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駅前に冒険者ギルドが出来ていた  作者: 光晴さん
冒険者への依頼

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第50話 異世界のお昼時




図書館で、思いのほか集中して本を読んでいたため、昼飯の時間を悠太に教えられてしまうとは……。


とりあえず、日向さんたちと図書館入口で合流し、昼食をとることにした。


「さて~、異世界最後の昼食は何がいいかな?」

「……西園寺君のおススメはある?」


竹原さんが、背伸びしながら昼食を何にするか、みんなに聞き、自分で決められない日向さんは、この世界になれている俺に聞いてきた。


「そうだな、昼食なら屋台がおススメかな。

中央広場に並んだ屋台で、ハンバーガーを売っている屋台があるんだよ」

「へえ、康太はそこのハンバーガーを薦めたいと?」


「いやいや、そのハンバーガーを売ってる屋台の右隣を薦めたいんだよ」

「……その右隣の屋台は何を売っているの?」


期待をこめた目で、みんなが俺に注目する。

今日のお昼は、これを食べてみたいんだよね……。


「カツサンドだよ」

「何だよ、カツサンドか~」

「悠太、甘いぞ?ここのカツサンドは地球で、日本で食べられるカツサンドをはるかに超える味だ!」


俺の答えにガックリ来るみんなだが、俺の押しに興味を持ったようだ。

そう、この屋台で出しているカツサンドは、材料が違うのだ!


「……西園寺君、日本で食べられないカツサンドって、もしかして?」

「気づいたようですね?市原さん」


少し引いた市原さんだが、食べてみればわかる。

この日本では食べれないカツサンドが、どれほど美味しいのかを……。


「……康太、マジでそのカツサンドはおいしいのか?」

「ああ美味い!マジで美味いぞ」


俺が断言する様子を見て、みんなが興味を持ち、お昼はその屋台のカツサンドに決定した。まだ少し引いていた市原さんだが、食欲には勝てず、とりあえずみんなが一口食べてから食べようと考えるのだった……。


こうして、俺たちは中央広場に並ぶ屋台を目指した。


小雨も止み、少し肌寒い曇り空だが、揚げたての温かいカツサンドを食べれば気分も高揚するだろう。


さて、このおススメのカツサンドの材料、もうお気づきだろう。

そう、カツの肉は豚ではなくオークの肉なのだ。


ではなぜ、オークの肉が屋台で出せるほどあるのか……。

それは、キャロルさんが出張している『ポック村』にあるダンジョンが、オークが出てくる『オークダンジョン』であるため、オーク肉が手に入りやすいのだ。


そのため、地球の料理のレシピを参考に、豚の魔物であるオークの肉を使った料理が、豚肉の代わりに使われて試食されると、高評価を得たのだ。

そのため、いろんな豚肉料理をいろいろな所で出し、さらに評判となった。


今では、この町の名物料理の一つと言っていいだろう。



だが、何故、オーク肉を使った豚肉料理が美味いのか。

料理研究者によれば、魔物であるオークの肉には、魔素が含まれていて、そのため人々の味覚に何らかの影響を与えて味を最高のものにしているのではないか、と考えられた。


その考えのもと、カツサンドを出す屋台のおじさんは、一つの思い付きを実行した。

それがさらなる美味しさへと、カツサンドを上げてしまったのだ。


それが、揚げる油への魔素注入。


これを、オーク肉を揚げる前にすることによって、揚げたオークカツがさらにうまくなる。

これはもう、美味さの食物連鎖や~って、誰かが評価していたとか。




▽    ▽




中央広場にたどり着いた俺たちが見たのは、長い行列を作っていたカツサンドの屋台だった。

しかも、今はお昼ということもあり、兵士や衛兵さんたちの姿まで確認できた。


「……あれに並ぶのか?」

「並ぶ価値ある、カツサンドだぞ?」

「……並びますか~」


悠太があまりの行列に、腰が引けていたが竹原さんの一声で並ぶことが決定。

『ここが最後尾』という看板を持った人の前の列に並んだ。


列に並ぶと、竹原さんが俺に確認してくる。


「西園寺君、確認するが、本当に美味しいんだろうね?」

「ああ、ここのカツサンドはマジで美味い」

「……よし、期待するとしよう」



俺たちが列に並んでから、十分ほどで購入することができた。

まあ屋台だし、作り置きもあったしで、すぐに順番となり一つ銀貨一枚するカツサンドは手に入った。


少し高いかな?と思ったが、柔らかい食パンで、たれに付けたカツを挟み、半分にしたものが六切れ入って銀貨一枚。

日本円で千円。


俺は、このカツサンドの美味しさを知っているから、安いと感じている。


「さて、どこで食べるかな……」

「ドリンクはどうする?」

「水があるし、早く食おうぜ~。

このカツサンドの匂いで、どうにかなりそうだ……」


悠太は、カツサンドの入った箱から漂う、ソースの匂いで涎が出ていた。

……涎をたらす人って、初めて見たかも。


「それじゃあ、あそこのベンチで食べようか」

「賛成~」


全員で移動し、ベンチにどかりと座り、箱のふたを開けるとカツサンドにかかったソースの匂いが俺たちの胃袋を刺激する。

このソース、地球産のソースにこちらの材料を加えて作ったオリジナルの物らしい。


さっそく、カツサンドを一切れつまみ、口へと運ぶ。

そして………サクッ!


「うまっ!何これ!」

「ほんと!美味しいっ!」

「……これは日本では、味わえないわ…」


「肉がすごく柔らかいわね……」

「それでいて、衣がサクサクで……」

「その衣にしみ込んだ、肉汁とソースがパンにもしみ込んで……」


俺たちは夢中で食べた。

カロリーがどうとか、何のお肉とか関係なしに、めちゃくちゃ美味しいのだ。



異世界最終日の昼食は、思い出に残るものとなったのだった……。




今日は、ここまで。

次回は、地球へ帰還するかな?








第50話を読んでくれてありがとう。

次回もよろしくお願いします。

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