第116話 第十一階層へ
次に宝箱を開けたのは、神田さんだ。
中身は、ポーションが七個。
再び、体力回復ポーションだった。
こうなると、このポーションがハズレのような気になるが、ダンジョン産のポーションは、市場のポーションと違って高額で取引される。
何でも、効果が市場のものより高品質なのだとか。
次に、宝箱を開けるのは内村さんだ。
恐る恐る宝箱を開けると、中に入っていたのは鉱石が十個だった。
「少ないけど、これ、鉱石だよね……」
「……何の鉱石かしら?」
神田さんの疑問で、俺たちは鑑定すると『ルビー原石』と出た。
今度は、間違いなく俺たちも知っている宝石のルビーの原石のようだ。
「ルビーの原石みたいだな」
「原石が十個か。
……もしかして、これ全部同じ価値のものが入っているのかな?」
内村さんの指摘に、俺たちは考えてしまった。
同じ価値。
もし、それが当たっているとしたら悠太の『サファイヤ原石』は『ルビー原石』十個分の価値しかないってことだ……。
いや、十個分もあるってことかも?
とにかく、そう考えればポーションの価値が相当高いことが分かってくる。
最後に宝箱を開けるのは俺だ。
ゆっくりと宝箱を開けると、中身が見えてきた。
俺の宝箱に入っていた中身は、鞄だ。
しかも、どこか見覚えのある鞄。
「……これって、『無限鞄』だな」
「だな、鑑定しても同じように表示されるし……」
「何だよ、その無限鞄って。
いや、その呼び名からアイテムボックスのような鞄だってことはわかるよ?
でも、価値あるものなのか?」
大輔が、思っていた疑問を声に出して言う。
実をいえば、少し高いがこの無限鞄は市場にかなりの数が出回っている。
昨今のダンジョン探索のおかげで、出回り始めたのだ。
勿論、値段は安いものでも金貨数枚と、庶民にはなかなか手が出せない額ではあるが、雲の上の商品ではない。
「実をいえば、地球の冒険者にとっては価値のあるものなんだよ」
「俺たちのような冒険者にとっては?」
「ああ、実はこの無限鞄。
冒険者ギルドにある転送陣をあの服と同じく、通過することができるものなんだよ」
「……それって、どういうこと?」
大輔たちに、無限鞄の価値について説明するが、まだよくわかってないようだな。
神田さんが、どういうことか質問する。
「つまり、地球でもこの無限鞄が使えて、さらに、地球の物をこっちの世界に持ってこれるということだ」
「……それって何でもか?」
「無限鞄に入るものなら、な」
無限鞄に入るもので、制約があるというのは聞いたことない。
おそらくどんなものでも持ち込むことができると思う。
ただし、無限鞄の容量はそう大きくない。
現在発見されている最大容量の無限鞄でも、小学校の体育館一つ分だったかな?
それに、どこかのネコ型未来ロボットのポケットのように、口が広がるなんてことはないからそう大きなものを入れられるわけでもない。
もしかしたら、そういうところが制約になっているのかもな……。
宝箱の中身を確認し、他にも無いかこのボス部屋を隅々まで探すが何も見つからなかった。そのため、俺たちは下の階へ行く階段を降りる。
階段を降りて行き、第十一階層にたどり着くと、そこはいろんな人たちでにぎわっていた。どうやってここまで下りてきたのか分からなかったが、十階層からの階段のすぐ横に部屋があり、そこから人々が出てくる。
「……もしかして、転送陣があるのかな?」
「それって、いきなりこの十一階層へ来れるってことか?」
「ああ、価値ある鉱石は、この十一階層から出るからな。
だから、ここから上の階層を素通りできるように、転送陣を置いたってことなんだろう……」
鉱石採取のためだけに、こういうやり方もあるんだな、と俺は考える。
ダンジョンを鉱山と同じように考えた結果なのかもしれないな。
「それで、どうする?ここから地上に戻れるけど……」
俺の提案に全員が考え、答えを出した。
「私は、この階層でも戦えるか試したいわね」
「私も、蓮花さんと同じです」
神田さんと内村さんは、この階層で戦えるか試したいようだ。
もし戦えなかった場合は、上の今までの階層でレベル上げをするのかな?
「俺も、この階層で試した方がいいと思う」
「大輔に賛成」
「同じく」
大輔、佐々木、悠太もこの階層で試したいようだな。
ということは、全一致でこの階層で戦えるか試すということか。
「では、この階層で戦えるか試すぞ?」
俺の提案に全員が頷き、第十一階層の探索へ出発する……。
▽ ▽
この第十一階層は、今までの一桁階層と違いいろんな冒険者パーティーが戦っているということだ。
数えるほどしかギルドへ行ってないから分からないが、人種もいろいろだ。
エルフに獣人、そして、ドワーフ。
人族が多いが、珍しい所では『ケット・シー』なる種族までいた。
……どう見ても、二足歩行する猫にしか見えないが、アレでもれっきとした人種なのだろう。
「見ました?今のネコ」
「は、はい蓮花さん。可愛かったですね~」
「あのような種族がいるのですね……」
うろうろと第十一階層内をうろついて、ケット・シーを見つけて神田さんと内村さんがはしゃいでいるようだ。
初めて見たネコそのものの種族。
まさにファンタジーな世界だろう……。
今日は、ここまで。
次回は、ダンジョン内でのトラブルか?
第116話を読んでくれてありがとう。
次回もよろしくお願いします。