
「ちょっと、コータ君。槍で攻撃じゃないの?」
「キャロルさん、前を見てくださいよ。
あんなに近接戦闘の人がいると、俺たちが邪魔になるでしょ?」
キャロルさんから注意を受けたが、俺がドラゴンの前に並ぶ人を指さすと、納得してくれた。
何せ、ドラゴンと対峙している近接戦闘の人数が十人を超えているのだ。
あれでは、邪魔をしてしまう。
――――グルルルル。
ドラゴンが唸りをあげて、俺たちに威嚇をしだした。
俺たちを警戒しているのだろう。
その間に、支援魔法を近接戦闘の冒険者たちにかけていく。
ここまで来ると、だれがどのパーティーかは関係なくなっていた。
「攻撃開始っ!」
「「「うおおぉぉぉ!!」」」
ギルド職員の人の合図で、気合を入れながら近接戦闘の冒険者が襲い掛かる。
それを援護するため、俺たち遠距離攻撃の冒険者が攻撃を開始!
【ウィンドカッター】
【コールドアロー】
―――パパパパパパアン!!
魔法で攻撃をするもの、魔導銃で攻撃をするものと別れるが、どちらもドラゴンに命中。土属性のドラゴンなだけあって、弱点の属性が分かっているためか効果があった。
――――グギャァァァアア!
魔法での攻撃に苦しみ、鬱陶しそうにその巨体を左右に振るドラゴン。
さらに、近接戦闘の冒険者がドラゴンに襲い掛かった。
「うおおぉ!」
一人の剣士が両手剣で、ドラゴンに襲い掛かる。
その剣士に対処しようとドラゴンが口を開け、腕を構えるも、足元には別の冒険者の槍がドラゴンの足を狙っていた。
さらに上下左右から襲いかかってくる冒険者たち。
ブレスを吐く前に、ドラゴンはその巨体を水平に一回転させた。
すると、襲いかかってきた冒険者に、ドラゴンの尻尾が襲い掛かる。
「ぐわっ!」
「ぎゃふ!」
「うそ!」
その攻撃を避けたものもいたが、大半の近接戦闘冒険者はよけきれずにくらってしまった。そして、弾き飛ばされる。
はじき飛ばされた冒険者を、支援魔法を使った冒険者が治癒魔法で回復させていく。
しかし、ドラゴンはそこを見逃さず、口を大きく開けブレスの準備に入った。
「ブレスがくるぞー!」
ギルド職員の注意喚起の叫びが辺りにこだまする、
冒険者全員分かってはいるが、避けることができない。
「避けれないなら、逸らせ!」
誰かが叫んだ。
その叫びを聞いて、遠距離攻撃冒険者が一斉にドラゴンの口へ攻撃を集中。
まとめて攻撃したのが良かったのか、ドラゴンの口が冒険者達からそれる。
それた瞬間、ドラゴンのブレスが発射!
――――ゴオオオオォォ…。
治癒魔法を使って回復させている冒険者の横を、グランドドラゴンのブレスが通過する。まさに間一髪。
ブレス通過後、再びドラゴンへの攻撃を再開!
遠距離攻撃、近距離攻撃供に何度も攻撃し、ついにグランドドラゴンを倒した!
大きな音をたてて崩れ落ちるドラゴン。
それを、満身創痍で見つめる四十人の冒険者たち。
「倒したー!!」
「「「うおおおお!!」」」
天空のダンジョンの最上階にこだまする冒険者たちの喜びの叫び。
ここに、俺たちは天空ダンジョンを攻略したのだ……。
▽ ▽
「みんな、お疲れさま。
そして、天空ダンジョンの攻略完了おめでとう」
俺たちの側にきた、キャロルさんにそう言ってもらってようやく終わったんだと実感する。
その場に座り込んでいる俺たち全員は、やっと笑顔になれたのだ。
ランク四のダンジョンで、この大変さ。
俺のレベルもさらに上がり現在レベル40代へと突入。
みんなも同じぐらいか低くても30代後半だろう。
確かに、エマさんの薦めたとおり、この依頼を受けて正解だったかもしれないが精神的にはどうなんだろうか?
昨日今日、冒険者を始めた新人にこの依頼はキツイ気がする。
「キャロルさん、この後はどうするの?」
「この後は、休憩後、宝物の分配とグランドドラゴンの解体、それに依頼達成の報告のためナブトの町へ戻るわよ」
キャロルさんの言い方だと、ここでの分配などはできないようだ。
まあ、皆疲れているようだし、今動いているのはギルド職員の人達だけだからな……。
さて、報酬がいくらになるのか楽しみだ。
それに、このダンジョンで、どれだけ強くなれたかも……。
「キャロルさん、ダンジョンコアはどうするの?」
俺が指さすダンジョンコア。
緑の光を放ち、壁に埋め込まれている。
あれを壊せば……。
「ダンジョンコアはそのままよ。壊す必要はないわ」
「え?壊さないんですか?」
「ええ、というか、壊せないんだよね……」
そう言って、ダンジョンコアを見つめるキャロルさん。
壊せないってどういうことだろう?
今日は、ここまで。
次回、天空ダンジョン攻略編のおまけ?
第68話を読んでくれてありがとう。
次回もよろしくお願いします。




