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駅前に冒険者ギルドが出来ていた  作者: 光晴さん
緊急依頼のすゝめ

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第58話 利用しようとする者と頭を抱える者




駅前のビルにある冒険者ギルドのスキル部屋で、凜たち新人が自分のスキルを悩みながら決めている時、異世界の冒険者ギルドがある町『ナブト』に近づく馬車の列があった。


七台の馬車に、豪華な装飾の施された馬車が一台、そして、その馬車の列の周りを固める馬に乗った騎士たち。


遠目に見ても、その馬車に貴族が乗っていることは明らかだった。


豪華な装飾の馬車に乗る貴族、デイビッド・クリフォード子爵45歳。

それと、いっしょに乗っているのは執事のギュネイ、世話係のメイドのベティである。


そしてさらにもう一人、デイビッドの大切な娘であるエミリー・クリフォード14歳だ。


「お父様、異世界からの冒険者に、このような依頼を出して大丈夫でしょうか?」

「何、構わんだろう?

こんな時のために、私は貧乏くじを引いたのだからな……」


貧乏くじを引いたデイビッド・クリフォード子爵。この貴族こそ、ナブトを含めた領地を持つ貴族だ。子爵という爵位がありながら、新興貴族のため、古参の貴族連中から異世界と繋がる冒険者ギルドを押し付けられたのだ。


神の啓示から、異世界との交流をといわれ、私たちの小国に押し付けられ、その小国の中の新興貴族の私の領地に押し付けられた。


「……まったく、繋がった異世界が危険な世界だったらどうするつもりなのか。

神々の気まぐれ、お遊びに付き合わされることになるとは……」

「デイビッド様……」


「分かっているギュネイ。

これ以上の愚痴は不敬に当たることもな。

だが、何故、この広い大陸の中の私の領地に押し付けられたのか……」


執事であるギュネイには分かっている。


デイビッド子爵は不満なのだ。

新興貴族というだけで、三年前の貴族会議で私の領地に押し付けられたことに。

さらに、時空を超えて異世界と繋がるということは、空間の不安定化を招くのだ。


現にデイビッド子爵の領地、それも『ナブトの町』の周辺にはいくつものダンジョンが現れ始めている。


地球の者が領地経営をすれば、ダンジョンを利用したり地球の知識を利用したりして反映させるらしいのだが、残念ながらデイビッド子爵は、良くも悪くも普通の領主だった。


現状維持。


普通の領主であるデイビッド子爵には、それが手一杯なのだ。

次の領主になる、デイビッド様のご嫡男様も親に似たのか学園の成績は普通だ。可もなく不可もなく、である。


だからこそ、こうなったら異世界の冒険者たちを利用してはどうかとわたくしは、デイビッド子爵様に提案したのだ。

このままでは、領地に現れるダンジョンの対処で領軍の兵士が足りなくなるかもしれない。


いや、すでに足りなくなっている。


そのため、街道警備や盗賊への対処など、もうすでに手が足りず火の車になっているのだ。

冒険者に依頼を出すも、金がかかってしょうがない。

毎日毎日、領地経営に頭を悩ましているデイビッド子爵を見かねていた時、わたくしはある本を思い出しました。


デイビッド子爵様が昔、ご嫡男様に読み聞かせるために購入した本。


『勇者の剣』

異世界から召喚された勇者が、魔王討伐のために仲間と共に戦う冒険活劇だ。

最後は魔王を倒しハッピーエンドの、どこにでもある物語の本。


これを思い出した時、異世界から勇者ではないが、冒険者が召喚されている。もしかしたら、この世界の人とは違うのではないか?

それなら、この領地のために、領主であるデイビッド子爵のために、利用しようと考えて、進言したのだった。


そして、デイビッド様は決断なされた。

このままでは、現状維持もままならない。だから、わたくしの意見を聞き、異世界の冒険者を利用しようと……。



「何故かはわからないが、ここ数日、異世界からの冒険者が増えているそうだ。

ナブトの冒険者ギルドのギルドマスターが報告してきた。

……これは利用しない手はないだろう」


デイビッド子爵は、馬車の外を見ながら、異世界の冒険者に緊急の依頼を出さなければならないことに憤慨していた。

それと同時に、領主として、貴族としての力の無さに落胆もしていたのだ。


そんな、悲しそうな父の横顔を、悲しそうに見つめる娘エミリー。

私に何かできないかと、今も考え続けるのだった……。




▽    ▽




冒険者ギルドナブト支店の三階にあるギルドマスター室。

今まさに、秘書から領主来訪の知らせを受け取っていた……。


「ギルドマスター、領主のクリフォード子爵様がこのナブトの町に来るということですが……」

「ああ、この手紙にはそう書いてある。

最近のダンジョンについてと、異世界の冒険者について話があるそうだ」


ナブト支店の冒険者ギルドのギルドマスター、シャーロット・ルイス33歳独身。

まだまだ若く、見た目20代前半でも通用する女性ギルドマスターだ。


こっちと地球を行き来して、駅前に冒険者ギルドを作ったやり手である。

そう、日本の法律を熟知し、法にのっとって駅前のビルの一室に冒険者ギルドはオープンしているのだ。


やましいことは何もなく、日本への税金もしっかり払われていた。

さらに、現在はワークさんと付き合っており、いつか結婚をと考える乙女でもあった。


「領主様の依頼……。

もしかして、領都で今話題になっている『空中ダンジョン』のことですかね?」

「ん?何だその『空中ダンジョン』とは……」


冒険者ギルドマスター付きの秘書、ハーパー。何故かは知らないが、結構な事情通である。


「領都の南に空中から生えたダンジョンがあるらしいんです」

「はあ?!」

「何でも、塔型のダンジョンで一階から五階辺りまでが存在してないとか。

さらに、外から見ても消えていて、まるで空の雲から塔が生えているようだと……」


「……それは、なんとも奇妙な……」

「それだけじゃないらしいんですよ。

その空中ダンジョンから、不定期で魔物が落ちてくるらしいんですよ……」

「………」


ギルドマスター、シャーロットは、厄介ごとをもたらそうとしている領主に頭を抱えてしまった……。




今日は、ここまで。

次回は、みんなのスキル公開?







第58話を読んでくれてありがとう。

次回もよろしくお願いします。

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