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駅前に冒険者ギルドが出来ていた  作者: 光晴さん
異世界で過ごす連休

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第110話 意気消沈




初心者ダンジョンの『妖精の羽ばたき』の一階層で、俺と冒険者同好会の後輩たちは、暗い横道から現れたゴブリン二匹によって瓦解した。


『精神耐性』スキルを取っていなかったせいで、ゴブリン二匹から受ける殺気、さらに見た目の醜さ、そして臭いを強烈に感じてしまったおかげでものすごい恐怖に襲われ、後ずさることしかできなかったのだ。


『精神耐性』スキルを取っていた者たちも、初めて見るリアルなゴブリンに腰が引けて何もできなかった。

結局、俺がゴブリン二匹を始末したが、魔石を死体から回収することなく、戦えなくなった後輩たちを連れて、ダンジョンの入り口へと歩いていた。


わずか200メートルぐらいの距離を、一時間ほどかけて……。




「「「ヒィィ!!」」」


さっきから、ダンジョンの奥から響いてくるゴブリンの泣き声に、ビビりまくりの後輩たち。そのため、ゆっくりとしか進むことができない。


「せ、先輩、今の声、近くなかった?!」

「う、うぅ……」


サンタにおぶられている女子高生の一人が、恐怖のあまりしがみ付く腕に力を入れている。おぶっているサンタが、少し苦しそうだ……。


「大丈夫だよ、ここは出口まで一本道だしな。

ゴブリンが出るとすれば、一番後ろを歩いている俺の後ろからだ」


後輩たち全員が、恐怖のためかゆっくりゆっくりと歩いている。

そのために、出口まですぐそこだというのに、こんなに時間がかかっているのだ。


「ほら、あれが出口だ」


ようやく見えた出口、後輩たちも少しではあるが、歩く速度も速くなる。

そして、俺たちは『妖精の羽ばたき』から脱出した……。




▽    ▽




ナブトへ進んでいる馬車の中は、静まり返っていた。

後輩たち全員が俯いて座り込んでいたのだ。


ショックだったのだろうか、誰も何も言わない。

行きと帰りのテンションが、これほど違うとはな……。


俺は、他の仲間たちのことを考えながら馬車をゆっくりと進める。




▽    ▽




『鉱石ダンジョン』に向かう途中にある『コブト』の町を目指していた。

出発したナブトの町から、コブトの町まで距離にして馬車で一日かかる。その町を経由して、悠太たちはダンジョンへ向かうのだ。


馬車の中で、大輔たちはあまりしゃべらなかった。

どうも、高木さんと一条さんのことがあって、大輔たちの間もギクシャクしているようだ。組んでいたパーティーも解散したと聞いているしな……。


これからレベル上げも兼ねて、慰謝料のお金を作りに行くのだ。

気分は囚人、いや、鉱山奴隷であろうか?


高木さんと一条さんに張り倒され、竹原さんに殴られ、これから行くダンジョンでお金を作りに行く。

そして、慰謝料の支払いが済めば、もう二度と大輔たちは高木さんと一条さんに近づくことはないだろう。

勿論、神田さんや内村さんにもだろう。


悠太の操る馬車は進む、静かな大輔たちを乗せて……。


「はぁ、真之介さん、来てくれねぇかな~……」




▽    ▽




ナブトの町を東門から出て、『ポック村』を目指す日向さんたち一行。

さらにポック村を経由して、その先にある『オール村』が目的地だ。


人が走るよりも少しだけ早く馬車を走らせているのは、御者席にいる日向さんと竹原さんの幼馴染コンビ。

後の女性陣は、馬車の中で揺れに耐えながら景色を眺めたり、お喋りをしている。


「コハルちゃん、はい」


手綱を握り、馬車を操る日向さんの後ろから、新城さんが開けたばかりのお菓子の口を出して来た。

……さっきから、女性陣は食べてばかりだな。


「ありがとう、リコちゃん。後ろのみんなはどう?退屈してない?」

「サンキュー、リコ。みんな、それぞれで楽しんでいるみたいだな……」

「……そうそう、大丈夫だよコハルちゃん」


「なら、いいんだけどね。でも、戦闘準備だけはしておいてね?」


日向さんは、後ろをちらりと見て、準備を促している。

どうも、気が緩み過ぎていると感じたようだ。


「どうしたの?コハルちゃん。この街道に、魔物が出てくるの?」

「ふむ……こんなに、いい天気で静かなのに……」


日向さんの隣に座っている竹原さんは、周りにくるっと視線を向けるが、魔物を発見することはできなかった。

新城さんも、見える範囲をくるりと見渡すが、魔物らしきものは発見できない。


「この先のポック村の近くには、オークだけが出てくるダンジョンがあるらしいの。それに、この街道でも、オークが出たことがあるそうだよ」

「……それって、西園寺君からの情報?」


「え、う、うん」

「ほぉ~、コハルはいつの間に西園寺とそんな仲に?」

「……じょ、情報交換は、大事でしょ?」


竹原さんと新城さんは、耳が赤くなった日向さんを見てニヤニヤしている。

そこへ、市原さんが声をあげた。


「後ろから、ゴブリン三匹接近中!」

「コハルちゃん、逃げるか戦うか判断して!」

「勿論、戦うよ!準備して!!」


そう言うと、すぐに手綱を引いて馬車を止めた。

と同時に、武器をアイテムボックスから取り出し、全員が馬車を降りて行く。


「菜々美ちゃんと葵と私で、ゴブリンの相手をするからリコと琴音ちゃんは馬車をお願い!岬ちゃんは菜々美ちゃんの援護を!」


「「「了解!」」」




▽    ▽




ゴールデンウィークは、始まったばかりだ。

しかし、冒険者同好会の後輩たちは、すでに心が折れてしまっている。

これから、地球に帰すことになるが、今後どうするかは彼ら次第だろうが、もう二度とこっちに来ることはないのかもしれない……。


……後輩たちを地球に返したら、悠太に合流しようかな……。





今日は、ここまで。

次回は……。








第110話を読んでくれてありがとう。

次回もよろしくお願いします。

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