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2話 帰り道は1人より2人の方が楽しい

2年前、夏休みが明け学校へ行くとクラスメイトの視線が前のものとは全く違った。

みんな、哀れみの目をしていた。

それは、教師も同じだった。困ったいつでも言いなさいって、僕はまだ困ってないのに。

補聴器を付けていれば、音は拾える。

唇を読む練習も病院でたくさんした。

なのに、みんな僕には紙に書いて話してくる。

多分、教師達が僕の耳は完全に聞こえないとでも、言ったんじゃないだろうか。


放課後、いつものように靴箱へ行くと耳が聞こえなくなった後も変わらず前と同じように接してくれた、3人の友人達がいた。


「よぉ〜、遅かったな」

「耳が聞こえなくなると、足も遅くなんのかよ」

「やめろよ、聞こえるだろ?あっ、聞こえないんだっけ」

笑いながら、僕が聞こえないからと目の前でいつもの笑顔でそう、唇を動かした。いや、この時ばかりはよく聞こえたと思う。


辛かった。ただ、この一言。


僕は担任の先生の元へ向かった。

告げ口をしたかった訳じゃない。

ただ、僕は補聴器を付ければ聞こえるという事を伝えたかった。


「篠原か、どうした?」

休み時間の一人のタイミングを狙い声をかけた。

「せ、先生!!僕は!!」

そんなに出したつもりはない。

でも、先生の表情からして相当大きかったらしい。

「ちょ、篠原。声が大きい。」

見るからに嫌そうな顔をされて、口を閉じる。

「全く、お前は俺の仕事を増やしやがって。俺は全部書いて言わなきゃいけないだろうが…」


人の脳は嫌な事ばかりを拾うのだろうか。

僕はそこから、誰とも喋らなくなった。

手話を覚え、必要最低限の家族や先生との会話しかしなくなった。

僕は自分を塞ぎ込み、本だけと過ごした。

本はいい。誰にも邪魔されない。


高校は、理解のある高校を選んだ。

元から塞ぎ込んでいた事から、無理に話しかけようとする人はあまりいなかった。

授業以外はずっと本を読んでいる。

ずっと変わらないと、変わるはずないと思ってた。


「私、色が見えないんです」


自分の名前を言うようにスラスラと言った。

先ほどの笑顔と変わらない笑顔で。


『本当に?』

「あ、えっと‥‥手話分かんなくて」

思わず手話で話してしまった。

すぐ携帯に打ち、見せる。

「本当です。生まれつきの病気で、全部白黒に見えるんです」


それから駅のホームで、彼女と座りながらメールでやり取りをした。

1-B 宮村風澄(ミヤムラ カスミ) 同じ高校で、色覚異常の全盲という事が分かった。


「篠原恵、しのはらめぐみって読むの?」

「しのはらけい、だよ」

文面だけ見ると、よく女に間違えられる。

そこからは、風澄が主導となって、たわいもない会話をして家に着いた。


いつもの帰宅路。少し違うのは、液晶越しだが誰かと一緒に会話をしながら帰ったという所。

家族以外、ましてや同年代の女子と喋ったのはいつぶりだろうか。

少しだけ、塞ぎ込みになった自分を外に出せた。


そんな生活は主に1ヶ月ほど続いた。

季節は秋から冬へ。

口から出た息は、白くなり大気に溶ける。


トントン、と腕をたたかれる。僕の腕を優しく叩く人物は1人しかいない。


『お待たせ』

手を使い自分の気持ちを表現する会話方法。

宮村風澄は手話を使い、僕に話しかけていた。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

まだ、続きます。ブックマークお願いします。

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