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駅前に冒険者ギルドが出来ていた  作者: 光晴さん
冒険者への依頼

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45/120

第45話 冒険者ギルドの相談室




冒険者ギルドの依頼掲示板で、気になる依頼書を偶然見つけてしまった。

以前、と言っても三日ほど前の話だ。


クリスマス前にこっちに来て、商業ギルドの倉庫整理の依頼を受けた時、偶然発見した生物の入った木箱が二つ。

その中身を確認するため、商業ギルドのギルドマスター立会いのもと木箱を開ける。


すると、中には女性の獣人と二人の子供の獣人が入っていた。

その獣人たちは商業ギルドが責任もって治療に当たり、背後関係とかを調べるとか言っていたけど、冒険者ギルドに依頼が来るなんてね。


……こうなると、その後の動きが気になってくるよね……。

特に、日向さんが気にしているんだよね……。




▽    ▽




三十分ほど依頼掲示板で時間をつぶすと、受付の列が無くなる。

今回は、エマさんのところに並ぶのが筋なんだけど、前の倉庫整理の依頼のことを聞くにはキャロルさんに聞いた方がいいだろうからな。


でも、今キャロルさんはギルドの所用で『ポック村』に出張中だ。

だから、もしかしたら何故か何でも知っている耳年馬なエマさんに一途な望みをかけて聞いてみることにした。


ということで、エマさんの受付へ並ぶ。


「おかえりコータ君。それに、コータ君のお友達も」

「ただいま、エマさん。

あのエマさん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、相談室、使えますか?」

「相談室?ここじゃあ、ダメなの?」


俺が困った顔でいると、しょうがないわね、と後ろを振り向きその場にいた職員に受付を代わってもらい、俺たちを冒険者ギルド二階の相談室へ案内してくれる。


「それじゃあ、私について来てね」




▽    ▽




冒険者ギルドの二階へ上がったすぐそばにある相談室。

ここは主に、冒険者とギルド職員との交渉のために使われる場所である。


特に討伐した魔物が珍しいものだったり、盗賊に報奨金が掛けられていたりと、いろいろなことで使われている。

そして今回、俺たちは倉庫で保護した獣人の親子がどうなったか、その背景がどうなったのか聞くために相談室を利用した。


「え~と、相談室の206……206……ここね」


ガチャっと鍵を開け、中へと入っていくエマさん。

それに続いて、俺たちも中へ入る。


相談室の中は、六畳の部屋に長机が真ん中に一つと、対面に椅子が五つずつ並んでいた。そして、部屋の隅には棚が一つとそのわきに小窓程度の大きさのダストシュートみたいな入り口があった。


何に使うか分からなかったが、とりあえず、窓側の椅子に座るように促される。


「じゃあ、そっちの窓側に座って。

で、話を聞く前に依頼の清算を済ませておきましょうか?」


そう言われて、俺たちは依頼の清算をするべくアイテムボックスに入っている薬草とゴブリンの魔石を机の上に出した。


「ふむふむ、薬草が………十束。

これは……ゴブリンの魔石ね?魔石が……八個、がんばったようね。

でも、討伐依頼は受けてないから半額での買取になるけど、いいの?」


「はい、面倒なんで一緒にお願いします」

「分かったわ、ちょっと待ってね?」


エマさんはそう言うと、棚の引き出しから紙を一枚取り出すとサラサラと何か記入している。

そして、棚の他の引き出しから紙袋を取り出し、薬草の束と魔石とさっき何か記入していた紙を入れて、ダストシュートのような小窓を手前に引いて開ける。


……あれ、引き出しみたいになっているのか。

その中に紙袋を入れると、引き出しを閉めて席に着いた。


「すぐに精算が終わるから、ちょっと待っていてね?

で、待ってる間に相談事を聞こうか?」


そう言うと、エマさんは前のめりに俺たちに向き合った。

俺たちは、この部屋に入ってからのエマさんの行動に驚きっぱなしだ。


俺自身も、この相談室を利用するのは初めてで驚いていた。


それでも、何とか話を切り出す。


「えっと、エマさんは覚えていないと思いますが、何日か前に、俺たち商業ギルドの倉庫整理の依頼を受けたんです」

「倉庫整理……ああ、もしかして獣人の親子が木箱から出てきたヤツ?」


「はい、それです。

で、その後、どんなことになっているのか気になってしまって……」


そう言うと、エマさんは何か思い当たることがあるのかニヤニヤしだした。


「もしかして、あの潜入の依頼書を見つけてしまったの?」


その質問に、俺たちが驚いていると、エマさんはため息を吐く。


「やっぱり、見つけてしまったのね……。

そうね、第一発見者のコータ君たちは、その後の動きを知ってもいいでしょうね」

「それじゃあ……」


「ええ、教えてあげるけど、絶対に口外しないこと!いいわね?」

「「「はい!」」」

「うん。コータ君たちが見つけた獣人たちは親子だったんだけど、どうもさらわれてあの木箱に押し込められたようなの。

発見した時、衰弱していたでしょ?

あれは、魔法とあの木箱に仕掛けられていた薬の影響なのよ」


クスリ?……あの木箱にそんな仕掛けが?


「で、商業ギルドで保護して、体力を回復させた後話を聞いたんだけど、王都で仕事を探すために旅をしていた時に、乗合馬車ごと襲われたみたいなのよ」

「襲われたみたいってはっきりしないんですか?」


「それが、乗合馬車に乗っていて、いつの間にか眠ってしまったらしくてね?

で、次に目が覚めたらあの木箱の中みたいで、助けを呼ぼうにも体が動かなくて、さらに再び眠気に襲われ気づいたら助けられていたって感じなのよね……」


「それじゃあ、襲った犯人の顔とかは……」

「まったく手掛かりなし。

そこで、他の手段で調べて木箱の送り先を調べて、おかしな点に気付いたってところね」


「それで、潜入捜査ですか……」


俺と悠太が事のあらましを聞き終わると、日向さんが質問してきた。


「あの、獣人の親子は無事なんですか?」

「ええ、獣人の親子は無事よ。

今は、冒険者ギルドの医療担当が責任もってあずかっているわ。

まだ少し体力が落ちているから、もう少し元気になったらこれからのことを相談するつもりよ」


「そうですか……」


日向さんは安心したようだ。

そんな日向さんを見ていた竹原さんや新庄さんは、笑顔になっている。

市原さんは、俺たちと一緒に考え込んでいるな……。


でも、確か倉庫整理の時は市原さん、いなかったような……。




今日は、ここまで。

次回は、報酬を受け取って……。







第45話を読んでくれてありがとう。

次回もよろしくお願いします。

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