第112話 探索申請書
夕方の道を歩いて冒険者ギルドを目指す。
コブトの町について、宿を探す前に悠太との合流を考えたからだ。
冒険者ギルドにつくと、まずはギルドに借りていた馬を返却する。
ギルドの厩舎にいる職員の人に、ナブトの町で借りた馬である書類を見せて返却する。
本当なら、ナブトで返却するべきなのだが、俺はこれからダンジョンに潜る予定だ。
その間の馬の世話を、宿の人にしてもらってはお金がかかるのだ。
それなら、ギルドへ返却した方が、経済的だろう。
馬を返して、冒険者ギルドの正面に戻り、中へ入る。
すると、夕方という時間帯なため、受付と素材買取受付がたくさんの冒険者と思われる人が、行列を作っていた。
その光景に圧倒されつつ、ギルド内を見渡すと、依頼掲示板の前に悠太たちはいた。
別に依頼を受けるわけでもないが、依頼掲示板の前に追いやられた、といったところか……。俺が悠太たちを見つけるのと同じに、悠太に発見され手を振ってきた。
俺も手で合図を送り、悠太たちに近づく。
「よ、悠太」
「どうしたんだ?康太。同好会の後輩たちと、ダンジョンに行ったんじゃなかったのか?」
「それがな……」
俺は、同好会の後輩とのダンジョンでの出来事を話してやる。
すると、悠太たちは全員が微妙な顔をしている。
どう感情を表していいのか、分からないって感じだ。
「……康太、やり過ぎたんじゃないのか?」
「う~ん、ああなってしまうと、もう少しやり方があったんじゃなかったのか、と思わないこともないんだよな」
ナブトの冒険者ギルドが預かって、カウンセリングしないといけないところまで追い込んでしまったのは、やりすぎだったのかもしれないな……。
「ところで、悠太たちは何でこんなところにいるんだ?
今から、依頼を受けるってわけでもないだろう?」
「それが、この町に到着したのが三十分ほど前でなんだが、その時にはもうこんな行列ができていたんだよ。
『鉱石ダンジョン』に入るための申請をしたかったんだけどな……」
「この人数じゃ、無理だな……」
悠太も俺も、受付に並ぶ冒険者の数を見てうんざりしていた。
そこへ、神田さんが声をかけてくる。
「ねぇ、行列が無くなるまで待つつもりなら、宿を先に探さない?」
「宿?あれ?悠太、まだ宿をとってなかったのか?」
少し不機嫌そうな神田さん、その側で内村さんがこちらを恐る恐る窺っている。
大輔と佐々木は、我関せずとまだ依頼書の貼られた掲示板を見ていた。
「……そうだな、宿をとってまた来るか」
そう言うと、俺たちは全員で冒険者ギルドを出ていった。
冒険者ギルドを出たところで、俺は悠太に質問する。
ギルドの外に、悠太たちが乗ってきたと思われる馬車が無かったからな。
「そうだ、馬車はどうしたんだ?悠太」
「ああ、馬車なら、冒険者ギルドに借りたって言ってただろ?
だから、ここに到着した時、返却しておいたよ。よかったんだろ?」
「ああ、それで構わない。
それじゃ、宿でもさが……そうと思ったけど、ギルドの目の前に宿屋があったな」
「え、ああ、ほんとだ。
冒険者ギルドの目の前が宿屋になってる……」
こうして、俺たちの泊まる宿屋はすぐに見つかった。
今日は、この宿に泊まり、明日、冒険者ギルドで『鉱石ダンジョン』への探索申請書を出して、現地に向かうだけだ。
ダンジョンに潜る場合は、後のことを考えてパーティー単位で『探索申請書』を提出しなければならない決まりだ。
ソロで潜る場合は、別の申請書を出すことになる。
これは、もし、ダンジョンからの予定期間を過ぎた場合、申請書を出していれば、ギルドは他の冒険者へ依頼として捜索隊を出せるし、申請書が無ければ、ギルドは捜索隊を出すことはない。
というより、いなくなったことが分からないので捜索隊の出しようがないのだ。
だから、ダンジョンに始めて潜る人物がパーティーにいる場合は、必ず出してもらうように注意しているのだとか。
冒険者は基本自己責任な職業ではあるが、ギルドとしては、なるべく助けたいのだ。
▽ ▽
次の日の朝、俺と悠太は、宿の目の前にある冒険者ギルドに行き、探索申請書を提出する。
「……はい、『鉱石ダンジョン』への探索申請書を受理しました。
探索期間は五日でいいですか?」
「はい、それでお願いします」
「……はい、これで今日から五日が過ぎますと、捜索隊が依頼として出されます。それまでに帰ってきて、報告をお願いしますね」
「分かりました」
朝早くの冒険者ギルドということで、冒険者の数も少なく、スムーズに受付を済ませることができた。
ただ、依頼書が貼られている掲示板では、ギルド職員の人達が一生懸命、依頼書を貼っている所を見ると、もうすぐ冒険者が集まってくるのだろう……。
「……どうした?康太」
「いや、何でもない。
それより、ダンジョン探査の準備をしっかりして、急ごうぜ~」
「だな」
これから、食料と飲料を準備してダンジョンへ向かう。
アイテムボックスがある俺たちだからこそ、何日もダンジョンに潜ることができるのかもしれないが。
今回のダンジョンでは、大輔たちの贖罪のためのダンジョン探索になる。
目標額貯めることが出来た時、パーティーは解散、高木さんと一条さんに慰謝料を支払って、解放ということになる。
その後、大輔たちが冒険者を続けるかどうかは分からないが、二度と、高木さんや一条さんにしたことを繰り返さないでほしい……。
今日は、ここまで。
次回は、鉱石ダンジョンへ……。
第112話を読んでくれてありがとう。
次回もよろしくお願いします。




