第66話 天空ダンジョンの攻略 3
天空ダンジョンの十九階層に登ってきた俺たちだったが、そこは四方を壁に囲まれた行き止まりの部屋だった。
壁の一辺が五十メートルはあろうかというほど大きな部屋だったが、何も無かった。
「今回は、石像も何もないな……」
俺は、壁を調べながら部屋も時折見渡してつぶやく。
下の十八階層には、オークの石像があったがここには何もない。
ここに上がってきてから三十分近く壁を調べているが、何も出てこなかった。
俺が諦めかけた時、日向さんから声があがった。
「あった!見つけたよ!ここ!ここに、窪みがある!」
「窪みが?!」
部屋のあちこちに別れていた全員が、日向さんの調べていた壁に集まる。
そして、日向さんが指さす先を見ると、確かに床に窪みがあった。
「……確かに、これ何かあるわね」
キャロルさんが確かめて、窪みを触っていると突然、大きな音とともに階段正面の壁が開き始めた。
俺たちが集まっている場所からだと、ちょうど反対側だ。
―――ゴゴゴオォォォ……。
横幅三メートルぐらいの壁が、右にスライドしている。
そして、そこに見えたのは通路だった。
「……なるほど、この窪み、本当は押してあの扉を閉めるものだったのね。
通常は出っ張りが出ている所を、何かに引っかかってへこんでいたというわけか……」
「それじゃあ、罠とかじゃなくて?」
「ええ、装置の不具合ってことね」
何ということでしょう!装置の不具合で、あんなに苦労することになるとは。
とりあえず、俺たちは少し休憩して、開いた通路を進んでいった。
▽ ▽
十九階層の通路を進んでいると、この階層の魔物が襲ってくる。
この階層の魔物は主にオークだが、時々コボルドが混ざっている。
コボルド、犬のような狼のような顔を持ったゴブリンと想像した方がいいか。
ゴブリンよりも知能は上で、しかもすばしっこい。
オークが何体も襲いかかってくる中を、足で引っ掻き回して襲いかかってくる。
「オークが五体に、コボルドが三体か!
近距離攻撃はコボルドを中心に!遠距離攻撃はオークを狙え!」
俺の指示に、悠太たち遠距離攻撃陣がオークを狙い俺たち近距離人はコボルドを狙う。足でかき回すコボルドに、槍や刀で応戦。
一方のオークは、足が少し遅いので悠太たちのいい的だった。
俺は槍の石突きで、コボルドの足を引っかけてから槍を回転させ、コボルドの首を落としていた。
コボルドは、素早かったのでこの倒し方もありだなと思う。
そして、何とか討伐に成功。
日向さんと竹原さんの刀組も、コボルドの足を切って動けなくしてから止めを刺していた。
「お疲れ様~」
「何とか倒せたけど、この上の二十階層からはコボルドが中心に出てくるのね」
「オークに混ざって出て来てたしな……」
オークの死体をアイテムボックスへ入れ、コボルドからは魔石のみを取り出し道の端へ放置する。これで、コボルドの死体は、ダンジョンが吸収するらしい。
オークは、肉が食べられるらしいので、回収しているのだ。
「なあ、このダンジョンには階層ごとのボスみたいなのがいないのか?」
「そういえば、十階層にもいなかったな……」
「どうなんです?キャロルさん」
「洞窟型や地下へ進むダンジョンには、何階層ごとにボスがいるわよ。
でも、塔型ダンジョンにはボスと呼べる魔物は最上階のみ。
ダンジョンコアを守る魔物だけね」
へぇ、塔型ダンジョンにはボスがいないのか……。
そして、最上階にダンジョンコアがあるのね。
「ここの最上階って、雲の上なんですよね?」
「そうね、外から見て雲に突き刺さっていたし、そうなのかな?」
「雲の上での戦いか~」
新城さんが確かめるようにキャロルさんに質問しているけど、憧れなのかな?
雲の上での戦い……俺、高いところダメなんだけどな……。
▽ ▽
十九階層を無事に進みきり、二十階層へ上がる俺たちパーティー。
レベルも、これまでの魔物との戦闘でずいぶんと上がった。
俺がレベル28から36へ上がり、他のみんなは、一桁台だったのが22から33までになっている。
特に、俺の妹である凜や大篠さんと木下さんは、レベル1だったのが、そろって22へ上がっていた。
休憩中に見て、喜んでいたが肝心のスキルレベルはそんなに多く上がっていなくてガッカリしている。
スキルレベルはどれだけ使ったかの熟練度で上がるからな、基本身体能力のレベルとは上昇具合が違うのだ。
二十階層からは、コボルドのみの魔物が襲い掛かってくる。
始めは、集団のコボルドでも武器が貧弱で、素早くはあるのだがそんなに苦労することなく倒せていた。
ところが、二十六階層辺りからコボルドの持つ武器が明らかに変わってきたのだ。
剣や槍、中には剣を二本持った二刀流を使う物までいた。
そして、ついに出てきたのが魔導銃を二丁持ったコボルドだ。
しかも、魔法が効かない変異種まで混ざって襲いかかってきた。
向かってきたコボルドの数は十。
剣を装備したコボルドが八体、二丁の魔導銃を持って奴が一、そして槍を装備した魔法が効かない変異種のコボルドが一体だ。
「悠太、二丁拳銃を弓でけん制!その隙に日向さんたちで倒してくれ!
剣のコボルドは凜たちの魔導銃で頼むぞ!魔法無効のコボルドは俺が相手をする!
キャロルさんはみんなのサポートに!」
「「「「はい!」」」」
みんなの返事とともに散会して、それぞれの相手をする。
俺は、槍を持ったコボルドの相手をする。
このコボルドだけ、槍とは分かりやすいわけかただ……。
最初に攻めたのは俺、ハルバードを回しながらガンガン攻めていく。
ここは塔ダンジョンの通路でしかないが、槍を振り回せるだけの余裕があったのだ。ハルバードを振り回し、このコボルドだけ孤立させ一対一の対決に持ち込んだ。
槍で俺の攻撃をしのぎながら、『シャッ、シャッ』と威嚇してくるコボルド。
顔は犬みたいなので、そんな威嚇になるのだろう。
だが、段々と槍捌きがついてこなくなり、両足のすねを切られた。
―――ガアァッ!!
痛みと威嚇のため、コボルドは顔を歪ませて俺を睨むが、俺はさらに攻め込む。
そして、コボルドの首を切り落とした……。
今日は、ここまで。
次回は、ダンジョンの頂上。
第66話を読んでくれてありがとう。
次回もよろしくお願いします。




