第106話 意外な答え
誰も使っていないような空き教室で、レベル上げを脅迫される。
対価は、地球での安寧か?
高校三年生が、下級生の一年生に脅されるっていうのも……。
とりあえず、彼らのレベル上げの要求をどうするか。
断ってもいいけど、ここで断ると次に呼ぶ相手がいるみたいなんだよね。
その人が犠牲になるのも、後味悪いしな……。
いっその事、この要求を呑んで、彼らに現実を教えつつ矯正させるのもありかもしれないな……。
異世界におかしな幻想を抱かないように。
そして、他の人に迷惑をかけないように調教を……。
よし!
「分かった、君たちのレベル上げを手伝うよ……」
俺の承諾の返事を聞いて、りくっちがさらに深く笑みを浮かべて頷く。
俺を睨みつけていた三人は、舌打ちをしながら、早く返事しろよ、と悪態をつく。
サンちゃんは、当然という態度で女子高生二人と話をしている。
はぁ、こいつらのレベル上げをしながら、性根を叩きなおさないといけないのか……。
何か、貧乏くじ引いた気分だ……。
「それで、いつレベル上げをするんだ?」
「何を言っているんですか?先輩。
もうすぐ十連休でしょ?その前半を使ってお願いしますよ」
十連休って、こっちの予定は無視なのか……。
「十連休は、都合が悪いんだけど…「あぁ?!」」
「てぇめぇ、何言ってんだ?こっちが優先に決まってんだろうが!」
「こっちでの生活、めちゃくちゃにすんぞ?」
俺の肩に手を回し、俺の右頬を拳でグリグリする。
俺を睨んでいた三人が、今、俺を取り囲み脅しをかけている。
……たぶん、普通ならビビッて黙るところだよな。
でも、迫力ないよな。ゴブリンやオークに比べるのもどうかと思うが、魔物の迫力って、そうとうなものなんだと改めて思った。
「どうするの?先輩。あたしたちも暇じゃないんだよね~。
都合が悪いなら、あんたをボコって次の先輩を誘いに行かないと、ねぇ?」
こういう女子高生って、いるところにいるんだな。
自己中ってやつか?
「……分かった、十連休の前半でレベル上げを手伝うよ。
ただ、待ち合わせは異世界の冒険者ギルドの入り口の前にしてくれ」
「……まあいいでしょう。
俺たちのお願いを聞いてくれて、感謝しますよ~」
そう言うと、りくっちが立ち上がり、サンちゃんや女子高生二人が教室を出ていく。また、俺を取り囲んでいた、孝二と晃と真也は、一発づつ軽く俺を拳で殴り離れていき、立ち上がったりくっちと一緒に教室を出ていった。
だが、いったん教室を出て行ったりくっちは、念のためともう一度教室をのぞき込み、俺に一言声をかけてから、先に行った仲間を追いかけていく。
「それじゃ、よろしくお願いしますよ~」と、声をかけて。
教室に一人残された俺は、深くため息を吐くと、めんどくさいことになったなと悠太たちへの説明を考えながら、教室を出ていった。
あいつらを、叩きのめすことは簡単だけどあの感じだと、次の犠牲者が出そうだったし、俺がレベル上げついでに、強制しないと将来大変だろうな……。
しかし、絶対に向こうの世界で死ぬタイプだな。
……まあ、レベル上げをしていれば現実が分かるだろう。
向こうの異世界は、レベルを上げるだけでは強くなれないことに。
そして、どんなスキルを取ったのか知らないが、おそらく、訓練とかしていないんだろうな。
スキルは、訓練すると身につくのだ。
あいつらの動きで分かる、まだ身についてもいないことに……。
おそらく、異世界に行けることや冒険者ギルドまでは分かっているんだろう。
その先、スキルを使えるように訓練することや魔物との戦闘などは、まだ未経験だな。
もし経験があれば、レベル上げじゃなくてスキルの使い方を聞くはずだしな……。
大輔たちが、そうだったし。
はぁ、教室に帰ったら、悠太たちに知らせておくか……。
▽ ▽
「りくっち、うまくいったわね~」
「そうそう、流石りく君だよ。
しかし、弱そうな先輩だったな~、ほんとにあれが向こうではレベル百越えなの?」
「確かに、信じられねぇよな~」
ミクの言うように、うまくいったがサンタはあの先輩のレベルを信じてないようだ。まあ、正直俺も晃と同じように、信じられないんだが、ここは信じているふりをしないとな。
「あの先輩の冒険者仲間だっていう人に、直接聞いた話だからな。
向こうの世界じゃ、ちょっと有名見たいらしいぞ、ギルド職員にな」
「ギルド職員って、モブだろ?
そんな連中に有名って、どんな手を使ったんだ?」
ギルド職員、そういえばいろいろと注意事項とかうるさかったよな……。
スキル選びは、勝手が分からなかったから言うこと聞いたが、『精神耐性』なんてスキル必要か?と首を傾げたほどだ。
ほんと、うるさい連中だった。
……でも、異世界の町の迫力には脱帽だったな。
エルフや獣人にも驚いたが、やはり違う世界なんていうのはワクワクするものだ。
アミューズメントパークに行ったときに感じた、ファンタジーとは次元が違ったしな……。
「にしても、何で魔法とか使えなかったんだろうな」
「そうそう、せっかくスキルで魔法を取ったのにな~」
そういえば、孝二と真也は魔法を中心としたスキルを選んでいたっけ。
晃にいたっては、刀を選んでカッコつけていたし……。
まあ、俺は銃を選んでカッコつけてみたけどな……。
「ミクとエリは、どんな武器を選んだんだ?」
刀で斬るようなふりをした後、晃はミクとエリに聞いてみる。
そういえば、教えてくれなかったな。
「あたしらは、何か習っていたわけでもないし、武器振り回して筋肉つけたくないから銃っていうのにしたわよ」
「うん、私も~」
何だ、ミクとエリも俺と同じ銃を選んだのか。
ならレベル上げの時は、あの先輩を前に出して俺たちは安全な場所から攻撃でいいな。
ふっ、レベルが上がった後、楽しみだ……。
今日は、ここまで。
次回は、いよいよゴールデンウィークに突入。
第106話を読んでくれてありがとう。
次回もよろしくお願いします。




