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駅前に冒険者ギルドが出来ていた  作者: 光晴さん
冒険者への依頼

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第42話 油断大敵




「『ポルマリン草』、またまた発見!

……これで、三十個目だね」


新城さんが、草原に生えていた『ポルマリン草』を根っこから採取し、アイテムボックスへ収納する。

これで、一束十個の薬草が三束できることになる。


「しかし、一時間ほど、この草原をうろついているけど、魔物にも動物にも遭遇しないな……」


悠太が、周りを見渡しながら愚痴をこぼす。

日向さんと竹原さんも、同じように周りを見渡した。


確かに、周りを見渡しても魔物や動物の姿は確認できない。


「ねぇ西園寺君、ここの草原には魔物も動物もいないの?」


日向さんが、心配そうに聞いてきた。

どうやら、何か異変でも起きているのかと心配しているのだろうか?


「そんなことないよ。

……ほら、あっちに動物が二匹見えるよ…」


俺は、気配察知に引っかかった方向を指さし、日向さんに教える。

薬草採取を終え、全員が俺が指さす方を向く。


すると、草むらから茶色い毛をした動物が、ほんの少しだけ見える。


「……動物かな?」

「茶色い魔物?」

「よく見て、その茶色い奴を狙っている奴が近くにいるだろう?」


みんなは、よく目を凝らし草むらを凝視する。

すると、次の瞬間、茶色い動物が跳ねた!


「ウサギだ!」

「違う!猫だ!茶色の!」


茶色いウサギが前へ跳ねた瞬間、そのウサギの後ろから茶色い猫が襲い掛かった!

何度も跳ねるウサギ、ウサギに後ろから捕まり放そうとしない猫、どちらが成功するかの勝負である。


「逃げろ!ウサギ!」

「噛みつけ!猫!」

「ダメ!生きのびて~」


「この世は弱肉強食、首だ、首に噛みつけ!」

「後ろ足だ!跳ねて振りほどけ!」


俺以外の全員がウサギと猫のどちらかを応援している。

……君たち、ここがどこか忘れてないかな?


そう、応援の声に反応したのか、俺の後方から二体の何かが近づいてくる。


チラッと、後方を確認すると、緑の小人『ゴブリン』だ……。

近い方から、武器はこん棒とナイフだろうか。


ゆっくりゆっくり近づいてくる。


いつもは森から出ない『ゴブリン』が、この草原に出てきたのは、今も応援に夢中な悠太たちの大声のせいだろうか?


悠太たちは、今もウサギと猫の対決に夢中だ。

そして、ゴブリンもまた、ゆっくりゆっくり近づいてきている。


俺は、ちょっとずつちょっとずつ後ろに下がりゴブリンとの間合いを詰めていく。

その間も気配察知を使い、後方のゴブリン以外にいないか確認も怠らない。


幸いなことに、後方のゴブリン以外は引っかからなかった。


ゆっくりゆっくり近づくゴブリン。

ちょっとずつ、ちょっとずつ下がる俺。


そして、ゴブリンが俺の間合いに入った瞬間、ハルバードを思いっきりフルスイングする!

すると、俺に近いゴブリンがハルバードの柄の部分で横殴りされ、その後ろをついてきたゴブリンは、ハルバードの刃の部分で胸を上下に割る形で切断された!


『ギャゲェッ!!』

『ギャッ!!』


崩れ落ちる切られたゴブリンと、吹き飛んだゴブリンとに分かれた。

そして、この時初めて悠太たち全員が、一斉に俺の方を振り向いた。


俺は悠太たちにかまわず、すぐに吹き飛ばしたゴブリンに駆け寄り、ハルバードの刃を突き立て止めを刺した。


『ギェッ!』


ゴブリンの絶命を確かめ、ハルバードを抜き、ようやく一息つく。


「ふぅ……」


俺が悠太たちが静かなので、振り向くと俺の方を向いて止まっていた。

……どうやら、みんな無事のようだな。


「悠太、決着はどうなったんだ?!」

「……決着って、それよりも……」


悠太が、恐る恐る俺の足元に転がるゴブリンを指さす。


「……これは、ゴブリンって魔物だ」

「はあっ?!」

「魔物がいたの?!」

「……」


俺は、倒したゴブリンの足を持って、引きずるようにみんなのもとへ向かう。

ちょうどいいから、魔物の死体を見せておこう。




▽    ▽




上下に分かれたゴブリンと、頭を刺されて死んでいるゴブリンの死体を並べる。

口を手で押さえながらも、ジッと見つめる女性陣。

悠太は、俺と死体を交互に見ている。


「……なあ、これがあの有名な『ゴブリン』なのか?」

「ああ、異世界名物『ゴブリン』という魔物だ。

どうだ?死体なんてものを初めて見て……」


「……何故か不思議と、平気みたいなのよね……」

「うん、私も吐くとか、夢に出てきそうとか、無いんだよね……」

「………」


女性陣は、全員複雑な表情でゴブリンを見ている。

悠太も、死体にはそんなに嫌悪感はないようだ。


「それはスキルの『精神耐性』が仕事しているんだよ。

このスキルが無いと、地球出身者はまず吐く。

胃の中の物が全部出ても嘔吐が止まらないそうだ……」


「康太が言っていた、必ず取れってこういうことがあるからだったのか……」

「納得したわ……」


「討伐依頼を受けたら、こうして魔物を倒していかないといけない。

動物を狩ることも、同じだ。

冒険者ランクが上がれば、盗賊の討伐依頼だってあるんだから覚悟しないとな」


俺たちは、ゴブリン二匹の死体の前で、改めてここは異世界なんだと認識した。


ちなみに、争っていたウサギと猫は、俺とゴブリンの戦いが始まるとそれぞれ別々の方向に逃げていったそうだ。

……脅かしてしまったのかな?



「それじゃあ、ゴブリンから『魔石』を取り出すよ?」

「……なあ、ここで解体するのか?」


悠太が、恐る恐る聞いてくる。

……ここで解体しないで、どこで解体するというのか?


「すぐに終わるよ。

で、ゴブリンの討伐証明部位は『魔石』のみ。

他は全く使い物にならないから、後で森に捨ててくるよ」


「埋めたりしないの?

それに、ゴブリンって素材にならないんだ……」

「素材で利用する物は、武器や防具、魔道具に錬金や鍛冶に使う。

特に魔物から採取できる『魔石』は使い道が多い。

だから、魔物の討伐証明は、ほとんど『魔石』でおこなわれるんだよ……」


俺は、ゴブリンの死体に手をかざし魔法を唱える。


「【解体】」


すると、ゴブリンの死体が光ると、死体の首の付け根から『魔石』が出てきた。


「うぇ……」

「『魔石』がひとりでに出てきた……」

「……これって、解体魔法?」


「そう、これが解体魔法。

解体の知識がいるけど、呪文唱えれば使える素材が死体から切り離される」


使えるようにするまで、苦労したけど使えるようになれば便利な魔法だ。

解体の知識や、冒険者ギルドの解体場に出入りした苦労は、今ではいい思い出だ……。




今日は、ここまで。

次回は、薬草採取の続きかな。








第42話を読んでくれてありがとう。

次回もよろしくお願いします。

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