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6話 巻き込む力

ファンタジー、画像でググっていたら1日過ぎてた。

全く進まない。

僕には、高校に入ってから1人だけ友人と呼べる人がいる。

お調子者で、クラスの人気者的存在のアイツが何故、僕と仲良くするのか未だに分からないが。


ただ、1つ言えることは出会いは最悪だった。


いきなり、肩をグッと揺さぶられ驚く暇を与えずに彼は唇を動かす。

「なぁ、数学のノート貸して?」

前の席の佐山春汰(サヤマハルタ)だった。

カツアゲか、と思う。

「ちょ、頼む!俺本当に数学苦手なんだよ」

あまりにも必死に頼むので、仕方なく貸してあげることにした。


僕は彼とは面識はない。

それに、僕は耳が聞こえないしおまけに声が出ない。

まぁ、考えても意味はない。

どうせ本当にノートが必要だったんだと思おう。

自己完結して僕は読みかけの本を読む。


「ありがとうってば、そんなにノート貸すの嫌だった?」

今度は優しく肩を叩かれた。

中学以来だなこの感覚。彼には僕のことが伝わっていないのか。

僕は補聴器を見せながら、携帯に打った簡潔な文を見せる。

「ごめん、僕は耳が聞こえないんだ」

だから、もう僕にはかかわらないで欲しい。

この文に込められた意味を彼は感じ取ってくれるだろうか。

「あぁ、お前がそうだったんだ。気づかなくてごめんな、ノート貸してくれたお礼になんか奢るよ!」


はい?

まず初めに、お前呼ばわりされたのは若干イラッときたが、そこは置いといて。

問題は、次だ。いやいや、おかしいだろ。

僕はもう人と関わりたくないのに。

「いや、そんな気にしないで。大丈夫だから」

携帯を見せるやいなや、僕の肩を叩き彼は言った。

「えー、何食う?ラーメンとかいいよなぁ。あ!俺さグラタン食べたいんだよね」


アホなのか、本当にこいつは話を聞かない。


「すぐ、近くに美味しい所があるんだよな。帰りに寄って帰ろーぜ」


本当に話を聞かない。アホなんだ。


もう、断ってもだめな感じだったので仕方なくついて行った。

一緒に歩いているとき、呼び方をナチュラルに「春汰」と「恵」にシフトした。

学校から少し言ったところの寂れた店。

なんというか、見た目は入りたくない感じだ。


「おっちゃん!来たよー」

「おっちゃん呼ぶな。村上さんと呼べ、もしくはマスター」

店内は、アンティークで揃えられており隠れ家的で少し興奮した。

自分の身長より高い本棚が店内にたくさんある。

本棚には見たこともない洋書がパンパンに詰まっている。

その他には、ファンタジー映画で見るような様々な機械、機関車の模型や帆船の模型。

TVには店内とマッチする80年代の洋画がながれている。

カウンター席に座り、片手に読売新聞を持ちコーヒー飲んでいるのは、先ほど春汰と言い争っていた、おっちゃんこと、村上茂弘(ムラカミシゲヒロ)さん。


体は育ったとはいえ男はいつまでも子供という。

この空間に興奮しない方がおかしい。


「春、そっちの子は誰だ?」

とても渋く、聞いていて安心するような声で聞いた。

「俺の友達!恵って言うんだ、耳が聞こえずらいから喋るとき事前確認してやって」


友達になった覚えはない。

春汰は巻き込む癖があるのだろうか。

バッと、春汰の方を向くと僕の言葉を伝えるかのようにマスターがいう。

「春、そいつはぁ納得してないようだぞ」

コーヒーを飲みながらいう。

「恵がどう思っていようが俺は友達と思ってる」

「そうか‥‥」

マスターの言葉は心なしか僕に向けられたもののようだった。


「まぁ、ゆっくりして行け」

「マスター!グラタン2つ!」


中学以来、友達なんかいらないと思っていたのに。

強引なやつは好きじゃない。

でも、なんか春汰は嫌じゃない。




マスターのお店、実際にあったらいいのに。

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