第114話 十階層ボス 前編
遅い昼食を『鉱石ダンジョン』の第三階層でとり終えると、十分の休憩の後さらに下へと潜り始める。
地球の冒険者には、レベルが上がりやすいという秘密の加護がある。
それを信じて、俺たちは魔物を倒してレベルを上げていく。
最大の難関であるゴーレムの対処も、慣れてきて倒しやすくなっていった。
そして、第八階層へ降りた時、今日のダンジョン探索の時間が来てしまった。
腕時計からなるアラームを止め、みんなと相談する。
レベルもかなり上がり、レベル上げが面白くなってきたところで引き返さなければならない。さて、どうするか?
「……宿は一日ごとに取るようにしていただろ?だったら、このままレベル上げを続けようぜ」
「そうだよな。俺も、大輔と同意見だ」
「大輔と佐々木は、レベル上げを続ける。神田さんと内村さんは?」
「……私は、早く終わらせたいだけ……」
「……今後のことを考えて、よろしくお願いします」
「神田さんも内村さんも続けるってことで。
悠太、俺もこのまま続ける方に賛成だ」
「……分かった、それじゃあ、このまま進むぞ」
全員の意見を聞き、俺たちはさらにダンジョンを進んでいく。
▽ ▽
二時間後、俺たちは十階層の大扉の前まで来た。
この鉱石ダンジョンには、十階層に巨人ゴーレムがいて、下層への扉を守っている。何故十階層の巨人ゴーレムしか分かってないのか。
それは、この鉱石ダンジョンが十七階層までしか探索されてないからだ。
実は、十七階層からアイアンゴーレムが出現する。
アイアンゴーレムが倒せないから探索が止まっているわけではない、アイアンゴーレムを倒してもとれる素材が鉄しかないから止まっているのだ。
無論、さらなる下層へ行けば、ミスリルゴーレムがいるかもしれない。
もしかしたら、オリハルコンゴーレムが出現するかもしれない。
だが、そこまで探索しなくても、鉄やミスリルなどの鉱物素材は採掘可能だし、ましてオリハルコンなど、使い道がないのだ。
そんな超貴重素材でできた武器や防具など、争いのもとである。
そのため、岩石ゴーレムや石ゴーレムなどがギリギリ出現する、十七階層で止まっている、あるいは止めているというわけだな……。
「さて、鉱石ダンジョンで見つかっている唯一の階層ボスだ。
準備はいいか?」
俺が、悠太たちに視線を送ると、みんな頷いて返してきた。
それを確認して、俺は大扉をゆっくり開けていく。
大扉の中は、巨大なドームのような形の部屋になっており、かなりの広さがあった。
そして、この部屋の中央に高さ十メートルぐらいの巨大な人型の石像が、仁王の様な構えで静かに立っている。
「……あれが、階層ボスの巨人ゴーレムかな?」
「だな、まるで仁王像だ……」
俺たちのパーティー全員が、部屋に足を踏み入れると、案の定入ってきた大扉が閉まり開かなくなった。
「扉が閉まったぞ」
「ボスからは、逃げられないってことだろう……」
「ちょっと!あの巨人の後ろから、何か出てくるのだけど?」
巨人ゴーレムの後ろから現れたのは、大量のゴブリン。
それも、ゴーレムのゴブリンだ。
「悠太、大輔、佐々木、神田さん、内村さん、戦い方はいつものように!
大輔と佐々木は、ゴブリンゴーレムを相手にしてくれ!
ただし、巨人ゴーレムには気をつけろ!どんな動きをするか分からないからな!」
「おう、任せておけ!」
「俺たちが露払いというわけか!」
剣を構える大輔に、鉄棒を構える佐々木。
佐々木は、棒術を使うが武器が木の棒しか持っていなかった。
そこで、俺の鉄でできた鉄棒を渡し、攻撃力をアップさせておく。
「悠太と神田さん、内村さんは弓で攻撃してくれ!
標的は、ゴブリンゴーレムでも巨人ゴーレムでも構わない!
とにかく、遠距離から攻撃を!」
「了解!」
「分かったわ!」
「任せてください!」
三人とも弓を構えて、矢を取り出そうとしたとき俺はもう一度声をかけた。
「弓での攻撃もいいが、魔法を使うことを忘れるなよ!」
神田さんと内村さんは、素直に頷く。
悠太は、何を言ってんだ?という顔で、首を傾げた。
そして、俺はハルバートを構えなおし、巨人ゴーレムを見据える。
「戦闘開始だ!!」
俺の合図とともに、俺と大輔と佐々木がまず突っ込む。
そして悠太たちは、俺の合図とともに矢を撃ち出し、次々とゴーレムゴブリンを倒していく。
ゴーレムゴブリンは、姿形はゴブリンそのもののため、実は柔らかいのだ。
そのため、弓での攻撃で倒すことができてしまう。
弱点も頭という、分かりやすいものであるため倒しやすい。
もしかしたら、その辺のゴブリンよりもゴーレムゴブリンの方が倒しやすいかもな。
倒せば倒すほど、魔石が手に入るし。
その魔石も、野生のゴブリンよりも大きく価値がある。
……欠点を上げるとすれば、この鉱石ダンジョンにしかいないことかな。
このダンジョン以外で、発見されたことはないらしい。
「この!この!この!この!!」
「【ウィンドカッター】!」
悠太が向きになって、矢を撃ち続けている横で神田さんが風魔法を使う。
神田さんは、風魔法をスキル部屋で取っていなかったが、魔力操作をとっておいたおかげで、魔法は比較的簡単に覚えることができたそうだ。
ただ、戦闘に使えるほどの威力のある魔法はなかなか覚えることができなくて、苦労していたようだが、訓練場で一生懸命に練習して習得していたようだ。
それは、内村さんも同じで、神田さんの一生懸命な姿勢が刺激になり、こちらも一生懸命練習をしていた。
魔法が使えることが、面白かったのかな?
今日は、ここまで。
次回は、階層ボス攻略へ。
第114話を読んでくれてありがとう。
次回もよろしくお願いします。