終章
今朝も相変わらず、母の殺気で目が覚めた。
母が敢えて殺気を出しているのは知っていたが、そもそも本気で殺すつもりもないのに、殺気を出せるって凄いことなのだと、今朝目覚めた時初めて思った。
どうやったら本体を壊さずに刺せるのか分からないが、今朝はうちわが三本、枕に生えていた。何故かそんなところで、季節を感じてしまう。
次に来る攻撃は読めていた。左から左わき腹を狙った拳が跳んでくる。
読みは当たった。拳が進んでくる。春斗は僅かに腰を捻って避けながら、右拳を軽く前に押し出した。そこは母の顔面が突き進んでくる位置だった。それを悟った母は、すぐさま軽く首を横にずらして避けた。避けた途端に、音もなく後方に跳躍して春斗と距離を取った。
春斗と目が合うなり、母は心底嬉しそうな顔で笑った。
「女性の顔を狙うなんて、良い度胸してるじゃない」
「息子の寝起きを狙う人に言われたくないなぁ……」
母は、何か春斗に心境の変化があったのか訊くような、野暮なことはしなかった。
春斗は、言わずとも大方理解してしまう自分の母親を、改めて末恐ろしく感じた。
「攻撃してくるからには、本気でしてきなさい。意味がないから。そして私に気をつかなくてもいいから。当たらないから」
そして先ほどの笑みとは一変して、母は狂気的な笑みを浮かべる。
――戦闘狂。
「さあ、好きにいらっしゃい」
春斗はゴクリと唾を飲み込んだ。




