第34話 あの日の思い出 その最後
冒険者ギルドに駆け込んだ悠太を追いかけて、俺も冒険者ギルドに入る。
すると、悠太は受付で受付嬢の一人と話をしていた。
駆けこんで、すぐに受付嬢と話こむとは、と呆れていたが悠太と話している人物は、俺の知っているエルフではなかった。
「あれ?キャロルさんじゃなくて、シャーリーさん?」
受付に行くと、悠太と談笑していたシャーリーさんが声をかけてくれる。
「こんにちは、コータ君。
キャロルならギルドの所用で、今は出かけているわよ?」
「ギルドの所用って、もしかして『ポック村』ですか?」
「ええ、そうよ。
確か、コータ君もキャロルと一緒に行ったことがあるんだったわよね?」
「はい、前にポーションの運搬で……」
すると、俺とシャーリーさんの会話に悠太が割り込んでくる。
今まで自分と会話をしていたのに、といいたそうな表情だ。
「『ポック村』って、さっきの話に出てきた?」
「ああ、あの話には続きがあってな?」
▽ ▽
キャロルさんとエマさんと一緒に、馬車で村に着くと、入り口のところに冒険者の女性と村長が待っていた。
俺たちの乗った馬車は、村長さんたちの側で止まり、キャロルさんが声をかけた。
「村長、ご依頼のあったポーションを持ってきました。
どこに置けば、よろしいですか?」
「おお、これはご苦労様です。
ポーションは村の雑貨屋の前に置いてください。
ただ、少々困ったことが……」
俺たちが馬車から降りると、村長は困ったように隣の冒険者の女性を見る。
そして、それが合図かのように冒険者の女性が話し始めた。
女性は、まず一礼し、話しだす。
「冒険者のアンジェラといいます。
冒険者ギルドで受付をしているキャロルさんとエマさんですよね?
今回の依頼は先ほど終了しました。
オークの集落の破壊とオークの討伐は完了です。
ただ……厄介なものを発見しました……」
「厄介なもの?」
「おそらく、ダンジョンの入り口です。
今は、交代で見張りをしています。
時々、中からオークが出てくるので……」
▽ ▽
「ダンジョン?!オークの集落を討伐したら、ダンジョンが現れたってことか?」
「いや、ダンジョンからオークが出てきて、集落を作ったらしい。
で、その集落をつぶしたら、ダンジョンを発見した、ってことだな」
「……それのどこが厄介なんだ?」
「それはな……」
▽ ▽
「それは、確かに厄介ね……」
エマさんが、困った顔で話に入ってくる。
俺には、どこが厄介なことなのか分からないので、ここで質問してみた。
「あの、ダンジョンがあると、厄介なんですか?」
「そうよ、コータ君。
私は地球でのダンジョンの認識を知っているから注意するけど、この世界のダンジョンに生息する魔物は、簡単にダンジョンから出てくるの。
しかも、オークが出てきたというここのダンジョンは、オークという魔物を生み出すダンジョン、言わばオーク専用ダンジョンといえるのね?
専用といっても、オークしか生みださないって意味よ?
でも、オークという種類は結構厄介な強さを持っているの。
ここに来る途中の街道で、オークと戦ったでしょ?」
キャロルさんが、俺の質問に答えてくれる。
そういえば、オークの外皮が硬くて、なかなか致命傷をつけられなかったな……。
「はい、倒すのに苦労しました……」
「実は、あれがオークの種類の中で一番最弱なの。
……そう考えれば、ここのオークのダンジョンの厄介さが分かった?」
……なるほど、確かに厄介だ。
ダンジョンの中には、多種多様なオークがいて、外に出てくるオークが最弱のオークとなれば、ダンジョンの中は……。
「……はい、理解しました」
「これは、すぐにギルドに戻ってギルドマスターに相談しないと……」
「そうね、高レベルの冒険者を呼び寄せることも検討しないといけないわね……」
エマさんとキャロルさんは、今後のことを話し合う。
そこに、冒険者のアンジェラさんも加わり、ここにいる冒険者の処遇とかも話し合うようだ。
俺は、話し合いに参加しても、どうすればいいのか分からないので、とりあえず届け物の依頼を済ませようと村の雑貨屋を村長さんに聞き、歩いて行った。
▽ ▽
「……いろんなオークがたくさん出てくるダンジョンか……。
それは、とんでもないダンジョンだよな……」
「だろ?
そういえば、今はそのオークのダンジョンはどうなっているんですか?」
俺の質問に、シャーリーさんが答えてくれた。
「今は、ポック村に冒険者ギルドの支部ができて、王都からダンジョン攻略の冒険者がたくさん来ているわよ。
国からも、兵士や騎士が派遣されているからね……」
「へぇ~、ダンジョン攻略を専門にしている冒険者がいるんですか?」
「ええ、ダンジョンって希少なアイテムとかが出てくるからね。
それを専門に狙う冒険者がいるのよ……」
なるほど、希少なアイテムか~。
そのうち、俺たちもダンジョンに行ってみたいよな……。
「オーク……女騎士……エロフ……クッコロ………ムフフ……」
何やら悠太が、妄想に耽っていると思ったら、例の『クッコロ』さんのことか!
俺は頭痛がしてきた……。
今日は、ここまで。
次回こそ、日向さんたちの訓練を……。
第34話を読んでくれてありがとう。
次回もよろしくお願いします。




