第109話 ダンジョンでの後輩たち
初心者ダンジョン『妖精の羽ばたき』に到着後、休憩をするかと思ったら、後輩たちはすぐに出発することを要求してきた。
武器を自分たちのアイテムボックスから取り出し、ダンジョンへ進んでいく。
ダンジョンの入り口前には、少しだけだが行列ができていて、少しうんざりした表情をする。それでも、大人しく仕方ないと列に並ぶのだが……。
俺は、乗ってきた馬車を冒険者ギルド支部の前にある馬車置き場に、馬を外して留めておく。馬は、馬車置き場の近くにある馬小屋に預けた。
ここは、馬車で来る人が多いのか、馬小屋に馬が六頭も繋いであった。
馬車置き場は、二つほどだったから、馬に乗ってきた人がいるのかもな……。
「先輩!行きますよ~」
「早く!早く!」
後輩たちの急かす声に、俺は走ってダンジョンへ入っていく。
ちょうど、後輩たちが行列の最後で良かった……。
アイテムボックスから、武器のハルバートを取り出し構えると、ダンジョン地下一階へ続く階段を降りて行く。
そして、俺の後をはしゃぎながらついてくる後輩たち。
……なんで全員同じ、魔導銃を構えているんだ?
▽ ▽
ダンジョンに入ってすぐにはまだ、魔物は襲いかかっては来ない。
薄暗い洞窟のダンジョンを奥へ奥へと進んでいく。
……やはり、後輩の女性二人が文句を言い始める。
「ちょっとぉ~、臭くないって言ったじゃない~!」
「もう~、最悪ぅ~!暗いし臭いし、これのどこがおもしろいのよぉ~」
「まあまあ、魔物を撃って倒せばスッキリするって」
真也という後輩が、女子高生二人をなだめている。
まったく、文句が多い……けど、おかしいな。一番前を歩いている俺だから気づいたけど、顔をしかめている後輩は五人。
おそらく、この五人はダンジョンの匂いが耐えられないのだ。
俺のすぐ後ろにいるりっくんとサンタの二人以外が、顔をしかめている。
……もしかして、りっくんとサンタ以外の五人は、『精神耐性』スキルを取っていない、なんてことはないよな?
もしそうなら、五人はこれから地獄を体験することになるぞ?
そんなことを考えていると、後ろで悲鳴が上がる。
「ヒィィッ!!」
「な!な!何よ!」
「うわっ!」
女子高生二人が、近くにいた真也という後輩の両腕にしがみ付いた。
そこで、全員の進む足が止まり、俺は辺りを警戒。
後輩たちは、真也のもとに集まりどうしたのか理由を聞いている。
「どうしたんだ?そんなに震えて……」
「し、しがみ付かれて、動けない……」
「おい真也、羨ましすぎるな~」
「からかっている場合か!で、何があったんだよ」
空気の読めないサンタがからかっていたが、すぐにりっくんに怒られる。
理由を聞かれた真也は、訳も分からずしがみ付かれて動けないらしい。
りっくんたち後輩の視線が、しがみ付く女子高生二人に向くと、右からしがみ付いた女子高生が、恐る恐る顔を上げて左手を前に突き出し、前方を指さす。
だが指さした場所は、今まで進んでいた先ではなく、横道の先だった。
すぐにりっくんとサンタが魔導銃を構え、孝二と晃もそれに続く。
女子高生二人と真也は動けず、その場に立ち尽くしている。
俺も辺りを警戒しながら、通路の先をよく見ると、緑色のゴブリンがこちらを見て警戒している。
ゆっくりゆっくりこちらに近づき、ゴブリン二匹の全身が確認できたところで、またしても大きな悲鳴が上がった。
「ヒィィィ!!」
「ッ!!」
「ギヒィィ!!」
女子高生二人は、ますますしがみ付きを強くすると、しがみ付いた真也ごと後ろに下がった。そして、勢い余って壁に背中をぶつけてしまい真也の悲鳴が出た。
「あ、ああ……」
「う、うう……」
次に動けなくなっていたのは、孝二と晃だ。
何か恐ろしいものでも見たように、ゆっくりゆっくり後ずさりをして壁際まで下がった。
「……こ、これが、ゴブリン、ですか!」
「リ、リアリティが、違うな……。し、CGよりも、醜い……」
りっくんとサンタは、少し後ずさりするものの、魔導銃を構えているが、構えている手が震えている。
俺はその様子は見れなかったが、確信はしていた。
こいつら、『精神耐性』スキル取ってないな、と。
ハルバートを構えて、すぐにゴブリンに突っ込み、振り回して首を切断。
あっさりと戦闘を終えた……。
▽ ▽
まだダンジョンに潜って一時間と経っていないにもかかわらず、すでに女子高生二人は帰りたいと泣きだしてしまった。
真也はダンジョンの壁にぶつかり負傷、孝二と晃は少しもらして落ち込んでいるし。
りっくんとサンタは、持っていないと思っていた『精神耐性』スキルを持っていたが、それでもかなり疲れた様子。
そして、後の五人は予想通り『精神耐性』スキルを取っていなかった。
この後輩たち、本当に異世界をなめ過ぎである。
「……とりあえず、帰るには入口へ戻らないといけないんだけど……」
「む、り、で、すぅ~、これ以上、歩けないぃ~……」
泣きながら、現状について主張する女子高生。
俺は犬のおまわりさんの気分だ、困ってしまってワンワンワワンである……。
薬が効き過ぎ、これではトラウマレベルだ……。
「とにかく、ダンジョンから一気に外へ転移なんて魔法はないんだから、覚悟を決めて歩くしかない」
「そんなぁ~、いじわる言わないでよぉ~、先輩~……」
今度は、もう一人の女子高生が泣いて抗議してきた。
泣きたいのは、こっちだ。
ダンジョンに入るまで、俺を睨んだりしていた孝二や晃は下を向いて少し震えている。
こうしている間にも、彼女たちの泣き声で一階層の魔物がいつよってくるか分からないのだ、ここは意地悪でも、連れ出すしかない……。
「そこの二人、彼女たちをおぶってくれ。
後、そこで落ち込んでいる男子二人は歩けるだろ?
ここで騒いでいたら、この階層の魔物が寄ってきてしまうぞ?」
そう言うと、後輩全員が押し黙った。
まだ、ヒック、ヒックと泣いている女子高生二人はしょうがないとして、とにかくダンジョン脱出である……。
今日は、ここまで。
次回は、脱出!
第109話を読んでくれてありがとう。
次回もよろしくお願いします。




