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駅前に冒険者ギルドが出来ていた  作者: 光晴さん
冒険者への依頼

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第49話 図書館の過ごし方




冒険者ギルドから西へ少し歩いたところにある図書館。

ここは、俺たちが泊まっていた宿からも近く、小雨の降る今日なんかはもってこいの場所だ。


二泊三日、最後の日に訪れるにしてはいい場所だろう。



図書館に皆で入り、受付を済ませるとさらに中へと進んでいく。

ドアを開ければ、そこは本のみの倉庫である。


広さは大型の家電量販店ほどあり、二階への大きな階段が二つ。

まるで、パーティーの時、屋敷の令嬢が目立つドレスを着てゆっくり降りてくるような階段だ。


さらに、日本の図書館と同じように、大きな棚に本がぎっしり詰まっている。

そして、棚の上部に『〇〇関連の本』と分かりやすいように案内が表記されていた。


俺たちは、異世界の図書館にしばし驚きと感動を味わうと、そのまま分かれて、目的の本棚へ向かった。


「俺たちの目的の本は、確かこっちだよな……」

「悠太、棚の上に『薬草関連の本』と案内があるぞ」

「お、これはありがたい……」


俺と悠太は、連れ立って歩いて目的の本棚へ向かう。


また、図書館の中には、俺たち以外の人たちの姿も目に入る。

その種族も様々だし、年齢もまたバラバラだ。


特に、この雨の日は、朝から人が来ているのだろう。




▽    ▽




「お、ここだ……」

「それで、康太たちはどんな本を読んでいたんだ?」

「ん?俺たちが読んだ本は………あった、この『薬草図鑑』だな」


厚さ二十センチもある分厚い本を、本棚から取り出すと近くの机へ移動する。

この図書館には、いろいろな場所に机と椅子が用意されている。


また、壁際には長い棚を机のようにして椅子が備え付けられている場所もあった。

まるで、バーカウンターのようだ。


それはともかく、ドスンとおよそ本が出す音ではない音をたてて、机の上に置くと、さっそく悠太は読み始める。

それを確認して、俺は俺の読む本を探しに棚へ移動した。



ウロウロと本を探して棚を移動していると、一人の女性がその場にうずくまっている。

どこか痛いのかな?と、そう思い声をかけることにした。


「あの、大丈夫ですか?」

「え?ああ、大丈夫です。ちょっと、指を切ったみたいで……」

「あの、見せてもらってもいいですか?」


「ええ、構いませんけど……」


そう言って女性は、しゃがんだまま、俺に切ったという指を見せてくれた。

その指は親指で、ちょうどページをめくるときに切ったのだろう。


俺は、『回復魔法』を唱えて女性の指を治した。

うん、回復魔法、覚えててよかった~。


「あ、ありがとうございます……」


女性は、そのまましゃがんだまま、俺にお礼を言ってくれた。

……何か変だな?と疑問に思うと、そこに1人の男性が現れた。


「空いている机を見つけたよ……えっと、あなたは?」

「ああ、通りすがりの治療魔法師です。

この女性が、しゃがみこんでいたので気になって……」


訝しげな目線で俺を見てきたので、とっさに治療魔法師と答え、これまでの経緯を話した。すると男性は、恐縮したようにお礼を言うと、女性が抱えていた分厚い本を女性から受け取り、二人で俺にお礼を言って去っていった。



あの女性は、分厚い本が重たくてしゃがみこんでいて、さらに、本を床に置きたくないからあの体制になったのか……。

多分しゃがんだことで、本の紙で指を切ったと……。


………なんだろう、この寂しさは。




気持ちを切り替えて、俺は本探しに戻った。

今回は、悠太の付き添いだが、今後役に立つ知識を得てもいいだろう。

となると、どんな知識を得ればいいのか……。


……そうだ、せっかく錬金術スキルがあるんだからそっち方面の知識を得るか。

そうと決まれば、俺は棚の上を見て錬金関連の本を探すことにした。


「錬金術………錬金術………」


そして、ようやく錬金関連の棚を発見、そこから今度は、これから役立つであろう錬金の本を探さなくてはならない。


とりあえず、今の俺の実力を考える。

錬金スキルは持っているものの、レベルは1。

作れるものは、初級のポーションがせいぜいだ。


ならば、初級のレベルで作れる薬をすべて覚えるのがいいだろう。

となるなら……。


「初級の各種ポーションが作れるように、その関連の本を読み漁るか……」


俺は、片っ端からポーション作りの本を読んでいく。


ポーションの作り方の基本は、どの種類でも同じだ。

まず、薬草を細かくすりつぶし薬効が溶け出しやすい状態にする。

次に、それを水、またはお湯に混ぜ溶かしていく。

そこへ、魔力や細かく砕いた魔石を加えると、それぞれの薬効の色で光り、各種ポーションの完成だ。


後は、薬効ごとの形の瓶へ移して劣化防止の封をして完成だ。

これを繰り返し、数をそろえてギルドや店に売れば、お金になるのだ。


この一連の作業は誰でもできるが、最後の魔力及び魔石の砕いたものを加える作業を錬金術師がやることで失敗しないポーションが完成する。

錬金術師以外がやれば、小さな爆発とともに黒い液体となって失敗作ができる。


「錬金スキルを手に入れるために、どれだけポーション作成の作業を手伝ったか……。冒険者ギルドで受けた依頼とはいえ、二度と経験したくないよな……」


報酬は良いんだけどな、作業がとにかく苦痛でしかないんだよね……。




▽    ▽




回復、体力、気力、魔力、毒消し、マヒ消し、魔物除け、などなどのポーション作りの本を読んでいると、悠太が呼びに来ていた。


「……探したぞ、康太。

そろそろお昼だ、みんなと合流して食いに行こうぜ~」

「もうそんな時間か……。思いのほか集中していたんだな……」


俺は、本を棚に戻すと悠太と一緒に、図書館入口を目指して歩いて行った……。




今日は、ここまで。

次回は、地球への帰還……かな?








第49話を読んでくれてありがとう。

次回もよろしくお願いします。

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