第13話 冒険者ギルドの受付嬢
俺たちは、受付カウンターへ向かい、この町の地図を手に入れることにした。
さっそく、受付へ向かうが、受付カウンターにいる受付嬢は五人いる。
まず手前から、エルフのキャロルさん。
このギルドの受付人気ナンバー1で、彼女のファンも狙っている男も多い。
それに、キャロルさんは、ナンパな男が嫌いらしく、誘ってくる男ほど扱いが悪くなる。
ただ、そんな態度も男どもを引き付ける魅力になっているのが、悩みの種だとか。
さらに、最近は地球からの男も加わり、男性嫌いになりかけているようだ。
次が、猫人族のエマさん。
このギルドで古参の受付嬢。今年で受付嬢歴20年のベテランだ。
だが、見た目は20代後半。スタイルも良く美人で、しかもネコミミ。
特に、地球からくる冒険者の男女ともに人気がある。
面倒見がいいので、冒険者からも職員から慕われている女性だ。
次が、人族のメリッサさん。
実は彼女、受付嬢になってから日が浅い新人さんだ。
だから、エマさんの隣で新人研修とばかりに受付をしている。
受付業務に少し戸惑ったり、焦って困ったりする顔や仕草が可愛いと、秘かにファンを増やしつつある女性なのだ。
年齢はまだ10代後半で、独身。
次は、人族のカレンさん。
旦那さんは同じギルド職員で、彼女もベテラン受付嬢に入る女性だ。
彼女は、主に女性冒険者を相手をすることが多いため、女性冒険者専用になっている。
でもたまに、男性冒険者も相手するが、何故か女性冒険者が多い。
噂では、女性冒険者の悩み相談もしているそうで、人気があるのだとか。
ちなみに、受付嬢をするくらいだから美人で年齢も若い20代前半だ。
そして最後は……最後は……受付譲じゃないな。
最後は、受付雑務専用の人族、メイソンさん。
彼は、受付業務が滞った場合の助っ人ギルド職員だ。
主に、冒険者の相手をするわけではなく、どの依頼を誰が受けたかというファイルを作ったり、依頼に不備や訂正があった場合の修正、その他にも貼りだす依頼書作りなど多岐にわたっている。
それだけ受付業務は多忙なのだが、美人の受付嬢を置いているため、裏方の仕事が多くなってしまっている現状、彼の様な雑務専用の職員は重宝される。
もちろん、雑務専用の職員は、他の職員よりも好待遇だが、裏方になりたい職員はあまりいないのが現状だ。
「……大変なんですね~、ギルド職員の仕事って」
「日向さん、メイソンさんだけじゃないからね?
仕事は、一応分担しているみたいだよ」
日向さんが、俺の説明に頷いている時に、悠太と新城さんはどの受付に行こうか迷っていた。
しかも、俺がメイソンさんのことを話している間中、他の四人の受付嬢を見ながら迷っているのだ。
「……まあいいか。
それで、悠太も新城さんも、どこの受付へ行くか決まったか?」
「おう、俺はもちろんエマさんだ。
あの茶色い髪に、ピコピコと動くネコミミ。萌えるだろ!
スタイルもいいし、尻尾もフリフリ動いて……ハァハァ……」
ヤバイ、悠太がものすごくヤバイ。
興奮しすぎだ悠太、自制しろ!
「私は、メリッサさんにお願いしたいな。
彼女、どう見ても私たちと同じ年に見えるから、友達になれそうだし。
それに、同じ新人どうし、仲良くなりたいって思ったから」
そうだな、メリッサさんにとって、同年代の冒険者って少ないからな……。
友達になるには、新城さんの言う通りいいきっかけかもな。
「う~ん、私は、エマさんかな。
遠藤君の言うことは、全く分からないけど、ベテランってところに安心感があるからね。私たちのような新人には、一番的確じゃないかな?」
さすが日向さん、ちゃんと俺たちが新人の冒険者だということを分かったうえで、どの受付嬢がアドバイスしてくれるか、考えているね。
「それじゃあ、今日はエマさんに声をかけることにしようか」
「賛成!」「いいわよ」「次は、メリッサさんだよ?」
というわけで、俺たちは、エマさんの受付へ向かうことに。
▽ ▽
「あら、コウタ君、久しぶりね?」
「お久しぶりです、キャロルさん。俺のこと、覚えていたんですね?」
「フフ、コウタ君は、地球の冒険者でしょ?
地球からの冒険者は今、少ないからね。
それに、冒険者への依頼を毎日楽しそうにしていたら、すぐに覚えてしまうわよ」
嬉しいな~、一番人気の受付嬢に覚えてもらえるなんてな~。
……痛い、痛い。
日向さん?新城さん?何故俺の腕をつねるんですか?
そして、悠太よ、何故俺を睨む。
「それで、今日は私の所じゃないの?」
「今日は、パーティーメンバーの意向で、メリッサさんの受付へ行こうかと思いまして」
「あら、寂しいわね~」
キャロルさんが、困った顔で俺に何かを訴える目で見てくる。
その時、隣の受付カウンターから、メリッサさんが声をかけてきた。
「キャロル?今日はその子たちは、私の担当よ。
それに、その子たちは、受付嬢全員を回るみたいなことを言っていたから、キャロルの所にも行くことになるでしょ?」
「じゃあ、その時はおまけ、してあげるわね?」
そう言うと、キャロルさんはウィンクをしてくれる。
それを受けた、悠太は硬直、日向さんと新城さんは顔を赤くした。
「は、はい、楽しみにしています……」
俺は何とか、答えることができたが、やはり、エルフのウィンクは破壊力あるな。
男子高校生に、このウィンクは理性の処理が追いつかないぞ?
とにかく、俺たちは、メリッサさんの受付カウンターに、何とかたどりつくことができた。
しかし、夏休みの一か月だけだったとはいえ、よく覚えているものだ。
今日はここまで。
次回こそ、ナブトの町の紹介へ……。
第13話を読んでくれてありがとうございます。
なかなか話が進みませんが、次回もよろしくお願いします。




