第3話 駅前に待ち合わせ
「あのさ西園寺君、ちょっと質問があるんだけど?」
悠太が、夢中になって俺に『奴隷』のことで話していると、日向さんが白い目で俺に質問してきた。
何か、新庄さんと一緒に顔が怖いんですけど?
「西園寺君も『奴隷』を、買おうとしたの?」
「うんうん」
日向さんの質問に、新庄さんが二回も頷いている。
「ん~何というか、いくらあこがれの冒険者に魔法が使える異世界でも、ソロは寂しかったんだよね……」
「……それで『奴隷』なんだ……」
俺の答えに日向さんと新城さんの視線が、暖かいものに……。
くっ、涙が出そうだ……。
「向こうで仲間を探そうと思っても、冒険者になりたての新人と組みたい人はいないんだよ……。
だから、自ずとソロになるんだよね……」
「康太、『奴隷』ってどこで買うんだ?」
「奴隷商だけど、紹介が無いと売ってくれないぞ?」
「紹介?誰かの紹介が必要なのか?」
「ああ、俺も『奴隷』購入を考えた時、冒険者ギルドで聞いたからな。
冒険者ギルドでも紹介状はくれるらしいけど、ランクが足りないって断られたんだよ」
「ランク?冒険者ランクか?」
「そ。冒険者には、ランクがあって、新人のFランク。
そこから、E・D・C・B・A・Sと続くそうだ。
で、『奴隷』購入の紹介状がもらえるのが、Dランクからだそうだ」
「Dランク……何か意味があるのか?」
「何でも、『奴隷』を購入した後の維持費を担保するため、冒険者ベテランのDランクとしているって」
「……これは、がんばらないといけないな……。
ちなみに、ネコミミはいるのか?」
悠太……、日向さんと新城さんがすごい目で睨んでいるぞ?
悠太、気づいて~。
「ネコミミって、獣人のことか?
いるぞ、猫獣人。もちろん男も女も。
獣人は、人気があるらしいぞ、特に冒険者に」
「冒険者に?西園寺君」
「ああ、獣人は気配察知の能力が高いらしい。身体能力も高いし。
だから、冒険者に人気があるんだ」
「へぇ~」
「獣人か……」
日向は感心して、新庄は何か想像しているな……。
そこへ悠太の後ろに、うちの担任の斎藤先生が立っていた。
「おおっ」
「話に夢中のようだが、みんな帰ったぞ?
お前たち、冬休み返上するか?」
「す、すぐ帰りますー」
「帰る帰る~」
「先生、さようならー、よいお年をー」
俺も鞄をつかんで、帰ることに。
そして、教室を出たところで、日向さんと新城さんに声をかけた。
明日の待ち合わせ場所を、決めていなかったからな。
「日向さん、〇〇駅の銅像の前に集合でいいかな?」
「分かったわ、リコもいいよね?」
「オッケ~、何時?」
「朝10時になるけど?」
「早すぎない?」
「これぐらいの時間から行かないと、泊まりになるぞ?」
「……分かったわ、その時間に駅前の銅像ね」
「ああ、待ってる」
「じゃ、また明日~」
よし、これで二人仲間にできた。
悠太も入れて、四人でパーティーが組めるな!
……何か悠太が、羨ましそうに俺を睨んでいるんだが……。
「どうしたんだ?」
「何でもねぇよ、明日10時に駅前だな」
「おお、待ってるぞ」
こうして、ようやくみんなと待ち合わせの約束ができた。
夏休みの一か月だけ、俺の方が先輩だけど冒険者ランクは登録した時のままだから、一緒に成長できるだろう。
▽ ▽
次の日の冬休み一日目。
朝10時に待ち合わせをしている、〇〇駅前の銅像の前。
他の学校の冬休みもこの時期なので、駅前はこの時間から人がいっぱいだった。
この銅像、何かのアニメのキャラクターなんだよね。
確か、この原作漫画の漫画家が暮らしているからとかで、最近建てられたんだよな。
しかし、駅前に合わねぇ~な~。
銅像前で待つこと3分少々で、日向さんと新城さんが現れた。
二人は俺のことを見つけると、小走りで近づいてくる。
「待った?」
「いや、さっき来たところ。
それに、待ち合わせ時間までまだ余裕があるしね」
日向さんは自分の腕時計を、新庄さんは駅の時計を確認する。
すると、まだ10時まで10分早かった。
2人とも、ホッとした表情になる。
「西園寺君だけ?遠藤君は?」
「まだ来てない。悠太はいつも待ち合わせ時間ギリギリで来るからな……」
「あ、来た」
新城さんの指さす方向に、悠太が歩いて近づく。
「よ、お待たせ~」
「今回は時間通りだな、今10時だ」
そう言って俺は、駅の時計を指さして悠太を褒めた。
何故か悠太は、笑顔だ。嬉しかったのか、楽しみなのか……。
「さあ、登録に行こうぜ~」
楽しみの方だったな。
悠太にせっつかれて、俺たち四人は、〇〇ビルを目指す。
そのビルの二階が目的地だ。
▽ ▽
歩くこと五分。
〇〇駅から少し歩いて銀行の隣にあるビル、ここに冒険者ギルドが入っている。
ちょっと入りづらい外観ではあるが、気にせず俺を先頭に中へ入っていく。
そして、階段を上がって二階へ。
そこから廊下を歩いて最初の扉の場所、ここが冒険者ギルドだ。
「ここが、冒険者ギルドだよ」
俺の目の前の扉には、『冒険者ギルド〇〇駅支部』の看板が出ている。
「……小さい看板ね……」
「何か、怪しい所だね……」
「康太、この先に天使の受付嬢がいるのか?」
「悠太、天使じゃなくて美人の受付嬢な?」
「ああ、ああ、わかっているって……」
悠太がかなり興奮しているな、大丈夫か?
そして、そんな悠太にドン引きの日向さんと新城さん。
とにかく、中に入ろうと俺が扉を開けた。
と、今日はここまで。
次回は、いよいよ冒険者ギルドの中のお話。
第3話を読んでくれてありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。