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駅前に冒険者ギルドが出来ていた  作者: 光晴さん
緊急依頼のすゝめ

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第61話 出発と日数




冬休み14日目、一月四日の午前五時三十分。

ナブトの町の西門近くに、七台の馬車と四十人の人がいた。

昨日貼り出された『緊急依頼』を見て集まった、冒険者達だ。


その中に、俺たち地球の冒険者も混ざっている。


こうして見渡してみれば、大半が地球の冒険者といえるだろう。

その証拠となるかは分からないが、半分の冒険者が『魔導銃』を所持しているのだ。そう、俺の妹の凜や、女優の大篠さんやそのマネージャーの木下さんも所持していた、あの『魔導銃』である。


射撃術というスキルを得て、撃てるようになるものらしい。


実は、昨日この『緊急依頼』をエマさんに薦められてから、ギルドの訓練場で凜たちの訓練をしたのだ。

一通り進めていく中で、俺たちも『魔導銃』の試射体験をさせてもらった。


スキルの無い俺たちは、ことごとく撃つことすらできなかった。


なぜ撃つことすらできなかったのか。

それは、魔導銃の構造から分かるのだが、そもそも魔導銃とは、引き金はあれど引き金を引いて弾を撃ち出すようにはできていないのだ。


引き金は、あくまでもきっかけなのだ。


魔導銃を教えてくれた教官は、若い俺たちぐらいの女性だが、その人曰く『地球の銃と同じものという思い込みを、まず捨ててください』とのこと。


銃の形をしているが、これは銃にあらず。

魔導銃の中には魔石がいくつも内蔵されており、その魔石に魔力を注入し、イメージする現象を起こすものだそうで、銃というより杖に近い発動体なのだとか。


そのため、イメージがしっかりしていればこんなこともできますよ、と教官が見せてくれた攻撃は、魔導銃から十ほどの光の軌道が延び、的に向かって連続で飛んでいき着弾した。


引き金を引いたのは一回だけだったが、出た数は十。

俺たちは、その光景に唖然としたものだ……。



「結構人、集まったよね……」

「みんな、ダンジョン攻略をやってみたいんでしょうね~」

「どんなダンジョンか、説明聞いていたのかな?」

「どうなんだろうね~」


日向さん、新城さん、竹原さん、市原さんが、この西門そばに集まった冒険者たちを見て呆れている。


「なあ康太、ホルダーは腰がカッコいいかな?」

「抜きやすい場所で、いいんじゃないか?」

「私は、お兄ちゃんと一緒の腰にしたよ~」

「おお、かっこいいな……俺も腰にするかな」


悠太と凜が、俺に『魔導銃』を納めたホルダーをどこに付けるかで、お互い見せあっている。

もう、お分かりと思うが、昨日、俺たちは「射撃術」のスキルを獲得した。


まあ、凜たちがいろんなスキルを使えるように教えてもらっている中、ずっと訓練場で魔導銃を習い、試し撃ち、勉強、試し撃ちを繰り返し、お昼を過ぎたころ全員が『射撃術』スキルを獲得していた。


後は、ギルド受付で武器部屋への扉を開けてもらい、自分の魔導銃を選び、再び試し撃ちをしたのだ。

おかげで、その日一日依頼を受けることはできなかった。


「西園寺君、今日からパーティーの仲間として、よろしくね?」

「よろしくお願いします、西園寺さん」


昨日の特訓を思い出していると、大篠さんと木下さんが近づいてきた。

俺たちは、この二人を加えた九人でパーティーを組んでのダンジョン攻略になる。




▽    ▽




あれから一時間後の午前六時三十分ごろ、今回同行するギルド職員のエマさんとキャロルさん、そしてワークさんを加えた六人がそろい、それぞれの馬車に別れて出発となった。


俺の乗る馬車には、俺たちのパーティーメンバーとエマさんにキャロルさんが乗り込む。


それぞれ挨拶をかわし、馬車は出発していく。


今回の緊急依頼の場所は、領都の南にある『天空ダンジョン』だ。

片道二日の距離となる。


……さて、ここで不思議に思った人も多いのではないだろうか?

片道二日ということは、俺たちは冬休みは終わり学校が始まっているのだ。

さらに、二泊三日の予定も大幅に過ぎてしまう。


これは大丈夫なのか?と、思うだろうが、このことをエマさんに相談すると、ご都合主義のような展開が用意されていた。


地球から異世界へ、異世界から地球への転送陣をチョチョイと弄れば、時間修正も可能なのだとか……。

それは、都合がよすぎる、何故、最初から教えてくれなかったのか?と聞けば、聞かれなかったからといわれる。


だが、この使い方にも落とし穴が存在し、転送した時間からさかのぼることはできないとのこと。


どういうことかといえば、今回俺たちは一月三日に異世界に来たが、異世界から地球に帰るときに時間調整を使うとなると、こちらに来た一月三日からさかのぼって帰ることはできない。


さらに、こちらで過ごした時間も変えることはできないのだ。

どういうことかといえば、こちらで一年過ごしたとすると、背格好や髪形など来た時と変わったところを、来た時と同じへ戻すことはできない、というわけだ。


ご都合主義な展開かと思ったが、ところどころ現実感が混ざっていた。


……とにかく、今回はこの『時間調整』を使って緊急依頼をすることにした。

エマさんのおススメでもあるしな……。




馬車からの景色を楽しみながら、七台の馬車は進んでいく。

が、暇である。

女性陣は、いろいろ話すことがあるのか、喋りまくりで楽しそうだ。


飲み物やお茶請けのお菓子まで持ち込んで、話し込んでいる。

残った俺と悠太は、外の景色を見ながら暇そうにしていた。


「暇だな、康太」

「こんな時、本でもあればと思うよ」

「……それにしても、新しいスキルを覚えれたんだよな?」


「ああ。悠太は、ギルドカードを使ってステータスを確認したんだろ?」

「確認した。確かに『射撃術Lv1』と記載されていた……」

「よかったじゃねぇか」


「でも、こんなに簡単に身につくと、な?」

「……おそらくだが、俺たちが使えるようになったのは、アニメの影響だろうな」

「アニメ?」


「ああ、日本のアニメではよく魔法や銃でドンパチする場面が出てくるだろ?その光景を想像して、使えるようになったんだろうな……」

「なるほど、そんな補正があったのか……」


日本のアニメ見ててよかった。

そんな補正があるかどうかは分からないが、そんな光景が思い出しやすくイメージができていたため、魔導銃が使えたのだと俺は考える。


「にしても、今回の参加者の中に地球の冒険者って結構いたな……」

「どうやら、地球のギルドの掲示板にも、今回の依頼書が貼りだされてあったらしい」

「それで、この参加者か?」


「とりあえず、ゲームと勘違いしている連中がいないことを祈るだけだ」

「そういえば、ネットでクソゲーとか騒いでいたやつがいたな……」

「……これは現実なんだがな……」


馬車の外の景色を見ながら、俺は悠太と会話する。

後ろで、女性人たちの笑い声が聞こえるなか……。




今日は、ここまで。

次回は、天空ダンジョンが……。







第61話を読んでくれてありがとう。

次回もよろしくお願いします。

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