第63話 天空ダンジョンの入り口
「ほぉぉぁああ~~……」
「……塔の一部って、一メートルぐらいの壁が上の階層と繋がって残っているだけじゃねぇか……」
「どうして、あんなふうに残ったんでしょう……」
天空ダンジョン攻略の参加者の冒険者たちは、今、全員その攻略対象のダンジョンの真下にいる。
上を見上げれば、五階層目になる部分の天井が見えるのだ。
高さにして、約20メートルか?ビルでいえば七、八階相当といったところだろう。
塔の一階一階の天井は高いようで、端に残っている壁を見ると高さは三、四メートルあったと思われる。
しかし、これどうやって上がっていくんだろう……。
ここに来るまで、いろんな魔物がうろついていた。
レッドタイガーをはじめ、オーガ、オークと襲ってきたが、数はそれほどだ。
しかし、ゴブリンにいたっては、低階層にいるためか数が多くて戦っただけでも軽く100匹は超えていたと思う。
数が数なだけに、途中から数えるのも面倒になったほどだ。
「は~い、天空ダンジョン攻略の参加者は、集まってくださ~い」
冒険者ギルドの職員のエマさんが、参加者の冒険者を全員集める。
今回の参加者40人のうち、ソロで参加した者はいない。全員がどこかの誰かと組んで参加していた。
これは、天空ダンジョンに挑むにあたっての冒険者ギルド側から出された条件の一つだ。地球の冒険者が中心で集められるために、ギルド側が死者を出さないようにとの配慮らしい。
ギルド職員の同行も、その一環だとか。
「まずは、パーティーごとに別れてください。
メンバーを確認後、ギルド職員が同行するかどうか決めますので」
その指示に従い、参加者たちもパーティーとして別れる。
すると、一番多いパーティーが、俺たちの九人。後は、七人、七人、五人、六人、六人と別れた。
ちょうど六つのパーティーができ、ギルド職員も六人。
それぞれのパーティーにギルド職員が付くようになるみたいで、これは参加表明の時にパーティー単位での参加を促した結果だそうだ。
「コータ君たちのパーティーには、私が付くことになるから、よろしくね?」
と、キャロルさんが同行を宣言してきた。
俺たちは文句はない。レッドタイガーの時や、オークとの戦闘の時で実力は分かっているからね。
後、ここまで俺たちを運んできた馬車は、俺たちがダンジョンに入った後、迎えの冒険者が来るまでここに留まり、迎えの冒険者が来た後はその冒険者と一緒に町まで引き返すとのこと。
それはともかく、いったい俺たちはどうやってダンジョンに入るのだろうか?
▽ ▽
パーティーごとに別れ、ギルド職員をつけると、俺たちは五階層から六階層への入り口の見える真下に移動する。
すると、俺たちの足元が光りだし、魔法陣が現れそのまま魔法陣ごと上へと上がっていく。
「これって、エレベーターの魔法か?」
俺たちとは別のパーティーの若い男性が、同じパーティーのギルド職員の女性に質問した。ギルド職員の女性は、若い男性を落ちつかせるように答えた。
「これは、私たちの魔法ではありません。
この魔法は、この『天空ダンジョン』自らがしていることなんです。
おそらく、一階層から五階層が無くなったため、侵入者を迎えるのにこんな方法を取ったものと思われます」
「ダンジョンが、自ら侵入者を?」
今度は、別のパーティーの若い女性が、ワークさんに質問している。
ワークさん、その人たちのパーティーに同行するのか……。
それはともかく、ワークさんは同じパーティーの女性に答える。
「ええ、ダンジョンは生きていますから、餌が必要なんですよ。
そのため、外からの生物、特に魔物や動物などは歓迎します。餌になりますからね?
そして、人もまたエサとして歓迎しているみたいなんですよ。
ですが、人は危険と分かっているダンジョンに自ら侵入しようとは思いません。そこで、ダンジョンは人を誘き寄せるエサを用意しました。
それが、ダンジョン内にある財宝です。
その財宝をエサに人を誘い、ダンジョンに招き入れるんですよ。
ダンジョンのエサになるように、ね?」
ワークさん、怖いよ?話している時の顔が!
同じパーティーの女性陣、怖がってるじゃん……。
そうこうしているうちに、五階層から六階層へ上がる階段へ到着。
ここから、俺たちの天空ダンジョンの攻略が始まるんだな……。
▽ ▽
と、思ったらギルド職員六人全員が先行して、六階層の安全地帯を確保するらしい。そして、入り口近くにある部屋に魔物除けの魔道具を仕掛け、さらに、六階層から下の階へダンジョンの魔物が落ちないようにもするんだとか……。
確かに、問題になっていたようだからしょうがないのだけど、俺たちの出番がないのはどうなんだろう。
魔法陣の上で待たされること、二十分弱。
すべての作業が終わったのか、ギルド職員たちが帰って来た。
「安全地帯の確保と、ここからダンジョン外へ魔物が出てこないようにしておきましたので、ここから、みんなのダンジョン攻略をスタートします」
そう名前も知らないギルド職員の女性が宣言し、ようやく俺たちは階段を上っていく。
冒険者たちが順番に登っていく中、俺たちは一番最後に階段を上った。
▽ ▽
階段を登りきると、そこにはキャロルさんが待っていてくれる。
「ようこそ、天空ダンジョンへ。
他のパーティーは、そこの安全地帯を確認後、それぞれに別れて進んでいったわよ?」
「安全地帯?」
日向さんが、キャロルさんの指さした方向を見て確認する。
そこは、部屋のような場所で入り口以外は壁に覆われていた。また、入り口には何かの戸枠の様なものがはめ込まれており、これが魔道具の一種なのだろう。
さらに、階段を確認すると、階段にも枠の様なものが付けられており、あれが魔物を下に落とさないようにしている魔道具なのだろうな……。
「確認は終わった?それなら、私たちも出発しましょ!」
「「「はい!」」」
こうして、俺たちの天空ダンジョン攻略が始まった……。
今日は、ここまで。
次回は、天空ダンジョン〇〇階層。
第63話を読んでくれてありがとう。
次回もよろしくお願いします。




