第120話 冒険者ギルドでの買取
鉱石ダンジョンを出ると、外はすっかり夜となっていた。
ダンジョンの中では、時間の感覚が狂うとよく言われるがこういうことなんだと、俺たちは夜となった周りを見て思うのだった。
「すっかり、日が暮れて夜になったな……」
「町にはまだ、入れるのか?」
大輔の疑問もそのままに、俺たちは鉱石ダンジョンかとコブトの町を繋ぐ街道を歩いて行く。
いつもなら10分とかからない道を、辺りの暗さの恐怖から自然と足が速くなりものの5分でコブトの町に到着してしまった。
……異世界でも、暗闇って恐怖だよな。
「お、コブトの町の門は開いているみたいだ」
「門兵がいるみたいだから、こんな夜でも出入りがあるんだな……」
俺たち全員が安堵し、門の門兵に挨拶してコブトの町へと入っていった。
後は、冒険者ギルドを目指すだけだ。
まだ明かりのついている家々を確認しながら、俺たちは冒険者ギルドを目指して歩いて行く。そこに、会話はなかった。
何故か、みんな黙ったまま歩いていた……。
そして、5分ほどで冒険者ギルドの前に到着すると、アンジェラさんたちが俺たちに声をかけてきた。
「みなさん、ここまでありがとうございました。
依頼を達成することができたのは、皆さんのおかげです。
本当に、ありがとうございました」
アンジェラさんが頭を下げると同時に、ルーナさんやエヴァさん、サラさんも同じように頭をあげた。
「いいんですよ、俺たちもあの階層のゴーレムと戦えることが分かりましたから」
「だな。それに、あの階層で戦えることが分かって、俺たちの目的も達成できそうだしな……」
「……まあ、気にするな」
それぞれ言葉をかけたり、笑顔で答えたりしてアンジェラさんたちと、冒険者ギルドの前で別れた。
勿論、俺たちもギルドに用はあったのだが、今は体を休めたかったのでギルドの前に建っている宿へ向かった……。
ダンジョンで手に入れたものの換金は、明日にしよう……。
▽ ▽
次の日、俺と悠太だけで訪れた冒険者ギルド。
大輔たちは、再びダンジョンに潜るために必要なものの買い出しを行っている。
早朝のギルドが混みあう時間を外してきたため、そう人はいなかったがそれでもある程度の人はいるようだ。
依頼掲示板の前にいる冒険者や依頼書を貼り直すギルド職員。
差材の査定をしてもらっているため、その間、ギルド内で待っている冒険者などなど。
「朝九時といえど、結構人がいるんだな……」
「冒険者ギルドの朝八時ごろはもっといるらしいぞ?」
「そうなのか?」
「ああ、ここはダンジョンがすぐ近くにあるからな。
ダンジョンがらみの依頼も多い。
そのため、いい依頼を受けようと思ったらその時間が一番混むらしい」
「うへぇ~」
悠太の嘆きを聞き流し、俺たちは素材の買取受付へやってきた。
買取受付で、書類整理をしている受付嬢に話しかける。
「すみません、ダンジョンで出たものを買い取ってほしいんですが」
「はい、当ギルドにお売り下さりありがとうございます。
買い取るものはどんなものでしょうか?」
「えっと、宝箱から出た鉱石と岩石ゴーレムから出た魔石と鉱石です」
すると、受付嬢は、足元から大きな籠を取り出し俺たちの目の前に置く。
それも、大きいものを二つだ。
「では、この右の籠に鉱石を、左の籠に魔石を入れてください」
俺はその指示通りに、右の籠に宝箱から出た鉱石や岩石ゴーレムから出た鉱石を混ぜて入れ、左の籠に岩石ゴーレムの魔石を入れる。
受付嬢も、鉱石の多さよりも魔石の大きさに少し驚いていた。
「これは、大きな魔石ですね……。
どこでこんな大きさのものを?」
「第十一階層に出た、岩石ゴーレムからです。
大きさは、五メートルぐらいあったかな……」
「大きい部類に入る岩石ゴーレムですね。
それなら、この魔石の大きさもありえますね……」
「では、査定をお願いします」
「分かりました、少々お時間をいただきますので、ギルド内でお待ちください。
査定が終わりましたら、こちらの番号をお呼びしますので」
そう言って俺に番号札を渡してくる。
ふむ、3番の番号札か……。
俺と悠太は、買取受付を離れると依頼掲示板を眺めて時間をつぶすことにした。
「そういえば康太、何で受付のお姉さん、お礼を言ったんだ?」
「素材の買取をしているところは、冒険者ギルドだけじゃないからだよ。
コブトの町にあるかは知らないが、素材買取を専門にしている商会とかがあるんだ。そこだとギルドで買い取ってもらうより高額な場合があるからな」
「へぇ~、そんな商会があるのか……。
それなら、俺たちもそっちに持っていった方がよかったんじゃないか?」
「そういうわけにもいかないんだよ。
そういう商会の買取は、基本交渉がモノをいうんだ。
優れた交渉術を持たない俺たちがそんな商会に行ってみろ、あっという間に最低価格で買い取り、なんてことになりかねないぞ?」
「……うへぇ~」
「そんな商会を利用するのは、もっと交渉の長けた奴を雇っている貴族とか最低価格でも気にしない高ランク冒険者ぐらいだな」
「俺たちには、縁遠い商会なんだな……」
悠太は、少し困ったような顔をして依頼掲示板を眺め始める。
まあ、そんな商会ばかりではないけどな。
商業ギルドなどの他のギルドなら、必要なものだけの買取はしてくれるけど、冒険者ギルドのように『まとめて』は無理だからな。
冒険者ギルドを利用するのは、そんな事情もあるわけだ。
今日は、ここまで。
次回は、査定金額の発表。
第120話を読んでくれてありがとう。
次回は、アイデアにつまり更新が遅れております。
しばらくお待ちください。