第51話 日本へ帰還する
昼食後、俺たちは中央広場のベンチでまったりしていたが、この後どうするのか?と、みんなで話し合った結果、俺たちは冒険者ギルドへ行くことに。
すでに宿は引き払っているため、日本へ帰ろうということになったのだ。
それに実は、悠太からある魔法に関しての質問があったのだ。
「ちょっと疑問に思っていたんだけど、この世界って『生活魔法』って無いのか?」
「生活魔法って、小説なんかである、火種とか飲み水とか生活に便利な魔法か?」
「そうそう、そんな魔法」
生活魔法。
ファンタジー系の小説などでよく出てくる、生活するうえで便利な魔法をセットにしたものだ。
火は火種、水は飲み水、風は……何だろう、土は竈とかか。
習得できる場所が、教会でとか、冒険者ギルドでとか、学校でとか別れているらしい。
しかし、生活魔法ってあったかな?
俺は記憶になかったので、日向さんにスキル選びの時あったかどうか聞くと、日向さんをはじめ、女性陣全員が顔を横に振った。
「日向さんたちが、覚えて無いってことはこの世界には『生活魔法』は無いんだろうな……」
「そうか……生活魔法は、無いのか……」
そう言って落ち込む悠太を見て、冒険者ギルドで確認してみるということになった。
受付で、エマさんに聞いてみようというわけだ。
▽ ▽
冒険者ギルドに入ると、人はまばらにいるものの混んでいるということはなかった。
そのため、受付にも人が列を作って並んでいるということもない。
「悠太、エマさんに聞いて来いよ。
『生活魔法』があるのかないのか……」
「もしあるってなったら、どうすればいいんだ?」
「そんなもん、次に来た時に習えばいいだろ?
この世界じゃ便利な魔法になるんじゃないのか?」
「なるほど……それじゃあ、行ってくるわ……」
そう言って、エマさんの受付に行き、挨拶からの質問をしている。
……エマさんが、考え込んだ後、カウンターに何か探し始めたぞ?
……あ、見つけたようだ。
……見つけたものを、悠太に手渡した。
……悠太が、こっちに帰ってきたぞ。
「お帰り、で、どうだった?」
「エマさんによれば、『生活魔法』という魔法は無いって。
でも、俺が話した『生活魔法』に近い『野営魔法』なるものはあるそうだ。
何でも、野営するときに便利で新しく作ったものだって教えてくれたよ。
で、この紙をギルド地下の魔法を教えてくれる人に見せれば、教えてくれるって」
そう言って、悠太はエマさんにもらったメモ紙を見せてくれた。
それは、メモ紙というよりチケットの様なものだった。
「チケットのようだな……」
「次に来た時、この紙を見せて教えてもらおうぜ」
「だな」
俺たちは、こっちを見ていたエマさんに挨拶をして、日本へ帰るために転移部屋への扉を開けて入っていった。
▽ ▽
転移部屋で、装備をすべて外しアイテムボックスへ入れ、俺たちは地球の日本へ転移した。そこから、スキル部屋を通り、更衣室へ。
更衣室で自分の服に着替えると、日本の冒険者ギルドロビーへ出る。
受付のあるロビーに出ると、受付で登録している男女の若い人たちがいた。
最近は、登録者が多いらしい。
スキル部屋にも二人ほど女性がいたし、今の時間は人が多いんだろう。
ロビーで日向さんたちと合流して、俺たちは駅前冒険者ギルドを後にする。
▽ ▽
駅前の待ち合わせ場所にしているところで、俺たちは解散。
次の異世界へ行く日時は、来年の都合のいい時ということになった。
そう、年末から年始にかけて、みんな忙しいらしい。
悠太から、みんなで初詣に行って、その時決めようなんて誘われるが、どうやら竹原さんと新城さんの都合が悪いらしい。
新学期が始まるまでには、一度集まろうと約束するものの、いつとまでは決めれられなかった。
▽ ▽
冬休み8日目、日本の自分の部屋で目覚める。
何故か、久しぶりに自分のベッドで寝た気分だ。
今日を入れて、今年もあと三日。
自分なりの今年の目標は、達成できてない……。
まあ、俺はまだ十代だ。
来年こそは、目標達成できるように頑張っていこう……。
「おにいちゃ~ん、お母さんがいい加減部屋、掃除しろって~」
妹の声が下の階から聞こえる。
二階の俺の部屋に来ることを面倒くさがって、一階の最初の階段で叫ぶのだ。
「はいよ~」
俺は気の抜けた返事を返してやる。
しかし、妹はそれで満足したのか、母親に連絡。
俺は、しょうがない、と自分の部屋の掃除を始めた……。
さて、ここで少しうれしいお知らせをしておこう。
実は、異世界に行くとスキルなるものが使えるのは分かっているな?
そして、日本に戻ってくるとスキルが使えなくなるってことも。
それは、本当にそうなのか?
前に、俺は質問したことがあるんだよな。
俺たちが異世界で過ごして日本に帰ってきたら、何かしらの影響が出るのではないか?と。
答えは、影響があるとのことだった。
だが、急激に変わるわけではなく、力が依然と比べて上がったとか、足が速くなったとか、目がよくなったとか、ごくわずかな変化だそうだ。
そしてそこには、筋肉が付いたとか、痩せたとかも含まれるのだ。
……と言うことが、掲示板に書かれてあった。
人が増えたのは、ここを見た人がいたからか……。
今日は、ここまで。
次回は、日本での過ごし方……?
第51話を読んでくれてありがとう。
次回もよろしくお願いします。




