城落とし
評価いただきありがとうございます。
不規則に更新しますので、申し訳ないのですが宜しくお願いします。
そして、始まる城落とし
カンナが宣言した通り、やる気のない奴らはテントで寝ているらしい
明朝5時正直言うと眠い
俺とローラとカンナ以外にはアルクエリ連中はいない
まぁ楽に順位を稼ぎたいだけのやつらだから想像はできた
でもね。目の前
結構距離あるが、圧倒されるレベルで兵士いるのよ
1000とか2000じゃ足りない
側面にもいるっぽいから1万全部ではないが、7000人程度はいるのではないだろうか
俺?
1対1ならなんとかなるが、頑張っても100人ってところではないだろうか
ローラであれば500人程度は軽く葬れそうだが、単純に数の暴力というのは恐ろしい
俺はもう冷や汗ダラダラ
ローラですら額に汗を浮かべていた
「…そ…それでは行きますね」
俺が手を引いているカンナは特に焦ってもなく、たどたどしているが笑顔のままであった
そんな笑顔とは不釣り合いな刀が何故か似合っていた
気合衣装なのか、和服が刀とよく似合っている
カンナはゆっくりと深呼吸する
3㎞程離れているし、こちらは3人
あちらからも特に動きは無い
当たり前だ。防衛用の部隊だからたった3人程度で動かす必要も特にない
「手はもう大丈夫です」
ゆっくりと手が離れる
刀を小気味よく鞘から僅かに外し、また納める
カチン、カチンと心地よい音が響く
「では、始めます。とりあえず近くで見えるように頑張ってついてきてくださいね」
カンナが魔力を開放する
桁が違うレベルの魔力開放に少しビビりながらも、俺は魔力を開放して全力で肉体強化に当てる
ローラも同じように肉体強化を始め、それが終わったのを見計らったようにカンナが動き出す
ただ、城に向かって歩いていた
カチン、カチンと音を立てながら、ゆっくりと
「うわぁ…」
ローラがぼやき始めた
その理由はわからなかったが、3分ほどそうやって歩いていると理解できた
7000もの兵士が隊列を乱し始めていた
「楽にするため、指揮権を持ってそうな人達を斬ってます」
ニッコリ笑顔でカチン、カチンと音は止まらない
肉体強化を眼に集中させて、強化した視力で見るとカチンとなるたびにどっかで首が落ちていた
「えっと、この距離で?届かなくないか?」
「魔力を刀に集中させて、抜くと同時に鎌鼬のように魔力を飛ばしてます」
なるほどな。さっぱりわからん
「え?なに?今刀振ってるの?」
カチン、カチンと鞘から少し外して、納めるだけの手遊びだと思っていた…
というよりも、今もそう見えるのだが
「はい、ぱぱっと出して納めてます」
花が満開レベルの笑顔だが、うん…見えん
「いや、イヴが見えなくてもおかしくないよ。私もギリ視界に映ってるレベルだもん」
「これでも加減はしています。加減しないと多分一太刀で全滅させてしまうので…強さを見ていただくにはやっぱり接近戦の方がいいですよね?これはちょっとした手遊びです」
なるほど、わからん
とりあえず、カンナがものすごーく手加減していることは理解した
そして、その手加減しているカンナの剣先すら見えていない俺はやはり段違いに格下ということも理解した
あちらからすれば、何故か指揮官たちが死んでいっている。そんな状況だろう
こっちでも意味わからんレベルだっていうからしょうがない
残り2㎞といったところ
カンナが手遊びをやめて立ち止まり、俺とローラに顔を向ける
「えっと…今から近接戦に入りますね」
「ちょっと待った!《最大強化》」
ローラが魔法を発動、ローラの魔法マリオネットは相手を操る
だが、操った相手の強化もできる
15本全てが俺に突き刺さり、ローラの魔力により俺の肉体が強化される
肉体の主導権はローラと俺が持っているため、当たり前だがローラは俺の背中に乗る
「…レベルが上がりました?」
「これが私とイヴの最大出力。私の魔法でイヴを全力強化して基本私とイヴで操作する。相性の問題だからか私の魔力はそんな減らないし、これなら500位程度?とは戦いできるよ」
「流石ローラちゃんですね」
「…いや、カンナに言われても…まぁいいや、しょうがないし私が操作するからイヴは観戦に集中してね」
「では、準備ができたと思うので行きますね」
ぐっと確かめるように地面を踏みしめるカンナは、刀を抜いて鞘を捨てる
今の俺の身体は全てイヴの配下にある
『へ?』
予想していなかった俺も、予想していたであろうローラも一瞬呆然とした
カンナが消えた
「やば!」
俺の身体はローラの操作により、7000人もの軍勢に突撃している
その先に既に戦いを始めたカンナがいた
2㎞くらいはあったはずなのに、一瞬で距離を詰めていた
俺らは遅れて5秒ほど
既に勝敗は決していた
カンナは舞うように、踊るように身体を動かし恐ろしく丁寧に一人一人切り刻んでいく
一人一人といっても、1秒で50人程度が死んでいる
相手が行動するよりも先に、切り刻み
周囲に対象がいなくなれば、集中している地帯に移動し斬る
ただそれだけの単純作業
だが、剣先は見えるがローラが俺の身体を動かしてくれなければ、何もわからなかっただろう
速さ
ただそれだけであれば、俺の師匠的な存在であるアキレスとも互角ではないかと思ってしまう
どうすれば、この次元の強さにたどり着けるのか…
「…確か、貴方には一回防がれましたね」
ピタリとカンナの動きが止まる
そのカンナの目の前には大層な盾を持った兵士がいた
「あれは多分、500位くらい」
耳元でローラが俺に教える
500位は強い
時々、レベルが高いやつもいるが正直強すぎる
俺とローラで戦っても苦戦していただろう
「兵長のザギンである!!尋常にしょう…」
恐らく正々堂々の騎士道精神的な何かで名乗りをあげようとしていた男
「手加減しては失礼でしたね。本気で行きますよ?」
笑顔のカンナの圧力で黙って、構える
魔力を筋力強化に当てているのか片腕で持てないだろうと思うレベルの身の丈ほどある分厚い盾と剣
速さでは勝てないと理解しているのか、正面に盾を構える
「いいのですか?本気で行きますよ?」
相手は本気で構えている
なのに、もう一度確認を取るカンナ
笑顔は変わらず、だがこちらを向いていた
ちゃんと見ろということであろう
俺もローラもすべての神経を眼に集中した
「あとは単純作業が続くだけですし、終わらせますね」
刀を低く構え、あれ?と首を傾げ止まる
「鞘を忘れました。ちょっと待ってくださいね」
ぱっと消えるとまたぱっと現れた
その手には2㎞前に捨てた鞘を手にしていた
天然なのか?
「えっと、ザギンさんでしたっけ?頑張ってください」
ザギンとやらは盾を構えることしかできない
「覚えてください。これで8位です」
二つ名の殲滅
その理由が理解できた
ローラによる全力強化すら置いてけぼりにするほどの速さ
恐らく一回だけ本気で刀を振っただけ
それだけだと思う
ザ…なんちゃらも見えなかっただろう
カンナの前
扇状に死体が散乱していた
そして、その後ろにあったはずの何かしらの防御魔法が貼ってあっただろう城壁も切り裂き、本体である城すらも両断されていた
「今日は技を使ってません。ただの魔力によるものですから…勘違いしてはダメですよ」
振り向いた殲滅は、勘違いしてしまうような綺麗な笑顔だった
城落としに使った時間はたったの30分であった
頑張ります