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駅前に冒険者ギルドが出来ていた  作者: 光晴さん
冒険者への依頼

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第31話 あの日の思い出 その1




『冒険者ギルドの業務のお手伝い募集』

「誰にでもできる簡単なお仕事です。

三日限りの限定ですが、みんな優しく接してくれます。

やる気のある方、お待ちしております、か」


夏休みももうすぐ終わるって頃に、ギルド掲示板に現れた依頼書。

受付嬢と仲良くなるチャンスって、本当なら殺到するはずが三日前から貼られっぱなし。


どうも、冒険者の人たちみんな、避けているみたい……。

報酬も金貨1枚と高額にもかかわらずに、だ。


「何でこの依頼は、貼られたままなんだ?

報酬も環境も、申し分ないだろうに……」

「お前、新人か?」


依頼書を見て、不思議に思っていると、後ろから声をかけられた。

恰好からして、ベテランの冒険者の人だ。

無精ひげがどこか似合っているチョイワルおやじ、この人、この依頼のことを知っているようだ。


「あ、はい、冒険者になって一か月です」

「なら、この依頼の正体を知らなくても無理はない」

「正体、ですか?」


チョイワルおやじは、自分の無精ひげを弄りながら話しだす。


「ああ、この依頼の内容は教えることはできん。

俺も、受付嬢たちから睨まれたくないんでな……。

だが、依頼書のおかしな点だけは教えてやる」


「お、お願いします」

「まず、報酬だ。三日ギルドの仕事を手伝うだけで金貨1枚。

これはどう考えても、怪しいだろ?

次に、誰にでもできる簡単なお仕事なのに、みんな優しく接してくれる。

簡単な仕事で、何故優しく接してくれるとわざわざ書く必要があるのか。


そして最後に、ギルド業務のお手伝いってところだ」


ん?そういえば、冒険者ギルドの業務ってどんなことがあるんだ?

受付業務しか知らないな、俺……。


「……どうやら悩んでいるようだな。

俺としては、何故ギルド業務の手伝いを新人冒険者にお願いするか気づいてほしかったんだがな……。


……新人、気になるなら受けてみな。

これも冒険者としての経験だ、いい思い出になるさ」


俺の肩に手を置いて、依頼を薦めるとベテラン冒険者はギルドを去っていった。

薦める前に、何か言っていたようだけど聞き取れなかったが、まあ大丈夫だろう。


ベテラン冒険者の言うように、これも経験だ。

ということで、俺はこの依頼を受けるため、依頼書を掲示板から剥がし、受付へ持っていった。




▽    ▽




「なるほど、そんな依頼が出ていたのか……。

でも、受付嬢と話ができる羨ましい依頼じゃねぇか」

「だと思うだろ?

だが、実際はギルド業務って大変なんだよな……」


悠太は、羨ましがるが、俺の話を聞いてどう思うかな~




▽    ▽




依頼を受理されると、俺に腕章が渡され臨時のギルド職員として働くことになった。

しかも、受理されてすぐに働くことになったのだ。


「いや~、助かるよ。

この時期、本当に忙しくてね?人手不足でまいっていたんだよね~。

それじゃあ、コータ君、まずは受付の裏方をお願いするね?


あ、キャロルさん、この子臨時の子だからお願いするよ」


ギルド職員のケネスさんが、近くを通った受付嬢のキャロルさんを捕まえて紹介してくれた。

……キャロルさんと、長く話すのは初めてだな。

いつもは、受付で依頼の受理とかだけしか話さないし……。


「えっと、コータ君ね?

私は受付を担当しているエルフのキャロルよ。

コータ君の仕事は、私たちがまとめた書類整理をお願いするわね。


冒険者の皆さんが、依頼を受けて受付でそれを受理。

どの冒険者がどんな依頼を受けたかを1つにして渡すから、それをこの大きめの封筒に入れてこの棚へ。まずはそれだけだから、大丈夫よね?」


「はい、お任せください」

「うん、いい返事ね。ではお願いね?」

「はい」




▽    ▽




「康太、早くもキャロルさんと話ができて羨ましいな……」

「……悠太、話聞いてたか?

この時期忙しくて依頼を出したって言っていたんだぞ?

この時期は、収穫祭に向けた前準備のための討伐依頼が多いんだよ」


「前準備?」

「収穫祭に出す獲物を狩る魔物の討伐だよ。

で、その依頼に新人のパーティーからベテランまで、冒険者が殺到する。

他にもいろんな仕事が収穫祭に向けて起きるから、依頼が増えてギルド業務が激化するんだそうだ。


前に、受付雑務のメイソンさんを紹介しただろ?

雑務担当がフルで手伝っても追いつかないんだから、どれだけ忙しいかが分かるだろ?」


悠太は、受付の端で作業をしていたメイソンさんを思い出し、そんな雑務担当がいても忙しい様子を想像して眉を寄せた。

どうやら、受付で汗を流しながら働いている様子が思い浮かんだようだ。


そうなんだよね、依頼書を貼っても貼っても次々にはがされるなんて、初めての経験だったよ。

どんだけ、この町に冒険者が集まっているんだって愚痴ったくらいだ。


それでも、新人の臨時職員らしく何とかこなして一日を終えることができた。




▽    ▽




「「「お疲れさまでした~」」」


キャロルさんたちが、着替えてギルドから出ていく。

受付には、別の受付嬢が入り再び業務をこなしていく。

もちろん、俺は交代なしで受付業務のお手伝いを続けている。


それだけ、本当に忙しいのだ。

時刻は午後10時の夜中にもかかわらず、冒険者は依頼書をはがして受付に持って来る。

こんな時間にと思うが、明日の依頼確保か今から出発する冒険者もいるのだ。


俺の受付の手伝い業務は、この後午前0時まで続いた。



「コータ君、一日目、お疲れさま。

二階の仮眠室を用意したから、そこを使ってね?

あと、二日目は受付じゃなくて、別の仕事をしてもらうからしっかり体を休めるんだよ?

じゃあ、おやすみ~」


……宿に帰らせてもらえないのかよ……。




▽    ▽




「……なぁ、受付嬢との親密な態度の謎を教えてもらいたかっただけなんだけど?」

「……ここからだ」




今日は、ここまで。

次回こそは、親密な謎を……。







第31話を読んでくれてありがとう。

次回もよろしくお願いします。

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