第117話 偶然の出会い
鉱石ダンジョンの第十一階層を、奥へ奥へと進んでいく。
他の冒険者パーティーの邪魔をしないように、進んできたわけだが、ここまで奥へ進むことになるとは思わなかった。
いろんなパーティーが岩石ゴーレムと戦っていたが、どのパーティーも安全に戦えているようだった。
このまま進めば、十二階層へ移動しなければならないかもしれない。
そんなことを考えながら進んでいると、通路の角から女性が飛び出してきた。
いや、女性というより女の子か?
「た、助けてください!」
俺たちは顔を見合わせ、通路の角を走って曲がる。
すると、そこには二体の岩石ゴーレムと対峙している女性冒険者二人がいた。
どちらもボロボロで、岩石ゴーレムと睨みあいながらゆっくりと後ずさりしている。
「康太、ここはヘルプだろ!」
「だな!悠太、神田さん、内村さんは遠距離から!
大輔と佐々木は俺と一緒に、ゴーレムとあの人たちの間にすべり込むぞ!」
「「「了解!」」」
この時ばかりは、全員の心が一つになったような気がした。
そして、俺はゴーレムと対峙している女性二人に声をかける。
「助けに入ります!よろしいですか?!」
「!お願い!」
「頼みます!」
その声を聞いて、俺たちは走り出した。
さらに、俺と大輔、佐々木が走り出したと同時に悠太たちの遠距離攻撃が始まる。悠太たちの放った矢が、岩石ゴーレムの顔面に突き刺さる。
『グオオオォォ!』
『グウウウゥ!』
二体のゴーレムが両手で顔を押さえて、動きが止まる。
どうやら、急所に近い場所に矢が刺さったようだ。
その間に、大輔が剣を構えて女性二人の前へ飛び出し、さらに俺と佐々木が、さらに飛び出してゴーレムの膝を横から衝撃を与える。
佐々木が攻撃した、ゴーレムの右膝はその衝撃でバランスを崩し、ゴーレムは大きな音をたてて倒れた。
俺が攻撃したゴーレムは、左膝をぶち壊し、バランスを崩してこちらも倒れてしまう。
「今だ!両ゴーレムの頭を狙え!」
俺の叫びに全員が一斉に、倒れて身動きがとれない岩石ゴーレムへ襲い掛かる。
大輔の剣がゴーレムの頭を、正面から突き刺し、悠太は魔導銃で攻撃し、神田さんと内村さんは、弓の至近距離攻撃、佐々木は鉄棒でゴーレムの頭を横から殴り、俺はハルバートで思いっきり薪割の要領で叩きつける。
それを見ていた、女性二人も持っていた剣でゴーレムの顔に突き立てた。
すると、その攻撃が本当のトドメとなり岩石ゴーレム二体は、砂になって崩れていく……。
後に残るは、それぞれのゴーレムの魔石と、体に隠されていた鉱石の原石が六個その場に残るだけだった。
「……た、助かった」
「はぁ~」
女性二人は、その場にしゃがみこんで生存を噛みしめている。
そこへ、角を曲がって飛び出してきた女の子も加わり、三人で喜んでいた。
俺たちは、ゴーレムの崩れた砂の中から魔石と鉱石を回収すると、喜んでいる女性たちに近づいた。
「だいじょうぶだったようですね?」
俺が声をかけると、三人は俺たちに気付きお礼を言ってきた。
「ありがとうございました」
「本当に、助かりました。ありがとうね」
「ほんと、助かりましたよ。ありがとう」
笑顔でお礼を言われると、どこか気恥ずかしいものがある。
少し、彼女たちと話してみると、どうやら四人でパーティーを組んでこのダンジョンへ来たそうだ。
鉱石採掘の依頼を受けここに来たものの、岩石ゴーレムの強さに満足に戦えず、引き返すところだったのだが、戦っていた岩石ゴーレムから逃げ出すことができずここまで連れてきてしまった。
しかも、二体目のおまけつきで……。
そんな話を聞いている時、俺たちが来た側の通路から声が聞こえ始める。
そして、角を曲がってきたのは一人の女の子とドワーフやケット・シーがいた冒険者のパーティー六人だ……。
▽ ▽
「いや、助かったんならいいんだ。気いつけてな」
「じゃあね~」
冒険者たちは、手を振ってダンジョンを戻っていった。
それを頭を下げて見送る、呼んできた女の子。
あの子が最後のパーティーの仲間か……。
「……あれ?君は確か、この町に向かう街道であった……」
「……ああ、馬に乗ってた冒険者さん」
偶然とは本当にあるもので、この女の子はこの町に来る途中で会った女の子だ。
名前を聞けなくて、今まで忘れていたけど思い出した。
「あの時はすみませんでした、いきなり声をかけてきて警戒してしまって……」
「いやいや、一人で街道を歩いていたから心配で声をかけただけだから……」
そして、お互いに頭を下げながら言い訳をする。
そんな俺たちに、女の子の仲間である三人が近づき改めてお礼を言われる。
「今回は、本当に助けてくれてありがとうございました。
私たちは、これから引き返します」
「引き返すって、依頼の鉱石採掘はいいの?」
そこへ悠太が、質問する。
依頼失敗は、違約金を払うことがあるんだ。ここで帰ったら、依頼失敗で違約金、なんてことになるかもしれないからと。
「心配してくれてありがとう。でも、自分たちの実力に合わない依頼を受けてしまったから……」
「何とかギルドと話し合ってみます」
ここで俺と悠太は、大輔たちを見る。
大輔たち四人は、視線をそらし口をつむぐ。
依頼失敗、大輔たちも経験がある事だ。もっとも、高木さんと一条さんの犠牲でその責務から免れたみたいだが……。
俺たちと一緒なら、岩石ゴーレムとも戦える。
依頼失敗ということはないと思われる。
………どうする?
俺と悠太は、大輔たちに決断をゆだねた……。
今日は、ここまで。
次回は、決断。
第117話を読んでくれてありがとう。
次回もよろしくお願いします。